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しおりを挟むレナードが外へと出た後、ユスティーナも外に出ようと扉に手を掛ける。だがユスティーナが開ける前に扉は開いた。レナードが戻って来た……と思わず身体を強張らせるが、直ぐに脱力する。何故なら……。
「ヴォルフラム、様……どうして」
扉を開けたのはレナードではなく、ヴォルフラムだった。目を見張るユスティーナへと彼は手を伸ばしてくる。
「怖かったね、可哀想に。おいで、ユティ」
困惑し、躊躇いながらも彼の手を取るとヴォルフラムはユスティーナを強く抱き締め、横抱きにすると馬車から降ろしてくれた。
「は、離せっ‼︎ユ、ユスティーナっ‼︎」
「⁉︎」
馬車の外に出るとレナードが騎士等に取り押さえられ、暴れていた。こちらに気が付くと声を上げる。ユスティーナは驚きヴォルフラムを見ると、彼は呆れた表情で息を吐いた。
「まさか僕の大切な婚約者を、誘拐しようとするとはね。流石の僕も庇いきれないよ」
誘拐……その言葉にユスティーナは呆気に取られた。確かにかなり強引に馬車に乗り込んでは来たが、誘拐ではない。
「あ、あの、ヴォルフラム様、レナード殿下は……」
「もう大丈夫だからね、ユティ。怖い思いをさせてしまってごめんね。でもまさかレナードが此処までするなんて思わなかったんだ。迂闊だったよ、完全な僕の落ち度だ」
ヴォルフラムに言葉を遮られ、ユスティーナは口を噤む。再びレナードへ視線を向けると、地面に押さえつけられ完全に動きを封じられていた。周りには彼を取り押さえた騎士以外にも何人もの騎士団員等の姿がある。
「ユスティーナ、少し待ってて」
そう言って彼は腕の中からユスティーナを下ろした。レナードの元へと歩いて行くと、しゃがみ込み地面に押さえ付けられている彼の顔を覗き込むと、何かを囁く。だがユスティーナからはヴォルフラムが何を話しているかは聞こえなかった。
「兄上っ‼︎」
すると大人しくなった筈のレナードが急にまた暴れ出し、怒声を上げた。
◆◆◆
何処までも短絡的で莫迦な弟だ。ヴォルフラムは地面に押さえ付けられているレナードの前にしゃがみ込み、弟の耳元で現実を教えてやる。
「お前が面白い程予想通りの行動をしてくれるから、手間が省けて助かるよ。兄思いの弟を持てて、僕は本当に幸せ者だ」
「っ⁉︎」
「大人しく謹慎していれば良かったのにね。これでもう、王宮にお前の居場所はない」
それだけ言うとヴォルフラムは立ち上がり、嘲笑して見せた。レナードは顔を真っ赤にして興奮した様子で、また暴れ出す。
「兄上っ‼︎」
「レナード……可愛い弟がこんな事になってしまい本当に残念でならないよ。だが兄として、お前の為にも見逃す事は出来ない。罪は罪だ。重く受け止め、少しでも反省をして欲しい。……連れて行け」
ヴォルフラムがそう言うと騎士等はレナードを起き上がらせ、連行しようとした。そんな時だった。建物から飛び出して来たシスターや子供達の悲鳴が辺りに響いた。
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