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プロローグ
しおりを挟む「クロヴィス、お前本気なのか」
「社交界は今、その話で持ちきりですよ」
城の廊下で三人の青年が立ち話をしていた。
「本気だよ。こんな事、冗談な訳ないだろう」
今社交界では、クロヴィス・ルヴィエ公爵が自分の妻であるリゼットの嫁ぎ先を探していると専らの噂になっている。無論二人はまだ離縁はしていない。
「何でだよ。あんなに仲が良いだろう。離縁する必要なんてないだろう」
「リゼット嬢は、この事を知っているんですか?」
「……まだ、言ってない。折りを見て話すつもりだから」
クロヴィスは、何時もの張り付けた様な笑みを浮かべる。
「リゼットには、僕なんかよりもっと相応しい相手がいると思うんだ。歳も離れてるしね」
「はぁ?たかが九歳だろうが」
クロヴィスは二十四歳で、妻のリゼットは十五歳になったばかりだ。
「ユリウスには分からないよ。僕達は昨日今日知り合ったんじゃないんだ。僕とリゼットはもう十年前から夫婦なんだよ。あの子にとって僕は夫ではなく、父や兄同然なんだ」
話は終わりとばかりにクロヴィスは踵を返すと、背中越しに手をヒラヒラと振る。
「おい、クロヴィス!まだ話は終わってないぞ!」
聞こえないフリをして、その場を後にした。
バンッ‼︎ー。
クロヴィスは誰もいない場所で足を止めると苛々が抑えきれず、壁を殴った。
彼女が嫁いで来た日から、決めていた事だ。それを今更惜しくなって手放したく無いなんて……情けなさ過ぎる。
「リゼット……」
彼女の幸せの為だ……。
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