6 / 42
5
しおりを挟む
本を拾った日の夕刻。妃教育一日目を終えた、エルヴィーラが部屋に戻ってきた。
「……お腹空いた」
扉を閉めるなり、そう言った。まだ一日目だというのに、げっそりした顔に見える。
「食事は済まされたのではないんですか」
妃教育の一環で、食事のマナーもある。朝昼晩と全て他の候補者達と共に食事をしなくてはならない。無論ただ食事をするだけではなく、厳しく指導される。
「足りる訳ないでしょう⁉︎あんな少しで!」
そう言って、自邸から持参した焼き菓子を食べ始めた。
「ちょっと、何ボサっとしてるの?早くお茶淹れなさいよ」
お茶を淹れる様に要求されたアレクシアは、内心呆れながらもお茶を淹れる為お湯を貰いに、食堂へと向かった。
「どうぞ……」
「遅い!もう食べ終わっちゃったわよ!本当にトロいわね」
そう言いながらエルヴィーラは、お茶をグビグビと飲み干す。温かいお茶をまるで水の様に……折角淹れたのだからもう少し味わって欲しい。
「……」
それにしても、もう食べ終わったのね……まだそんなに時間は経ってないのだが。相変わらずの食べっぷりだ。
「城の食事って、少な過ぎるわ。私が王太子妃になったら、量を見直させないと」
そんな日は来ないので、考えるだけ時間の無駄だとアレクシアは思う。それに城の食事の量が少ないのではなく、侯爵家の食事の量が多すぎるだけだろう。
妹を溺愛する両親は、エルヴィーラが望むままに与え続けていた。故に肥えに肥え、この様に出来上がった……。
「妃教育は、如何でしたか」
茶器を片付けながら、なんとなく聞いてみた。結果は見えているが、この妹が妃教育を受けているのは少し興味がある。
エルヴィーラは、アレクシアの言葉に一瞬顔を歪ませた。だが直ぐにお得意の高笑いをする。
「余裕よ!余裕~。寧ろ周りの程度が低くて笑っちゃったわ」
そうは言っているが、目が笑っていない。これは絶対何かあったのだろう。まあ、聞かずとも大体察しがつくが……。
エルヴィーラは、その後ベッドに入ると直ぐに眠ってしまった。相当疲れている様だ。
私も、寝よう。
慣れない環境にアレクシアも、かなり疲れていた。
アレクシアは、自室に移動しベッドに潜った……が寝れない。
グガアァ……グガァ……。
「煩い……」
扉は閉めている筈なのに、思いっきりエルヴィーラのいびきが聞こえてくる。屋敷にいた時は、部屋は離れていたので知らなかった。
隣の部屋で、獣でも寝ているようだ……。
昨夜興奮していたエルヴィーラは、夜遅くまで起きていたようで先に眠ったアレクシアは気づかなかったが……まさか、ずっとこれが続く訳⁉︎
これは絶対、不眠症になる。最悪だ。
「……お腹空いた」
扉を閉めるなり、そう言った。まだ一日目だというのに、げっそりした顔に見える。
「食事は済まされたのではないんですか」
妃教育の一環で、食事のマナーもある。朝昼晩と全て他の候補者達と共に食事をしなくてはならない。無論ただ食事をするだけではなく、厳しく指導される。
「足りる訳ないでしょう⁉︎あんな少しで!」
そう言って、自邸から持参した焼き菓子を食べ始めた。
「ちょっと、何ボサっとしてるの?早くお茶淹れなさいよ」
お茶を淹れる様に要求されたアレクシアは、内心呆れながらもお茶を淹れる為お湯を貰いに、食堂へと向かった。
「どうぞ……」
「遅い!もう食べ終わっちゃったわよ!本当にトロいわね」
そう言いながらエルヴィーラは、お茶をグビグビと飲み干す。温かいお茶をまるで水の様に……折角淹れたのだからもう少し味わって欲しい。
「……」
それにしても、もう食べ終わったのね……まだそんなに時間は経ってないのだが。相変わらずの食べっぷりだ。
「城の食事って、少な過ぎるわ。私が王太子妃になったら、量を見直させないと」
そんな日は来ないので、考えるだけ時間の無駄だとアレクシアは思う。それに城の食事の量が少ないのではなく、侯爵家の食事の量が多すぎるだけだろう。
妹を溺愛する両親は、エルヴィーラが望むままに与え続けていた。故に肥えに肥え、この様に出来上がった……。
「妃教育は、如何でしたか」
茶器を片付けながら、なんとなく聞いてみた。結果は見えているが、この妹が妃教育を受けているのは少し興味がある。
エルヴィーラは、アレクシアの言葉に一瞬顔を歪ませた。だが直ぐにお得意の高笑いをする。
「余裕よ!余裕~。寧ろ周りの程度が低くて笑っちゃったわ」
そうは言っているが、目が笑っていない。これは絶対何かあったのだろう。まあ、聞かずとも大体察しがつくが……。
エルヴィーラは、その後ベッドに入ると直ぐに眠ってしまった。相当疲れている様だ。
私も、寝よう。
慣れない環境にアレクシアも、かなり疲れていた。
アレクシアは、自室に移動しベッドに潜った……が寝れない。
グガアァ……グガァ……。
「煩い……」
扉は閉めている筈なのに、思いっきりエルヴィーラのいびきが聞こえてくる。屋敷にいた時は、部屋は離れていたので知らなかった。
隣の部屋で、獣でも寝ているようだ……。
昨夜興奮していたエルヴィーラは、夜遅くまで起きていたようで先に眠ったアレクシアは気づかなかったが……まさか、ずっとこれが続く訳⁉︎
これは絶対、不眠症になる。最悪だ。
43
お気に入りに追加
5,318
あなたにおすすめの小説
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
愛を語れない関係【完結】
迷い人
恋愛
婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。
そして、時が戻った。
だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。
旦那様、離婚しましょう
榎夜
恋愛
私と旦那は、いわゆる『白い結婚』というやつだ。
手を繋いだどころか、夜を共にしたこともありません。
ですが、とある時に浮気相手が懐妊した、との報告がありました。
なので邪魔者は消えさせてもらいますね
*『旦那様、離婚しましょう~私は冒険者になるのでお構いなく!~』と登場人物は同じ
本当はこんな感じにしたかったのに主が詰め込みすぎて......
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
犬猿の仲だったはずの婚約者が何故だか溺愛してきます【完結済み】
皇 翼
恋愛
『アイツは女としてあり得ない選択肢だからーー』
貴方は私がその言葉にどれだけ傷つき、涙を流したのかということは、きっと一生知ることがないのでしょう。
でも私も彼に対して最悪な言葉を残してしまった。
「貴方なんて大嫌い!!」
これがかつての私達に亀裂を生む決定的な言葉となってしまったのだ。
ここから私達は会う度に喧嘩をし、連れ立った夜会でも厭味の応酬となってしまう最悪な仲となってしまった。
本当は大嫌いなんかじゃなかった。私はただ、貴方に『あり得ない』なんて思われていることが悲しくて、悲しくて、思わず口にしてしまっただけなのだ。それを同じ言葉で返されて――。
最後に残った感情は後悔、その一つだけだった。
******
5、6話で終わります。パパッと描き終わる予定。
入り婿予定の婚約者はハーレムを作りたいらしい
音爽(ネソウ)
恋愛
「お前の家は公爵だ、金なんて腐るほどあるだろ使ってやるよ。将来は家を継いでやるんだ文句は言わせない!」
「何を言ってるの……呆れたわ」
夢を見るのは勝手だがそんなこと許されるわけがないと席をたった。
背を向けて去る私に向かって「絶対叶えてやる!愛人100人作ってやるからな!」そう宣った。
愚かなルーファの行為はエスカレートしていき、ある事件を起こす。
私がいなくなっても、あなたは探しにも来ないのでしょうね
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族家の生まれではありながらも、父の素行の悪さによって貧しい立場にあったエリス。そんな彼女は気づいた時、周囲から強引に決められる形で婚約をすることとなった。その相手は大金持ちの御曹司、リーウェル。エリスの母は貧しい暮らしと別れを告げられることに喜び、エリスが内心では快く思っていない婚約を受け入れるよう、大いに圧力をかける。さらには相手からの圧力もあり、断ることなどできなくなったエリスは嫌々リーウェルとの婚約を受け入れることとしたが、リーウェルは非常にプライドが高く自分勝手な性格で、エリスは婚約を結んでしまったことを心から後悔する…。何一つ輝きのない婚約生活を送る中、次第に鬱の海に沈んでいくエリスは、ある日その身を屋敷の最上階から投げてしまうのだった…。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる