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59話
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自邸に戻り着替えを済ませ、用意されたコップの水を一気に飲み干し一息を吐く。ようやく少し落ち着きを取り戻した。
レンブラントが暫く椅子に腰掛けゆったりとしていると、扉が叩かれ使用人が入って来た。
「こんな夜更けにどうしたんですか」
ダーヴィットに呼ばれたレンブラントは訝しげな表情で祖父を見る。
掛け時計の針はあと少しで十二の数字を示し日付を跨ごうとしていた。こんな時間に呼びつけるなど、幾ら身内でも頂けない。
「随分と遅かったな。呑んできたのか」
「はい、まあ……」
まさか説教でもするつもりか⁉︎ とレンブラントは身構える。
この歳になって酒を呑み夜中に帰宅したからといって何か言われるなど思いもしなかった。これまで見向きもしなかった癖に、今更何なんだと呆れる。
「お前が余りに遅い故、待ちくたびれて寝てしまったぞ」
脈略の無い話に、レンブラントは眉根を寄せた。一体誰が寝てしまったというのか……。
「レンブラント、お前に客人が来ている」
使用人に案内されたのは、別邸の二階にある奥の客間だった。
扉の前で使用人はお辞儀をすると、早々にその場から立ち去る。残されたレンブラントは困惑しながらも扉をゆっくりと開いた。
カーテンの隙間から月明かりが部屋に射し込んでいる。長椅子には月明かりに照らし出された彼女が小さな寝息を立て眠っていた。
絹の様な美しい銀色の髪が光輝き、陶器の様に白い肌と紅薔薇の様に赤い唇、触れたら壊れてしまいそうな程華奢な姿は、まるでお伽話の中の妖精の様でこの世のものかと疑ってしまう程に美しかった。
「ティアナ……」
彼女の前に跪き、顔を覗き込む。起こさない様にそっと柔らかな頬に触れて、本物かどうか確かめて見る。
まだ酔いが覚め切ってないのか、起きたまま夢でも見ているのではないか……彼女を欲する余り自分が創り出した幻覚ではないと疑ってしまう。
「温かい」
触れた彼女の頬は温かった。
(夢でも、幻覚でもない)
胸が熱くなり震えた。
髪に触れ撫でると、唇が僅かに開き声が洩れる。その愛らしい姿に自分の顔がダラシなく緩むのが分かった。
ふと彼女の手元に視線を向けると、大切そうにある物を握り締めているのに気が付く。それは見覚えのある物だった。
ーー手紙だ。
自分が彼女へ宛てた手紙をティアナは握り締めていた。
「ん……」
身動ぎ、ゆっくりと開いた大きな瞳と目が合った。
「おはよう」
「……っ⁉︎」
寝惚け眼の様子で瞬きを何度か繰り返すと彼女は突然跳ね起きた。
「レ、レレレンブラント様⁉︎」
彼女は今の自分の様子を確認すると慌てふためき吃ったかと思えば、今度は上手く声が出ないのか口を小鳥の様にパクパクとさせる。本当にどこまでも彼女は愛らしいと、レンブラントは目を細めた。
「申し訳ありません! レンブラント様の帰りをこちらで待たせて頂いていたんですが、何時の間にか寝てしまった見たいです……」
身体を小さく縮こませ、花が萎れた様にシュンとなる彼女の頭を撫でた。瞬間ピクリと震えるが、拒否される事はなく内心安堵する。
「遅くなってしまってすまない。随分と待たせてしまったね」
「いえ、勝手に押し掛けた私が悪いんです……」
上目遣いで見てくる彼女にそろそろレンブラントは限界を感じる。
(ダメだ……限界かも)
やはりまだ酒が残っているかも知れない。理性が利きそうない。湧き上がる衝動を抑え切れず、レンブラントは徐にティアナを掻き抱いた。
「レンブラント様っ⁉︎」
「ごめん、ティアナ。我慢し過ぎて、もう限界だ。少しだけこのままでいさせて」
目を瞑り感性を研ぎ澄ませて彼女を全身で堪能する。久々に感じる彼女の温もりと甘い匂い、柔らかな身体に頭が痺れてクラクラする。
「会いたかった……ティアナ。君に会いたくて仕方なくて、おかしくなりそうだった」
無意識に、更に彼女を抱く腕に力が篭る。
すると応える様に彼女もまたレンブラントの背に手を回しギュッと抱き締め返してくれた。
レンブラントが暫く椅子に腰掛けゆったりとしていると、扉が叩かれ使用人が入って来た。
「こんな夜更けにどうしたんですか」
ダーヴィットに呼ばれたレンブラントは訝しげな表情で祖父を見る。
掛け時計の針はあと少しで十二の数字を示し日付を跨ごうとしていた。こんな時間に呼びつけるなど、幾ら身内でも頂けない。
「随分と遅かったな。呑んできたのか」
「はい、まあ……」
まさか説教でもするつもりか⁉︎ とレンブラントは身構える。
この歳になって酒を呑み夜中に帰宅したからといって何か言われるなど思いもしなかった。これまで見向きもしなかった癖に、今更何なんだと呆れる。
「お前が余りに遅い故、待ちくたびれて寝てしまったぞ」
脈略の無い話に、レンブラントは眉根を寄せた。一体誰が寝てしまったというのか……。
「レンブラント、お前に客人が来ている」
使用人に案内されたのは、別邸の二階にある奥の客間だった。
扉の前で使用人はお辞儀をすると、早々にその場から立ち去る。残されたレンブラントは困惑しながらも扉をゆっくりと開いた。
カーテンの隙間から月明かりが部屋に射し込んでいる。長椅子には月明かりに照らし出された彼女が小さな寝息を立て眠っていた。
絹の様な美しい銀色の髪が光輝き、陶器の様に白い肌と紅薔薇の様に赤い唇、触れたら壊れてしまいそうな程華奢な姿は、まるでお伽話の中の妖精の様でこの世のものかと疑ってしまう程に美しかった。
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彼女の前に跪き、顔を覗き込む。起こさない様にそっと柔らかな頬に触れて、本物かどうか確かめて見る。
まだ酔いが覚め切ってないのか、起きたまま夢でも見ているのではないか……彼女を欲する余り自分が創り出した幻覚ではないと疑ってしまう。
「温かい」
触れた彼女の頬は温かった。
(夢でも、幻覚でもない)
胸が熱くなり震えた。
髪に触れ撫でると、唇が僅かに開き声が洩れる。その愛らしい姿に自分の顔がダラシなく緩むのが分かった。
ふと彼女の手元に視線を向けると、大切そうにある物を握り締めているのに気が付く。それは見覚えのある物だった。
ーー手紙だ。
自分が彼女へ宛てた手紙をティアナは握り締めていた。
「ん……」
身動ぎ、ゆっくりと開いた大きな瞳と目が合った。
「おはよう」
「……っ⁉︎」
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「レ、レレレンブラント様⁉︎」
彼女は今の自分の様子を確認すると慌てふためき吃ったかと思えば、今度は上手く声が出ないのか口を小鳥の様にパクパクとさせる。本当にどこまでも彼女は愛らしいと、レンブラントは目を細めた。
「申し訳ありません! レンブラント様の帰りをこちらで待たせて頂いていたんですが、何時の間にか寝てしまった見たいです……」
身体を小さく縮こませ、花が萎れた様にシュンとなる彼女の頭を撫でた。瞬間ピクリと震えるが、拒否される事はなく内心安堵する。
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「いえ、勝手に押し掛けた私が悪いんです……」
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(ダメだ……限界かも)
やはりまだ酒が残っているかも知れない。理性が利きそうない。湧き上がる衝動を抑え切れず、レンブラントは徐にティアナを掻き抱いた。
「レンブラント様っ⁉︎」
「ごめん、ティアナ。我慢し過ぎて、もう限界だ。少しだけこのままでいさせて」
目を瞑り感性を研ぎ澄ませて彼女を全身で堪能する。久々に感じる彼女の温もりと甘い匂い、柔らかな身体に頭が痺れてクラクラする。
「会いたかった……ティアナ。君に会いたくて仕方なくて、おかしくなりそうだった」
無意識に、更に彼女を抱く腕に力が篭る。
すると応える様に彼女もまたレンブラントの背に手を回しギュッと抱き締め返してくれた。
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