29 / 63
28
しおりを挟む
「し、失礼、致します……ジュディット様、お食事をお持ち致しました……」
見るからに怯えた様子の侍女が食事を持って部屋へと入って来た。その姿に苛々する。ジュディットはトレーの上のサラダが乗った皿を掴むと侍女に投げつけた。ガチャンッと音を立てて皿は割れた。
「今はお腹空いていないわよ!鬱陶しいからこんなの下げなさいっ!」
侍女は涙目になりながら何度も謝罪を口にして下がる。本当、どいつもこいつも使えない人間ばかりだ。鼻を鳴らす。
あれから一ヶ月。自邸の自室から出して貰えない。父は屋敷には帰って来ず、母も自室に引き篭もりずっと泣いてばかりいる。
一体何だって言うの⁉︎ー。
こんなの現実なんかじゃない。これまで何もかもが上手くいっていた。侯爵令嬢として生まれ、誰もが認める絶世の美女の自分を父も母も溺愛した。ジュディットが望む事や欲しい物はなんだって用意してくれた。
将来の王妃に相応しいのはジュディット以外にいないと何時も言っていた。無論自分だってそう信じて疑わなかった。実際ヴォルフラムの婚約者に選ばれたのはジュディットだった。第二王子のレナードだって自分に好意を抱き、思いのままだった。それなのに……。
「どうしてあんな小娘に奪われなくちゃいけないのっ⁉︎ヴォルフラムもこんなに完璧な私をを捨てて、あの小娘を選ぶなんて頭がおかしいんじゃないの⁉︎」
しかも、あんな大勢の前でこの私に恥をかかせるなんて、赦せないー。
ジュディットは扉を叩き、大声で侍女を呼んだ。すると先程食事を持って来た侍女が慌ててやって来る。
「お、お呼びでしょうか……」
「私、出掛けたいの。準備して」
「いけません、ジュディット様は処分が下るまでは屋敷からは出れないんです」
ラルエット家の屋敷前にはヴォルフラムが寄越したであろう兵が見張りとして立っている。本当に腹立たしい。
「そんな事分かってるわよ。だから見張りの兵を呼んで来て頂戴」
馬車に揺られながらジュディットは鼻歌を歌う。私の美貌に掛かれば男を言い成りにさせる事なんて簡単だわ。
侍女に連れて来させた兵士等に、甘えた声で擦り寄りお金を握らせて、少し彼等の身体を触ってあげると、直ぐに頷いた。年若い彼等は顔を真っ赤にして興奮気味に息を荒げていた。思い出しただけで可笑しくて仕方ない。
「ふふ」
ジュディットは今街外れにある、例のボロい教会へと向かっている。あの偽善者振っている小娘に目に物見せてやるわ。
見るからに怯えた様子の侍女が食事を持って部屋へと入って来た。その姿に苛々する。ジュディットはトレーの上のサラダが乗った皿を掴むと侍女に投げつけた。ガチャンッと音を立てて皿は割れた。
「今はお腹空いていないわよ!鬱陶しいからこんなの下げなさいっ!」
侍女は涙目になりながら何度も謝罪を口にして下がる。本当、どいつもこいつも使えない人間ばかりだ。鼻を鳴らす。
あれから一ヶ月。自邸の自室から出して貰えない。父は屋敷には帰って来ず、母も自室に引き篭もりずっと泣いてばかりいる。
一体何だって言うの⁉︎ー。
こんなの現実なんかじゃない。これまで何もかもが上手くいっていた。侯爵令嬢として生まれ、誰もが認める絶世の美女の自分を父も母も溺愛した。ジュディットが望む事や欲しい物はなんだって用意してくれた。
将来の王妃に相応しいのはジュディット以外にいないと何時も言っていた。無論自分だってそう信じて疑わなかった。実際ヴォルフラムの婚約者に選ばれたのはジュディットだった。第二王子のレナードだって自分に好意を抱き、思いのままだった。それなのに……。
「どうしてあんな小娘に奪われなくちゃいけないのっ⁉︎ヴォルフラムもこんなに完璧な私をを捨てて、あの小娘を選ぶなんて頭がおかしいんじゃないの⁉︎」
しかも、あんな大勢の前でこの私に恥をかかせるなんて、赦せないー。
ジュディットは扉を叩き、大声で侍女を呼んだ。すると先程食事を持って来た侍女が慌ててやって来る。
「お、お呼びでしょうか……」
「私、出掛けたいの。準備して」
「いけません、ジュディット様は処分が下るまでは屋敷からは出れないんです」
ラルエット家の屋敷前にはヴォルフラムが寄越したであろう兵が見張りとして立っている。本当に腹立たしい。
「そんな事分かってるわよ。だから見張りの兵を呼んで来て頂戴」
馬車に揺られながらジュディットは鼻歌を歌う。私の美貌に掛かれば男を言い成りにさせる事なんて簡単だわ。
侍女に連れて来させた兵士等に、甘えた声で擦り寄りお金を握らせて、少し彼等の身体を触ってあげると、直ぐに頷いた。年若い彼等は顔を真っ赤にして興奮気味に息を荒げていた。思い出しただけで可笑しくて仕方ない。
「ふふ」
ジュディットは今街外れにある、例のボロい教会へと向かっている。あの偽善者振っている小娘に目に物見せてやるわ。
20
お気に入りに追加
5,123
あなたにおすすめの小説
【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。
しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」
その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。
「了承しました」
ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。
(わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの)
そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。
(それに欲しいものは手に入れたわ)
壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。
(愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?)
エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。
「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」
類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。
だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。
今後は自分の力で頑張ってもらおう。
ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。
ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。
カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*)
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
婚約破棄のその後に
ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」
来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。
「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」
一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。
見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。
【完結】母になります。
たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。
この子、わたしの子供なの?
旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら?
ふふっ、でも、可愛いわよね?
わたしとお友達にならない?
事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。
ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ!
だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる