【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

3.彼らの関係

その3、お友だちには相談しよう②

と、いうわけで。


「来週は来れないです」
「どうしたの？」
「土曜日、ゼミの同窓会で。毎年行ってるんです」
「へぇ。楽しんでおいで」
「はい」
「……楽しめそうにない？」


げっ、バレた。

付き合いの長い早織ちゃんは別として、どうしてこの人にまでバレるんだろう。最近の私はどうもおかしい。モブスキルのひとつ、表情筋の死滅がうまくいってないらしい。人に注目されるのが嫌いなモブ必須のスキルなのに。

日曜の朝……もう昼か。セフレくんのセミダブルベッドはうちのシングルベッドよりも数倍眠り心地が良くって、つい惰眠してしまう。上半身裸に下は紺色のスウェットを履いた彼は、ごろごろしながら私の頬を撫でた。ちなみにスウェットの上は私が着ている。同じ服のはずなのに着ている人間で雲泥の差があるなぁ。もちろん、私が泥のほう。


「元カレが来るんですけど」
「……うん」
「それはもう、どうでも良いんですけど。その彼と付き合う前から仲よかった友だちが、彼のこと好きで」
「三角関係？」


うなずく。理解が早くって助かる。
本当は三角関係というより、私の横恋慕に過ぎないのだけれど。それを言う勇気はこの期に及んでなかった。つくづく私は卑怯なモブだ。


「それで、疎遠になっちゃって。付き合ったのが4年の3学期からだったんで、卒業して、そのまま。その子、同窓会にも来なくって。でも」
「今回は来る、と」
「そうです。久しぶりに会いたいって、個別に連絡までくれて。私としても楽しみなんですけど、でも」
「ちょっと気まずい？」
「……うん」
「そっか」


イケメンテレパシー発動中。長い腕に引き寄せられて、胸のなかで息をついた。しっとりと汗ばんでいるけど、汗臭いなんてまったく感じない。あったかい。ちょっと泣きそうになっちゃう。


「頑張んなきゃね」
「……はい」


……本当にこの人は空気を読むのが上手い。
無駄なことは言わずに、今一番欲しかった言葉をくれる。普通ならこうはいかない。イヤなら行かなきゃいいとか、会っても差し当たりなく過ごせばいいと言われる事を覚悟していたけど、実際には全然違った。

だから優秀なんだ。
専務職もコネなんかじゃなくて、純粋な実力なんだろうな……すごいな、いいなぁ。