3 / 27
2
しおりを挟む
アンジェラと王太子の婚儀は滞りなく進んでいった。
王太子の婚儀とあって錚々たる顔触れが揃っている。王太子の父である国王や正妃、王太子の生母の側妃。その他に王族に連なる者達や国境を越え近隣国の王族達が肩を並べる。
アンジェリカはその面々を改めて見て息を呑む。分かってはいたがいざ目前にすると臆してしまうものがある。
公爵令嬢として生まれ今日まで生きてきた。公爵は貴族の階級の中では順位は第一位となっているが、更にその上には王家がある。
社交の場などで王族と接する機会は少なくないが、こうも揃っていると威圧感があり圧倒されてくる。
なんと言うか、住む世界が違う。…アンジェラはよくこんな中に飛び込む気になったものだ。その度胸は素晴らしいと思う。いやもしかしたら、何も考えていないだけの可能性もあるが。
アンジェリカは少し弱気になってくる。…これではダメだと思い直し深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
格式張った儀礼などは終わり、参列者達は各々に雑談などを始めていた。そんな中、皆順番にアンジェラと王太子の所へ行き祝いの言葉を述べている。
アンジェリカの両親の番になり2人は見るからに嬉々としながらアンジェラ達の元へと向かった。少し離れた場所からその様子をアンジェリカは伺っていた。
一体いつまで話しているつもりだろう。
他の者達は一言二言会話を済ませると下がっていくのに対して、四半刻は経っている…。全ての内容は聞き取れないものの、両親は如何にアンジェラが素晴らしいかを語っている様だ。アンジェラも満更ではない様子で楽しそうに笑っているが、王太子は若干顔が引き攣っている。
まあ幾ら愛する妻の話だろうがこれだけ長く語られたら誰でも嫌になるに決まっている。それに気付いていないだろう両親と妹は正に親子だ。
いい加減にして欲しい。次はアンジェリカの番なのに、これではお開きになるまで終わりそうにない。折角の計画が台無しになってしまう…。
痺れを切らし、アンジェリカが無礼を承知で会話に割り込もうとした矢先。先に割り込む人物がいた。
「お話中に失礼。他の者達も是非お2人に祝いの言葉を述べたいかと思いますので、一旦お下がり頂きまた後程にされては如何でしょうか」
この方って…確か。
アンジェリカはアンジェラを見遣ると、案の定目を輝かせ青年を見ていた。彼は隣国の王太子だ。大分前になるが舞踏会に出席した折にアンジェラが目を付けアプローチをしていた記憶がある。
アンジェラは兎に角、昔から美男子が大好きだ。その次にくるのが地位や名誉だ。
そして隣国の王太子は正に絵に描いたような美男子だ。スラリとした立ち姿に整った顔立ちに甘い笑顔。おまけに王太子だ。
正にアンジェラの理想を具現化した様な人物だったが、アンジェラの熱烈なアプローチは努力の甲斐虚しく玉砕し叶わなかった。
玉砕した日、屋敷に戻るなりアンジェラが荒れに荒れ八つ当たりをされたのを良く覚えている。何時もの事だが、兎に角あれは凄まじかった…暫くの間荒れた状態が数日続き本当にうんざりした。余り思い出したくない。
アンジェリカは改めて隣国の王太子を見遣る。八つ当たりに近いがこの王子がアンジェラを遇らってくれたお陰でかなりの被害を受けた。故に余り関わりたくない。早く退散して欲しい…。
「ディルク様!お出で下さっていたのですね!」
アンジェラは今日1番の歓喜の声と笑みを浮かべた。
王太子の婚儀とあって錚々たる顔触れが揃っている。王太子の父である国王や正妃、王太子の生母の側妃。その他に王族に連なる者達や国境を越え近隣国の王族達が肩を並べる。
アンジェリカはその面々を改めて見て息を呑む。分かってはいたがいざ目前にすると臆してしまうものがある。
公爵令嬢として生まれ今日まで生きてきた。公爵は貴族の階級の中では順位は第一位となっているが、更にその上には王家がある。
社交の場などで王族と接する機会は少なくないが、こうも揃っていると威圧感があり圧倒されてくる。
なんと言うか、住む世界が違う。…アンジェラはよくこんな中に飛び込む気になったものだ。その度胸は素晴らしいと思う。いやもしかしたら、何も考えていないだけの可能性もあるが。
アンジェリカは少し弱気になってくる。…これではダメだと思い直し深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
格式張った儀礼などは終わり、参列者達は各々に雑談などを始めていた。そんな中、皆順番にアンジェラと王太子の所へ行き祝いの言葉を述べている。
アンジェリカの両親の番になり2人は見るからに嬉々としながらアンジェラ達の元へと向かった。少し離れた場所からその様子をアンジェリカは伺っていた。
一体いつまで話しているつもりだろう。
他の者達は一言二言会話を済ませると下がっていくのに対して、四半刻は経っている…。全ての内容は聞き取れないものの、両親は如何にアンジェラが素晴らしいかを語っている様だ。アンジェラも満更ではない様子で楽しそうに笑っているが、王太子は若干顔が引き攣っている。
まあ幾ら愛する妻の話だろうがこれだけ長く語られたら誰でも嫌になるに決まっている。それに気付いていないだろう両親と妹は正に親子だ。
いい加減にして欲しい。次はアンジェリカの番なのに、これではお開きになるまで終わりそうにない。折角の計画が台無しになってしまう…。
痺れを切らし、アンジェリカが無礼を承知で会話に割り込もうとした矢先。先に割り込む人物がいた。
「お話中に失礼。他の者達も是非お2人に祝いの言葉を述べたいかと思いますので、一旦お下がり頂きまた後程にされては如何でしょうか」
この方って…確か。
アンジェリカはアンジェラを見遣ると、案の定目を輝かせ青年を見ていた。彼は隣国の王太子だ。大分前になるが舞踏会に出席した折にアンジェラが目を付けアプローチをしていた記憶がある。
アンジェラは兎に角、昔から美男子が大好きだ。その次にくるのが地位や名誉だ。
そして隣国の王太子は正に絵に描いたような美男子だ。スラリとした立ち姿に整った顔立ちに甘い笑顔。おまけに王太子だ。
正にアンジェラの理想を具現化した様な人物だったが、アンジェラの熱烈なアプローチは努力の甲斐虚しく玉砕し叶わなかった。
玉砕した日、屋敷に戻るなりアンジェラが荒れに荒れ八つ当たりをされたのを良く覚えている。何時もの事だが、兎に角あれは凄まじかった…暫くの間荒れた状態が数日続き本当にうんざりした。余り思い出したくない。
アンジェリカは改めて隣国の王太子を見遣る。八つ当たりに近いがこの王子がアンジェラを遇らってくれたお陰でかなりの被害を受けた。故に余り関わりたくない。早く退散して欲しい…。
「ディルク様!お出で下さっていたのですね!」
アンジェラは今日1番の歓喜の声と笑みを浮かべた。
48
お気に入りに追加
5,926
あなたにおすすめの小説
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
元カノが復縁したそうにこちらを見ているので、彼の幸せのために身を引こうとしたら意外と溺愛されていました
おりの まるる
恋愛
カーネリアは、大好きな魔法師団の副師団長であるリオンへ告白すること2回、元カノが忘れられないと振られること2回、玉砕覚悟で3回目の告白をした。
3回目の告白の返事は「友達としてなら付き合ってもいい」と言われ3年の月日を過ごした。
もう付き合うとかできないかもと諦めかけた時、ついに付き合うことがてきるように。
喜んだのもつかの間、初めてのデートで、彼を以前捨てた恋人アイオラが再びリオンの前に訪れて……。
大好きな彼の幸せを願って、身を引こうとするのだが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる