16 / 27
15
しおりを挟む
「母上、話があります」
穏やかにそう言って、フェルナンドは笑みを浮かべた。
「ロゼッタと、結婚したいなんて……」
「何?従妹なんだし、別に構いませんよね?」
フェルナンドは母に、ロゼッタとの結婚話をした。無論予想通り母は焦り青ざめる。
「それは……そうよ。でも、何もロゼッタに拘らなくても……。あの子は伯爵家なんだし、貴方にはもっと相応しい女性がいるんじゃないかしら?し、知り合いにね、公爵家のお嬢さんがいるのよ。次女なんだけど、公爵家と繋がりが出来れば」
滑稽な姿だった。いつも以上に饒舌で、思わず笑いが洩れる。
「フェルナンド?聞いてるの⁉︎」
焦燥からか、かなり苛立っている母はフェルナンドの笑い声に過剰に反応した。
「そんなに怒鳴らなくても、聞こえてますよ」
「っ……兎に角、ロゼッタとの結婚など私は反対よ」
「それって……僕と彼女が兄妹だから、ですよね?」
瞬間母の顔が驚きに満ちて、固まった。
「な、何を、莫迦なこと……そんな事が、ある筈が」
声が面白いくらいに震えている。実に分かり易い人だと思った。流石、自分の夫の兄に身体を開く事だけはある。
本当に単純で滑稽で……莫迦は貴方だよ。
「隠さなくてもいいですよ。僕は、ずっと以前から……知ってますから」
ごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。母はこちらの真意を伺う様な目を向けてきた。
「僕は、叔父上の息子なんですよね」
そこまで話すと母は諦めた様にその場に蹲り、独り言の様に話し始めた。
本当はフェルナンドの父ではなく、父の弟と結婚したかった事。父と婚約中から叔父と関係があった事。又、父は不能(種がない)と医師から診断されたが敢えて本人には伝えなかったそうだ。始めは男としての自尊心を傷付けるのが哀れだと同情して話せなかったと、そう言った。だが今の母の口振りからは、何も知らない父を嘲笑い見下している様にしか思えなかった。
「だから、フェルナンド……ロゼッタとの結婚は諦めて頂戴……」
力なく項垂れ床を見つめる母に、フェルナンドは笑い掛けてやる。
「どうして僕が諦めなくちゃいけないんですか。父上に本当の事バラされたくなかったら、今直ぐ父上にロゼッタとの結婚話してきて下さいよ」
「フェルナンド、正気なの⁉︎……ロゼッタと貴方は血の繋がった兄妹なのよ⁉︎」
煩い女だ。さっきから知ってるって言ってるだろう。血の繋がった妹とか、もうどうでもいいんだよ。僕は、ロゼッタが欲しくしてしょうがないんだ。他の虫螻共に獲られるくらいなら、妹だろうが関係ない。自分が手に入れる。
「煩いなぁ。母上、貴女は黙って僕の言われた通りにしてくれたらいいんですよ。……早くしろよ」
母は自分を、信じられないものでも見る様な軽蔑の目で見ていた。暫く混乱しながら思案すると立ち上がり踵を返す。
「あぁ、母上。叔父上にも宜しく伝えて下さいね。ロゼッタを必ず、僕にくれる様にと……お願いしますよ」
震える母の背中に、そう言葉を投げかけた。
穏やかにそう言って、フェルナンドは笑みを浮かべた。
「ロゼッタと、結婚したいなんて……」
「何?従妹なんだし、別に構いませんよね?」
フェルナンドは母に、ロゼッタとの結婚話をした。無論予想通り母は焦り青ざめる。
「それは……そうよ。でも、何もロゼッタに拘らなくても……。あの子は伯爵家なんだし、貴方にはもっと相応しい女性がいるんじゃないかしら?し、知り合いにね、公爵家のお嬢さんがいるのよ。次女なんだけど、公爵家と繋がりが出来れば」
滑稽な姿だった。いつも以上に饒舌で、思わず笑いが洩れる。
「フェルナンド?聞いてるの⁉︎」
焦燥からか、かなり苛立っている母はフェルナンドの笑い声に過剰に反応した。
「そんなに怒鳴らなくても、聞こえてますよ」
「っ……兎に角、ロゼッタとの結婚など私は反対よ」
「それって……僕と彼女が兄妹だから、ですよね?」
瞬間母の顔が驚きに満ちて、固まった。
「な、何を、莫迦なこと……そんな事が、ある筈が」
声が面白いくらいに震えている。実に分かり易い人だと思った。流石、自分の夫の兄に身体を開く事だけはある。
本当に単純で滑稽で……莫迦は貴方だよ。
「隠さなくてもいいですよ。僕は、ずっと以前から……知ってますから」
ごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。母はこちらの真意を伺う様な目を向けてきた。
「僕は、叔父上の息子なんですよね」
そこまで話すと母は諦めた様にその場に蹲り、独り言の様に話し始めた。
本当はフェルナンドの父ではなく、父の弟と結婚したかった事。父と婚約中から叔父と関係があった事。又、父は不能(種がない)と医師から診断されたが敢えて本人には伝えなかったそうだ。始めは男としての自尊心を傷付けるのが哀れだと同情して話せなかったと、そう言った。だが今の母の口振りからは、何も知らない父を嘲笑い見下している様にしか思えなかった。
「だから、フェルナンド……ロゼッタとの結婚は諦めて頂戴……」
力なく項垂れ床を見つめる母に、フェルナンドは笑い掛けてやる。
「どうして僕が諦めなくちゃいけないんですか。父上に本当の事バラされたくなかったら、今直ぐ父上にロゼッタとの結婚話してきて下さいよ」
「フェルナンド、正気なの⁉︎……ロゼッタと貴方は血の繋がった兄妹なのよ⁉︎」
煩い女だ。さっきから知ってるって言ってるだろう。血の繋がった妹とか、もうどうでもいいんだよ。僕は、ロゼッタが欲しくしてしょうがないんだ。他の虫螻共に獲られるくらいなら、妹だろうが関係ない。自分が手に入れる。
「煩いなぁ。母上、貴女は黙って僕の言われた通りにしてくれたらいいんですよ。……早くしろよ」
母は自分を、信じられないものでも見る様な軽蔑の目で見ていた。暫く混乱しながら思案すると立ち上がり踵を返す。
「あぁ、母上。叔父上にも宜しく伝えて下さいね。ロゼッタを必ず、僕にくれる様にと……お願いしますよ」
震える母の背中に、そう言葉を投げかけた。
18
お気に入りに追加
2,098
あなたにおすすめの小説
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
王城の廊下で浮気を発見した結果、侍女の私に溺愛が待ってました
メカ喜楽直人
恋愛
上級侍女のシンシア・ハート伯爵令嬢は、婿入り予定の婚約者が就職浪人を続けている為に婚姻を先延ばしにしていた。
「彼にもプライドというものがあるから」物わかりのいい顔をして三年。すっかり職場では次代のお局様扱いを受けるようになってしまった。
この春、ついに婚約者が王城内で仕事を得ることができたので、これで結婚が本格的に進むと思ったが、本人が話し合いの席に来ない。
仕方がなしに婚約者のいる区画へと足を運んだシンシアは、途中の廊下の隅で婚約者が愛らしい令嬢とくちづけを交わしている所に出くわしてしまったのだった。
そんな窮地から救ってくれたのは、王弟で王国最強と謳われる白竜騎士団の騎士団長だった。
「私の名を、貴女への求婚者名簿の一番上へ記す栄誉を与えて欲しい」
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる