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「な、何してるんですかっ⁉︎こ、こんな所で……」

未だ身体の動きを止めずにいる自分を見て、大きな目を見開き小さく震えるロゼッタは動けずにいる様だった。


「あぁ……ロゼッタっ、今良い所だからっ……ちょっと待っ……」

ワザと気持ちよさそうに声を上げた。彼女の戸惑い動揺し揺れている瞳を横目で確認しながら暫く行為を続ける。程なくして終わらせると、女は力なく壁にもたれしゃがみ込むと意識を手放した様だ。だがフェルナンドは、もうそれに興味も用もない。

「一体貴方は、何考えてっ……あ、あ、あ有り得ませんっ」

涙目になりながら顔を真っ赤にして叫ぶ姿は、酷く愛らしかった。

「そんなに怒らないでよ。こんなのお遊びなんだからさ」

混乱しているであろうロゼッタは、言葉にならない抗議の声を上げ、その彼女の瞳が自分を捉えている。

愛しいロゼッタが、自分へと感情を向けている……フェルナンドは、歓喜に震えた。


「お子様な君には、刺激が強かったかな」

煽る様に放ったその言葉に、彼女は遂に耐えられなくなった様子で扉を勢いよく閉めると中へ消えてしまう。暫くフェルナンドは名残惜しそうに彼女の部屋の扉を凝視していた。

「ロゼッタ……」


その後もあの時の興奮と、彼女の瞳に自分を映して欲しい……もしかしたら、嫉妬してくれるのではないかという思いから、愚行だと分かりながらも毎晩の様に気づけば彼女の部屋の前にいた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





ベッドに横たわるクラウスをロゼッタは、心配そうに見つめている。

彼はあれから数日、城で療養をしていた。

「クラウスはどう?」

ダーヴィットは部屋に入って来ると、ロゼッタの横に腰掛ける。ジョエルやミラベルは、クラウスが心配だと言い城に残ろうとしたが、ダーヴィットが説得して一旦屋敷に帰らせた。だがロゼッタは行く宛もない故一先ず城に滞在させて貰っている。

「少し前に意識が戻って、ご飯を食べたらまた眠ちゃいました」

数日眠り続けてたとは思えないくらい、普通にご飯を食べるクラウスに思わずロゼッタは笑ってしまった。

「そうなんだ、クラウスらしいね。相変わらずタフだなぁ。でもまあ、食欲あるならもう大丈夫だね~」

クラウスの事もあり最近どこか元気のないダーヴィットだったが、安心したのかいつもの気の抜けたような笑顔に戻っていた。その姿にロゼッタは安堵する。

「ただ、これからが大変だよね……」

先程の空気から一変し深刻そうなダーヴィットの声色にロゼッタは唇をキツく結ぶ。彼の言う通り、これからが問題だった。

「クラウスの生家、侯爵家に遣いをやったんだけどね……侯爵がかなりご立腹でさ。勘当する故もう戻ってくるな、だって。まともに取り合って貰えないらしくて、困るよねー」

「勘当⁉︎そんなっ……私の、所為……」

ロゼッタは俯き、手をキツく握り締めた。

自分の為に、クラウスが勘当されてしまう……。




「ロゼッタ……君の所為じゃない。だから、そんな顔しないでよ」

不意に掛けられた声に我に返る。

「クラウス、様……起こしてしまいましたか」

いつの間に目覚めたのか、目を開けているクラウスはロゼッタに手を伸ばすと、そっと触れた。

「ロゼッタ、君に非はない。僕が……いけないんだ。いくら頭に血が上ったからといって、卑怯な事をした……今は、猛省してるよ……。まあ、結局返り討ちになって醜態を晒しただけになったけどね。情けないよね、本当。ハハ……」

力なく笑う彼になんて返せばいいのか分からず、伸ばされた手をぎゅっと握る事しか出来なかった。

「僕の事よりも、ロゼッタ……君こそどうするの?まさか、フェルナンドあの男の所へ戻るなんて、言わないよね」

「え、ロゼッタ⁉︎もしかして、戻るつもりなの⁉︎」

クラウスの言葉にダーヴィットは驚愕し、思わず叫んだ声が部屋に響いた。

「…………今はまだ、何も」

二人から痛いくらいに視線が刺さる。だがロゼッタは言葉が見つからず、それ以上何も発する事なく瞳を伏せる。クラウスとダーヴィットは顔を見合わせ、それ以上は何も言わなかった。








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