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アンジェラと王太子の婚儀は滞りなく進んでいった。
王太子の婚儀とあって錚々たる顔触れが揃っている。王太子の父である国王や正妃、王太子の生母の側妃。その他に王族に連なる者達や国境を越え近隣国の王族達が肩を並べる。
アンジェリカはその面々を改めて見て息を呑む。分かってはいたがいざ目前にすると臆してしまうものがある。
公爵令嬢として生まれ今日まで生きてきた。公爵は貴族の階級の中では順位は第一位となっているが、更にその上には王家がある。
社交の場などで王族と接する機会は少なくないが、こうも揃っていると威圧感があり圧倒されてくる。
なんと言うか、住む世界が違う。…アンジェラはよくこんな中に飛び込む気になったものだ。その度胸は素晴らしいと思う。いやもしかしたら、何も考えていないだけの可能性もあるが。
アンジェリカは少し弱気になってくる。…これではダメだと思い直し深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
格式張った儀礼などは終わり、参列者達は各々に雑談などを始めていた。そんな中、皆順番にアンジェラと王太子の所へ行き祝いの言葉を述べている。
アンジェリカの両親の番になり2人は見るからに嬉々としながらアンジェラ達の元へと向かった。少し離れた場所からその様子をアンジェリカは伺っていた。
一体いつまで話しているつもりだろう。
他の者達は一言二言会話を済ませると下がっていくのに対して、四半刻は経っている…。全ての内容は聞き取れないものの、両親は如何にアンジェラが素晴らしいかを語っている様だ。アンジェラも満更ではない様子で楽しそうに笑っているが、王太子は若干顔が引き攣っている。
まあ幾ら愛する妻の話だろうがこれだけ長く語られたら誰でも嫌になるに決まっている。それに気付いていないだろう両親と妹は正に親子だ。
いい加減にして欲しい。次はアンジェリカの番なのに、これではお開きになるまで終わりそうにない。折角の計画が台無しになってしまう…。
痺れを切らし、アンジェリカが無礼を承知で会話に割り込もうとした矢先。先に割り込む人物がいた。
「お話中に失礼。他の者達も是非お2人に祝いの言葉を述べたいかと思いますので、一旦お下がり頂きまた後程にされては如何でしょうか」
この方って…確か。
アンジェリカはアンジェラを見遣ると、案の定目を輝かせ青年を見ていた。彼は隣国の王太子だ。大分前になるが舞踏会に出席した折にアンジェラが目を付けアプローチをしていた記憶がある。
アンジェラは兎に角、昔から美男子が大好きだ。その次にくるのが地位や名誉だ。
そして隣国の王太子は正に絵に描いたような美男子だ。スラリとした立ち姿に整った顔立ちに甘い笑顔。おまけに王太子だ。
正にアンジェラの理想を具現化した様な人物だったが、アンジェラの熱烈なアプローチは努力の甲斐虚しく玉砕し叶わなかった。
玉砕した日、屋敷に戻るなりアンジェラが荒れに荒れ八つ当たりをされたのを良く覚えている。何時もの事だが、兎に角あれは凄まじかった…暫くの間荒れた状態が数日続き本当にうんざりした。余り思い出したくない。
アンジェリカは改めて隣国の王太子を見遣る。八つ当たりに近いがこの王子がアンジェラを遇らってくれたお陰でかなりの被害を受けた。故に余り関わりたくない。早く退散して欲しい…。
「ディルク様!お出で下さっていたのですね!」
アンジェラは今日1番の歓喜の声と笑みを浮かべた。
王太子の婚儀とあって錚々たる顔触れが揃っている。王太子の父である国王や正妃、王太子の生母の側妃。その他に王族に連なる者達や国境を越え近隣国の王族達が肩を並べる。
アンジェリカはその面々を改めて見て息を呑む。分かってはいたがいざ目前にすると臆してしまうものがある。
公爵令嬢として生まれ今日まで生きてきた。公爵は貴族の階級の中では順位は第一位となっているが、更にその上には王家がある。
社交の場などで王族と接する機会は少なくないが、こうも揃っていると威圧感があり圧倒されてくる。
なんと言うか、住む世界が違う。…アンジェラはよくこんな中に飛び込む気になったものだ。その度胸は素晴らしいと思う。いやもしかしたら、何も考えていないだけの可能性もあるが。
アンジェリカは少し弱気になってくる。…これではダメだと思い直し深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
格式張った儀礼などは終わり、参列者達は各々に雑談などを始めていた。そんな中、皆順番にアンジェラと王太子の所へ行き祝いの言葉を述べている。
アンジェリカの両親の番になり2人は見るからに嬉々としながらアンジェラ達の元へと向かった。少し離れた場所からその様子をアンジェリカは伺っていた。
一体いつまで話しているつもりだろう。
他の者達は一言二言会話を済ませると下がっていくのに対して、四半刻は経っている…。全ての内容は聞き取れないものの、両親は如何にアンジェラが素晴らしいかを語っている様だ。アンジェラも満更ではない様子で楽しそうに笑っているが、王太子は若干顔が引き攣っている。
まあ幾ら愛する妻の話だろうがこれだけ長く語られたら誰でも嫌になるに決まっている。それに気付いていないだろう両親と妹は正に親子だ。
いい加減にして欲しい。次はアンジェリカの番なのに、これではお開きになるまで終わりそうにない。折角の計画が台無しになってしまう…。
痺れを切らし、アンジェリカが無礼を承知で会話に割り込もうとした矢先。先に割り込む人物がいた。
「お話中に失礼。他の者達も是非お2人に祝いの言葉を述べたいかと思いますので、一旦お下がり頂きまた後程にされては如何でしょうか」
この方って…確か。
アンジェリカはアンジェラを見遣ると、案の定目を輝かせ青年を見ていた。彼は隣国の王太子だ。大分前になるが舞踏会に出席した折にアンジェラが目を付けアプローチをしていた記憶がある。
アンジェラは兎に角、昔から美男子が大好きだ。その次にくるのが地位や名誉だ。
そして隣国の王太子は正に絵に描いたような美男子だ。スラリとした立ち姿に整った顔立ちに甘い笑顔。おまけに王太子だ。
正にアンジェラの理想を具現化した様な人物だったが、アンジェラの熱烈なアプローチは努力の甲斐虚しく玉砕し叶わなかった。
玉砕した日、屋敷に戻るなりアンジェラが荒れに荒れ八つ当たりをされたのを良く覚えている。何時もの事だが、兎に角あれは凄まじかった…暫くの間荒れた状態が数日続き本当にうんざりした。余り思い出したくない。
アンジェリカは改めて隣国の王太子を見遣る。八つ当たりに近いがこの王子がアンジェラを遇らってくれたお陰でかなりの被害を受けた。故に余り関わりたくない。早く退散して欲しい…。
「ディルク様!お出で下さっていたのですね!」
アンジェラは今日1番の歓喜の声と笑みを浮かべた。
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