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4話
しおりを挟む人生そんなに甘くない。
ニクラスに会った翌日の夜。ティアナはとある夜会に来ていた。レンブラントが一体何時夜会に現れるかは分からないが、取り敢えず彼の情報を集めなくてはならないと思い、足を運んでみたのだが、運が良いのか、なんとレンブラントはこの夜会に参加していたのだ。ティアナは歓喜しながらも気持ちを落ち着かせると、早速彼へと接触を試みるが、出来ない。日頃社交の場に滅多に来ないティアナは知らなかった。女性達の恐ろしさを……。
レンブラントはかなりの美青年で、女性達から人気があるらしく夜会の女性参加者の三分の一くらいが、物凄い勢いで彼に群がっている。ティアナは頑張って彼に近付こうとするが、いとも容易く弾き飛ばされてしまった。
「……」
仕方ないので、取り敢えず柱の陰に避難して距離を取り様子を窺う。暫くしたら女性達も落ち着いて、離れて行くかも知れない。そんな淡い期待をしながら、一時間、二時間……根気強く、飲まず食わずで監視をしていた。
「……」
だが、ダメだった……。
結局夜会のお開きになる時間までハーレム状態の光景は変わらず、彼が馬車に乗る寸前までそれは続いた。
何の収穫もないまま帰宅したと思われるティアナだったが、実は夜会の最中に女性達がレンブラントについて話しているのを盗み聞きしていた。
頭脳明晰で剣術に優れ、若くして王太子殿下の側近……と他にも色々話していたが忘れた。正直彼に関する情報に興味はない。あるのは次何時彼が何処に現れるかだけだ。
そして肝心のレンブラントの次の参加する社交の場を確りとメモして持ち帰ってきたのだ。
「モニカ、招待状ってまだ取ってある⁉︎」
「期日を過ぎるまでは大切に保管してありますが……」
これまで侯爵家に生まれて良かったなんてこれっぽっちも思った事はなかったが、今回だけは感謝する。ほぼ夜会などには参加しないティアナだが、侯爵令嬢というだけで無条件に大体の招待状は届く。
「明日から毎日夜会に参加するから準備をお願いね!」
ティアナは深いため息を突いた。
あれから、また七日も過ぎてしまった。お茶会から夜会、時には鑑賞会や音楽会まで一日の内にはしごしてまで参加したのに、結局レンブラントには接触する事が出来なかった。彼は直ぐそこに居るのに、女性達の鉄壁に阻まれて彼の視界にすら入れなかった。
「ごめんなさい、お祖母様……。私は、役立たずです……」
ベッドで眠る祖母は顔色が悪い。僅かに開いた口からは、また彼の名前が洩れ聞こえる。
何もしてあげられない自分が、情けない。
母から、家族から見放され、冷たいく暗い部屋に閉じ込められていた自分を、救い出してくれた祖母。
あの時、お祖母様が扉を開けて、外へと連れ出してくれなければ、今の私はいない。
「……諦めない」
まだ出来る事がある筈だ。
ティアナはベッドの上に投げ出されているロミルダの手を握った。
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