上 下
38 / 68
3.彼らの関係

その5、お友だちとは話をしよう①

しおりを挟む




同窓会当日。二時間前。

胃がぎりぎりする。
なんて言われるんだろう。


Uくんのことで疎遠になったモブ友 M実に『ふたりで会いたい』なんて言われて、私は会場近くのカフェでひとりコーヒーを飲んでいた。気分はどん底。海の底。今すぐ物言わぬ貝になりたい。

なにせ卒業から五年間、まったく会わなかったのだ。在学中にはあれだけ仲良くしていたにも関わらず。ああ怖い。会いたくない。ほんとはすっごく会うのが怖い……


『頑張んなきゃね』

「……うん」


ぎゅうっと手を握る。うん、頑張らなきゃ。
視線を上げると、ちょうど入口で大量のショッピングバッグを抱えてうろついているM実が見えた。うわぁ変わってない。超ロングストレートの黒髪も、ちょっとゴスロリの入ったフリルのワンピースも。人ってあんまり変わらないんーー


「A~子ぉ~!!」
「M、M実ー!」
「えーもうすっごい久しぶり! 元気だったぁ? ってかなんか雰囲気変わった? べっぴんになったねー!」
「う、ぉお、久しぶりぃ。いや、メイクしてるから……」
「なるほど! いやマジきれい。美しい。エロい。おぱーいがでかいごちそうさまです」
「えー……」


うう、気合入れすぎたかな。今日はM実とUくんの二大しんどい巨頭に会うからと武装してきた。普段よりメイクをしっかりして、悪戦苦闘しながら髪をゆるふわにして、服は身体の線がきれいに映えるベージュのニットワンピ。ビデオ通話で事細かに指示してくれた早織ちゃんに感謝なんだけど、やっぱりやりすぎてないかな……ってか。


全っ然変わっとらんな、こいつ!


声がちょっとかん高いところも、ゼミ生随一の早口も、落ち着きのない雰囲気や独特すぎる言い回しまで。ああモブ友よ、あなた全く変わらない。あんなにガチガチだった身体からふすっと力が抜けてゆく。いかんいかん。身を引き締めなきゃ。

M実はメニューにさっと目を通すとダブルブラックエスプレッソなるものを頼んだ。そうそう、甘党に見えるのに根っからの甘いもの嫌いだった。懐かしがっている場合じゃないのに、なんだかすごく嬉しくなる。不謹慎。


「……ほんと、久しぶりだね、M実」
「いやほんとー! こっちに出てきたの何年ぶりだろ。十億年ぶり? たまらんわー人多すぎて! でも見てほら、めちゃんこ服買った」
「うん、やばい」
「ついついねー。やっぱ、通販では味わえないこの? パッションというか? 超たぎる」
「今はどこにいるんだっけ?」
「実家の山梨に帰ってんのよー。もう立派なぶどう農家。あ、はいこれおみや。うちのワイン」
「えー! いいの?」
「うんどーぞ! でね、私結婚するんだけど」


矢継ぎ早に言われて何がなんだか……って。


「えええ!」
「いやー、お先に失礼いたしまぁす、うぇーい」
「きき聞いてないよ!」
「言ってないもーん。っていうか、誰にも言う暇なくって。超スピード婚」
「え、そうなの?」
「うんまさかの三ヶ月。やばくなーい?」


三ヶ月。三ヶ月……
まさか……

脳裏にはよく見知った顔が出てきて、私の声は、ちょっと震えていたかもしれない。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

私が一番近かったのに…

和泉 花奈
恋愛
私とあなたは少し前までは同じ気持ちだった。 まさか…他の子に奪られるなんて思いもしなかった。 ズルい私は、あなたの傍に居るために手段を選ばなかった。 たとえあなたが傷ついたとしても、自分自身さえも傷つけてしまうことになったとしても…。 あなたの「セフレ」になることを決意した…。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

溺愛彼氏と軟禁生活!?~助けてくれた彼に私が堕ちるまで~

すずなり。
恋愛
ある日、仕事をしてるときに急に現れた元カレ。 「お前を迎えに来た。一緒に帰るぞ。」 そんなことを言われるけど桃は帰る気なんてさらさらなかった。 なぜならその元カレは非道な人間だったから・・・。 「嫌っ・・!私は別れるって言った・・・!」 そう拒むものの無理矢理連れていかれそうになる桃。 そんな彼女を常連客である『結城』が助けに行った。 「もう大丈夫ですよ。」 助け出された桃は元カレがまだ近くにいることで家に帰れず、結城が用意したホテルで生活をすることに。 「ホテル代、時間はかかると思いますけど必ず返済しますから・・・。」 そんな大変な中で会社から言い渡された『1ヶ月の休養』。 これをチャンスだと思った結城は行動にでることに。 「ずっと気になってたんです。俺と・・付き合ってもらえませんか?」 「へっ!?」 「この1ヶ月で堕としにかかるから・・・覚悟しておいて?」 「!?!?」 ※お話は全て想像の世界のお話です。 ※誤字脱字、表現不足など多々あると思いますがご了承くださいませ。 ※メンタル薄氷につき、コメントは頂けません。申し訳ありません。 ※ただただ『すずなり。』の世界を楽しんでいただければ幸いにございます。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

友情結婚してみたら溺愛されてる件

鳴宮鶉子
恋愛
幼馴染で元カレの彼と友情結婚したら、溺愛されてる?

優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法

栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

処理中です...