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22話
しおりを挟む外に出たティアナとレンブラントは、準備されていた馬車に乗り込んだ。
「久しぶりだね」
戸惑うティアナを他所に、彼は向かい側に座ると、何事もなかった様に世間話を始めた。ティアナは目を丸くし躊躇いながらも頷く。
「それで、君を今度お茶に誘おうと思ってたんだけど、今日これからどうかな」
「え……はい、それは構いませんが……ではありません!」
呆然としながら彼の話を聞いていて、最後の所以外は、まるで聞いてなかったティアナは、反射的に返事をした。今は世間話などしている場合ではない。危うく彼に流される所だった。
「どうしたの、急にそんな大きな声出して」
「ぁ……申し訳ありません……」
思わず叫んで立ち上がってしまったが、直ぐに我に返り慌てて座り直す。
「レンブラント様、先程はありがとうございました。ですが私、今日嫁ぐ事になっていまして……。なのでレンブラント様とお茶している場合ではなくて……」
先程は彼があの場を収める為にあんな突拍子のない嘘まで吐いてくれた様だが、実際彼は何しに来たのだろうか……。まさか本当にティアナをお茶に誘う為に来たら、たまたまあの場面に出会した、という経緯なのだろうか……。
困惑しながらティアナがそう言うと、今度は彼が目を丸くする。そして次の瞬間軽快な笑い声を上げた。
「あはは」
◆◆◆
一頻り笑い終わったレンブラントは、呆然とこちらを見ている彼女をみて居住まいを正した。呼吸を整え、深く息を吐く。
「すまない、ただ可笑しくてね」
純粋に子供の様に笑ってしまった。他意はない。ただ、もしこれがティアナではなく他の女性なら可笑しいの意味合いがまるで違う。理解力のない頭の弱い女だと内心呆れ嘲笑するだろう。
だが今レンブラントが、彼女に対して抱いている感情は、愛おしいと安堵感だ。
「詳しい話は着いてから話すよ。でもその前に一つだけ」
困った様に眉根を寄せるティアナの頬に触れると、一瞬ピクリと身動ぐが直ぐに大人しくなる。
「安心して良いよ。君が嫁ぐのは、冴えない田舎貴族の子爵ではなく、この僕だよ」
馬車が止まると、レンブラントはティアナの手を取り降りた。着いた先はフレミー家の屋敷だ。
「レンブラント様、これは……」
「君の荷物は既に運び込まれている筈だよ。ティアナ嬢、今日から君は此処で暮らすんだ」
いまいち、まだ状況が把握出来ていないであろうティアナを連れて屋敷の中へと入ると、先に到着した彼女の侍女達が出迎えてくれた。
「モニカ、ハナ、ミア……」
「お疲れ様でした。ティアナ様のお荷物は、既に二階の角部屋に運び込んでおります。」
「モニカ、一体何が起きているの?私もう何が何だか……」
「実は少し前に、レンブラント様が私の元を訪ねていらっしゃいまして」
本当にギリギリだった。何しろ半月しかなかったのだ。我ながら頑張っと、自分を褒めたいと思う。
話が長くなりそうだと思ったレンブラントは、モニカを制止する。
「場所を移そうか。大切な僕のレディを立たせたままでは落ち着かないからね」
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