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「⁉︎」
蹌踉めいたユスティーナの身体を支えてくれたのは、ヴォルフラムだった。突然現れた彼に目を丸くする。タイミングが良いのか悪いのか分からない……。
「ヴォルフラム、殿下……」
ヴォルフラムを見上げると、彼は優しく微笑んだ。彼の顔を見た瞬間ユスティーナは脱力してしまうが、直ぐに我に返りヴォルフラムから身を離そうとした。だが何故か彼は離してくれない。こんな状況で益々怪しまれてしまうと焦る。
「折角のお茶会の席だと言うのに、随分と騒がしいね。で、これは一体何の騒ぎかな。ジュディット、レナード」
「ユスティーナ様が、嫌がらせをしたのよ。私に飲み物をワザと掛けたの。見てよこれ、折角のドレスが台無しだわ。しかもレナードと婚約解消されたのは私の所為だって怒られて……それに」
目尻に涙を浮かべながら、赤く染み付いたドレスをこれ見よがしに、ジュディットは見せてくる。
「ヴォルフラム。私ね、貴方がユスティーナ様と抱き合っている所を見たちゃったの……。私という婚約者がありながら、浮気するなんてこんな酷い裏切りないわ!」
「浮気?僕と彼女が?」
彼は眉を上げ首を傾げた。全く心当たりがないと言わんばりな素振りを見せる。
「そうよ。貴方、街外れにあるボロい教会でユスティーナ様と二人で会っていたでしょう。私だけじゃないわ、ねぇ、レナード。貴方も見たわよね?」
「……十日程前、私とユスティーナが婚約解消になった日の昼間です。解消になった事が納得出来なくて、彼女と話をする為に会いに行ったんです。そうしたら、兄上とユスティーナが……」
まさかレナードにまで見られていたなんて……ユスティーナは愕然とした。レナードを見ると一瞬彼と目が合う。すると鋭い視線を向けられた。その事に身体を震わせるとヴォルフラムが「大丈夫だよ」と囁いた。
「その時には既に、私と彼女は婚約は解消されています。ですが、兄上とジュディットは婚約しているんですよ。一体どういうおつもりなんですか?先程ジュディットも話していましたが、もしかしてもっと以前から二人はそういう関係だったんじゃないんですか⁉︎」
冷静に話していたレナードは、段々と言葉を荒げ苛々しているのが伝わってきた。大分興奮している様だ。
「そういう関係って?」
「ですから、不貞していたと言う意味です!」
「あぁ、成る程」
そんなレナードに対して、まるで意に返さない様子のヴォルフラムは終始笑顔のままだ。ユスティーナはそんな様子に一体どうなってしまうのかと、不安が募る。
「面白い事を言うね、笑えない冗談だ。僕とユスティーナ嬢がそんなふしだらな事、する筈ないだろう。……君達じゃないんだから」
「⁉︎」
声のトーンが急に下がり、ヴォルフラムの雰囲気が変わったのが分かった。鼻を鳴らし、レナードとジュディットを見遣り冷笑する。初めて見る彼の一面に目を見張った。
「ご、誤魔化そうとしても無駄よ?私はこの目でちゃんと見たんだからね!」
「そうですよ、兄上。この期に及んで言い逃れするおつもりですか」
明らかにユスティーナ達の方が分が悪い。だが、ヴォルフラムはしれっとしている。
「仮にそれが事実だとして、君達以外にそれを証明する人間はいるのかな?以前から不貞行為を繰り返してきた君達の言葉にどれだけの信頼性があるか否かは分かりきった事だ。それにもしかしたらレナードが王太子の座が欲しいが為に、愛するジュディットと結託して僕を陥れようとしている可能性もあるよね。ねぇ二人共、発言には気をつけた方が良いよ。僕が不貞をしていないと証明されたら、君達はただ単に僕を侮辱した事になる。それって不敬罪になっちゃうかも知れないよね」
不敬罪、その言葉にその場は水を打ったように静まり返った。
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