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第2章
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「ねぇ、リアス」
何も反応しないリアスはずっとベッドに腰掛けいた。レーヴァンは壁に寄りかかりその様子を眺めている。
「今回の目的、分かってるよね。ハッキリ言うけど、僕は君の事なんてどうでも良い。興味もないし。君を拾ったのは僕の駒として使えると思ったからだ。もし使えないなら切り捨てるだけ…使えない駒程邪魔なモノはないからね」
レーヴァンの言葉にリアスの瞳は僅かに揺れた。
「君に機会を与えよう。僕が指示した事を遂行する事が出来ればこれからも君を僕の駒の1つとして使ってあげるよ。だが、この任務を失敗させたら…分かるよね?」
リアスはゆっくりと顔を上げるとレーヴァンを見た。これまでの偽りの笑みは何処にもなく、突き刺さる冷たい瞳だけがリアスを捉えていた。
「あぁ、そうだ。オスクも連れて行ってね」
もうオスクは必要ない。オスクの役目は国境を越える時に終わった。今は足手纏いになるだけで寧ろ邪魔になる。
リアスは囁く様に「御意」と言い、レーヴァンからの任務内容を受けた。リアスはレーヴァンを真っ直ぐに見た。そして敬意を称しお辞儀をすると部屋を出で行き、隣の部屋にいるオスクを引っ張り宿を後にした。
程なくして、グラシアノはレーヴァンの元へとやって来た。
「レー君、リアとクーが出で行ったけどどうしたの⁈」
「扉を閉めなよ、グラシアノ」
レーヴァンの口調から、偽物の兄弟ではなく主人と配下へと引き戻される。グラシアノは静かに扉を閉めた。
「レーヴァン様…先程リアスがオスクを連れ宿を出で行きましたが、これは一体何ごとですか」
グラシアノはレーヴァンを見遣ると、何時ものレーヴァンがそこにはいた。最近は偽物の兄弟の振りを続けていた為にレーヴァンとの距離はかなり近く錯覚を起こしていた。グラシアノはその事にハッとする。
レーヴァンの演技が余りにも自然でグラシアノすら騙されかけていた。分かっていた筈なのに、自分が恥ずかしいと感じる。
目的の為ならなんでもする、それがこの人だ。
優しそうな振り、楽しそうな表情、穏やかな素振り、は全て計算されたもの。この短期間の間に妙に親近感や距離が近く感じたのは…いや感じさせられていたと言うべきだろう。
「リアスはもうダメだね。使い物にならない。期待はしてなかったけど、予想以上に使えなかった」
使えなかった。レーヴァンは確かにそう言った。その言葉の意味する事は1つしかない。リアスは切り捨てられたのだ。
本来なら『使えない』そういう言い回しになる筈だが、過去形としてレーヴァンは『使えなかった』と話した。故に終わった事として処理されていると言う意味だ。
「レーヴァン様…2人は」
「グラシアノ、察しの悪い君ではないだろう。この話は終いだ。部屋に戻れ」
「…1つ、教えて下さい」
ずっと気になっていた。リアスを数合わせの為に連れて来たのは分かっていたが、オスクを何故連れて来たのかがどうしてもグラシアノには分からない。
「何故、オスクを連れて来られたのですか」
その言葉にレーヴァンは愚問だと笑った。
「嘘が4つある」
レーヴァンの話は唐突に始まった。
「その中に1つの真実を混ぜると急に他の4つの嘘は信憑性を孕んでくる。僕やグラシアノ、モデスト、リアスだけだったら隠しきれない空気がどうしても出てしまう。だがオスクと言う存在を加える事で一瞬にして僕達は『普通』になる事が出来た」
普通に見える様にする為だ。国を越える時に必ず検問がある。その時に極普通であるオスクと言う存在がどうしても必要だった。別にオスクである必要はなかったのだが、たまたまレーヴァンの目に止まったのがオスクだった。
何時もルイスの側をうろついて、正直余り良い印象は無かった。決闘の後もオスクだけはルイスを慕い続けていた。
まあ、少し興味はあったんだけどね。
レーヴァンはルイスをひたすらに慕い続けるオスクに以前から興味はあった。オスクを見ていると苛々とする。何故ルイスなのか…。愚弟は愚弟でしかない。無知で、愚かで、与えられているだけの存在の愚弟を何故慕う?レーヴァンには理解し難い。
「それだけの為に、ですか」
「それだけの為、だよ。だがかなり重要な事でもある」
レーヴァンが言っている事はよく分かる。分かるが…分かりたくない。グラシアノはレーヴァンを改めて見た。
「オスクもリアスと一緒に切り捨てたんですね…」
「いても邪魔になるだけだからね」
グラシアノはやるせない。リアスもオスクもまだまだ子供だ。そんな簡単に切り捨てるなど…。
「子供だからなに?」
まるで心を読んだ言葉にグラシアノの心臓は跳ねた。
「彼らはあれでも騎士なんだよ、グラシアノ。騎士である以上、いつでも死に触れる覚悟は持ち合わせていないといけないのにも関わらず、それを出来ていなかった。…彼らに騎士である資格はない」
レーヴァンの言葉はキツいが事実だ。反論の言葉などありはしない。だが事実だからこそ余計に辛くなる事もある。
「君達の命は主人である僕のモノだ。故に命を貰い受けた責任がある。…だから僕は、いつでも死ぬ覚悟はしているんだよ」
あの2人を連れているだけで危険の度合いは一気に上がるだろう。足を引っ張り、目的を達成する以前にレーヴァンやグラシアノ、モデストの命まで危険に晒される可能性が高い。早い段階で切り捨てるのか妥当だとレーヴァンは判断した。
オスクは自分の腕を引っ張り前を歩くリアスを呆然と見ていた。リアスは黙り込んだまま何処かへと向かっている。
「明日までにアルレットを救い出し、僕の所まで連れて来て」
レーヴァンから言われた最後の任務だ。但し絶対に遂行する事が出来ない任務、だ。出来ないと分かりきっていてレーヴァンは任務を下した。それは遠回しに切り捨てられた事を意味する。
アルレットは恐らく此の国城の何処かに囚われていると推測出来る。それはレーヴァンも分かっている筈。だが、まさか正面から堂々と乗り込む事など出来ない。故に中に侵入するには何かが必要になる。そして、その何かを掴むのにはたった1日では無理だ。
そもそも上手い事城の中に侵入出来た所で、広い城の中を怪しまれずに探し歩くのは困難だ。しかもリアスはアルレットの顔を知らない。端からリアスに此の任務を成功させる事は不可能に近い。
「リアス、さん…」
消え入る様な声でオスクはリアスを呼んだが。無反応だった。
何処へ行くのだろうか。もう直ぐ日没だ。それなのにも関わらずリアスは何故か森の中へと進んで行く。暗くなれば森の中は危険だ。
「…あの、何処に」
「……分からない」
「っ…」
リアスが急に立ち止まるのでオスクはリアスの背中にぶつかってしまった。
「分からないんだ…」
独り言の様にリアスは呟いている。生気を感じられない。全てを諦めた様な虚ろな表情だ。
「…僕は捨てられたんだ、あの方に」
リアスの瞳から一粒だけ涙が溢れた。
何も反応しないリアスはずっとベッドに腰掛けいた。レーヴァンは壁に寄りかかりその様子を眺めている。
「今回の目的、分かってるよね。ハッキリ言うけど、僕は君の事なんてどうでも良い。興味もないし。君を拾ったのは僕の駒として使えると思ったからだ。もし使えないなら切り捨てるだけ…使えない駒程邪魔なモノはないからね」
レーヴァンの言葉にリアスの瞳は僅かに揺れた。
「君に機会を与えよう。僕が指示した事を遂行する事が出来ればこれからも君を僕の駒の1つとして使ってあげるよ。だが、この任務を失敗させたら…分かるよね?」
リアスはゆっくりと顔を上げるとレーヴァンを見た。これまでの偽りの笑みは何処にもなく、突き刺さる冷たい瞳だけがリアスを捉えていた。
「あぁ、そうだ。オスクも連れて行ってね」
もうオスクは必要ない。オスクの役目は国境を越える時に終わった。今は足手纏いになるだけで寧ろ邪魔になる。
リアスは囁く様に「御意」と言い、レーヴァンからの任務内容を受けた。リアスはレーヴァンを真っ直ぐに見た。そして敬意を称しお辞儀をすると部屋を出で行き、隣の部屋にいるオスクを引っ張り宿を後にした。
程なくして、グラシアノはレーヴァンの元へとやって来た。
「レー君、リアとクーが出で行ったけどどうしたの⁈」
「扉を閉めなよ、グラシアノ」
レーヴァンの口調から、偽物の兄弟ではなく主人と配下へと引き戻される。グラシアノは静かに扉を閉めた。
「レーヴァン様…先程リアスがオスクを連れ宿を出で行きましたが、これは一体何ごとですか」
グラシアノはレーヴァンを見遣ると、何時ものレーヴァンがそこにはいた。最近は偽物の兄弟の振りを続けていた為にレーヴァンとの距離はかなり近く錯覚を起こしていた。グラシアノはその事にハッとする。
レーヴァンの演技が余りにも自然でグラシアノすら騙されかけていた。分かっていた筈なのに、自分が恥ずかしいと感じる。
目的の為ならなんでもする、それがこの人だ。
優しそうな振り、楽しそうな表情、穏やかな素振り、は全て計算されたもの。この短期間の間に妙に親近感や距離が近く感じたのは…いや感じさせられていたと言うべきだろう。
「リアスはもうダメだね。使い物にならない。期待はしてなかったけど、予想以上に使えなかった」
使えなかった。レーヴァンは確かにそう言った。その言葉の意味する事は1つしかない。リアスは切り捨てられたのだ。
本来なら『使えない』そういう言い回しになる筈だが、過去形としてレーヴァンは『使えなかった』と話した。故に終わった事として処理されていると言う意味だ。
「レーヴァン様…2人は」
「グラシアノ、察しの悪い君ではないだろう。この話は終いだ。部屋に戻れ」
「…1つ、教えて下さい」
ずっと気になっていた。リアスを数合わせの為に連れて来たのは分かっていたが、オスクを何故連れて来たのかがどうしてもグラシアノには分からない。
「何故、オスクを連れて来られたのですか」
その言葉にレーヴァンは愚問だと笑った。
「嘘が4つある」
レーヴァンの話は唐突に始まった。
「その中に1つの真実を混ぜると急に他の4つの嘘は信憑性を孕んでくる。僕やグラシアノ、モデスト、リアスだけだったら隠しきれない空気がどうしても出てしまう。だがオスクと言う存在を加える事で一瞬にして僕達は『普通』になる事が出来た」
普通に見える様にする為だ。国を越える時に必ず検問がある。その時に極普通であるオスクと言う存在がどうしても必要だった。別にオスクである必要はなかったのだが、たまたまレーヴァンの目に止まったのがオスクだった。
何時もルイスの側をうろついて、正直余り良い印象は無かった。決闘の後もオスクだけはルイスを慕い続けていた。
まあ、少し興味はあったんだけどね。
レーヴァンはルイスをひたすらに慕い続けるオスクに以前から興味はあった。オスクを見ていると苛々とする。何故ルイスなのか…。愚弟は愚弟でしかない。無知で、愚かで、与えられているだけの存在の愚弟を何故慕う?レーヴァンには理解し難い。
「それだけの為に、ですか」
「それだけの為、だよ。だがかなり重要な事でもある」
レーヴァンが言っている事はよく分かる。分かるが…分かりたくない。グラシアノはレーヴァンを改めて見た。
「オスクもリアスと一緒に切り捨てたんですね…」
「いても邪魔になるだけだからね」
グラシアノはやるせない。リアスもオスクもまだまだ子供だ。そんな簡単に切り捨てるなど…。
「子供だからなに?」
まるで心を読んだ言葉にグラシアノの心臓は跳ねた。
「彼らはあれでも騎士なんだよ、グラシアノ。騎士である以上、いつでも死に触れる覚悟は持ち合わせていないといけないのにも関わらず、それを出来ていなかった。…彼らに騎士である資格はない」
レーヴァンの言葉はキツいが事実だ。反論の言葉などありはしない。だが事実だからこそ余計に辛くなる事もある。
「君達の命は主人である僕のモノだ。故に命を貰い受けた責任がある。…だから僕は、いつでも死ぬ覚悟はしているんだよ」
あの2人を連れているだけで危険の度合いは一気に上がるだろう。足を引っ張り、目的を達成する以前にレーヴァンやグラシアノ、モデストの命まで危険に晒される可能性が高い。早い段階で切り捨てるのか妥当だとレーヴァンは判断した。
オスクは自分の腕を引っ張り前を歩くリアスを呆然と見ていた。リアスは黙り込んだまま何処かへと向かっている。
「明日までにアルレットを救い出し、僕の所まで連れて来て」
レーヴァンから言われた最後の任務だ。但し絶対に遂行する事が出来ない任務、だ。出来ないと分かりきっていてレーヴァンは任務を下した。それは遠回しに切り捨てられた事を意味する。
アルレットは恐らく此の国城の何処かに囚われていると推測出来る。それはレーヴァンも分かっている筈。だが、まさか正面から堂々と乗り込む事など出来ない。故に中に侵入するには何かが必要になる。そして、その何かを掴むのにはたった1日では無理だ。
そもそも上手い事城の中に侵入出来た所で、広い城の中を怪しまれずに探し歩くのは困難だ。しかもリアスはアルレットの顔を知らない。端からリアスに此の任務を成功させる事は不可能に近い。
「リアス、さん…」
消え入る様な声でオスクはリアスを呼んだが。無反応だった。
何処へ行くのだろうか。もう直ぐ日没だ。それなのにも関わらずリアスは何故か森の中へと進んで行く。暗くなれば森の中は危険だ。
「…あの、何処に」
「……分からない」
「っ…」
リアスが急に立ち止まるのでオスクはリアスの背中にぶつかってしまった。
「分からないんだ…」
独り言の様にリアスは呟いている。生気を感じられない。全てを諦めた様な虚ろな表情だ。
「…僕は捨てられたんだ、あの方に」
リアスの瞳から一粒だけ涙が溢れた。
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