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66話
しおりを挟む花薬の件やエルヴィーラが体調を崩したりと重なり、この顔触れでお茶をするのはかなり久々だ。
レンブラントは右隣に座っているティアナを見た。その隣にはエルヴィーラの姿もある。左隣にはクラウディウスが座り、テオフィル、ヘンリックと続く。
「子供が好む物、ですか」
今日の話題の提供者はレンブラントだ。始めに食い付いて来たのはテオフィルだった。だがその彼は何故かレンブラントを訝しげな表情で見てくる。
「まさかとは思いますが……レンブラント、流石に節操が無いのではありませんか」
「おいおい、やっぱりそうなのか⁉︎」
やっぱりそうなのかと聞かれても何の話かまるで見えない。
「レンブラント、確かに若気の至りという言葉はありますが、紳士たるもの自制出来ない様ではこの先ティアナ嬢を護る事は出来ませんよ」
「だけどまあ出来ちゃったものは仕方ないだろう。俺はお前の気持ち分からなくもない。男たるもの衝動が抑えきれない時もある」
テオフィルからは説教をされ、ヘンリックからはうんうんと同情と共感を貰った。全く嬉しくない。
「君達は一体何の話をしているのかな」
流石にここまで言われたら嫌でも理解する。
盛大に勘違いしている二人を睨みつけながら、レンブラント咳払いをした。
直ぐ隣にはティアナが居るというのに、こんな下品な会話を聞かれたくない。自分も同類だと思われたら最悪だ。
「何って子供の話だろう? お前とティアナ嬢……」
「ヘンリック、君は少し慎みを覚えた方が良いね。テオフィルも分かっている癖に、ヘンリックを嗾け様とするのはやめてくれるかな」
ヘンリックは兎も角、テオフィルは完全に分かりながらやっている。普段真面目な癖に、変な所でふざけるのは彼の悪い所だ。
「今度教会でチャリティーの一環で子供達との交流の場に参加するんだ。その時に何か贈り物を考えているだけど、何が良いかなと思ってね」
ティアナが参加している慈善活動にレンブラントも参加する事になった。
先日の件でシスターには借りもあり、ティアナにも良い所を見せたい。略理由は後者だが、何にせよ悪い話ではない。
「子供ならやっぱり菓子だろう」
「いえ本や紙、ペンなどの方が身になります」
そのどちらもレンブラントは考えたが、やはりそういった類が無難だろう。
「クラウディウスはどう思う?」
「あ、あぁ、すまない、何の話だ」
最近上の空の事が多い彼を気にしつつ、もう一度説明をする。すると「子供なら玩具がいいんじゃないか」と案を出した。
菓子に本や紙、ペンに玩具……どれも捨て難い。いっその事全て用意しても良いかも知れない、そんな風に考えているとティアナが話に入って来た。
「レンブラント様、先日もお話ししましたが子供達への贈り物は寄付金や収益金などから賄っていますので気を回して頂かなくても大丈夫です。参加して頂けるだけで本当に十分なので、それよりも子供達と遊んであげて下さい」
確かに先日ティアナからは説明は受けた。だがやはり手ぶらで行くのは気が引ける。
「ならさ、俺達も参加しないか」
レンブラントが言い淀んでいると、ヘンリックが余計な提案をしてきた。
折角ティアナと二人だけで参加して、それこそ子供が生まれた時の予行練習になるかも知れないなどと内心浮かれていたのに、彼等が来たらその計画は台無しになってしまう。
慌てて断ろうとするがテオフィルやヘンリック、クラウディウスまでも何故か乗る気になってしまい阻止できない。
「本当ですか? それは是非お願いします。きっと子供達も喜びます」
挙句、ティアナのその一言で断る事は出来なくなってしまい、ヘンリック達の参加が決まってしまった……。
レンブラントは深いため息を吐き項垂れた。
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