【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

サバ無欲

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2.経理部、田中A子

その5、田中A子は五里霧中①

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何食べたいって聞かれてなんでもいいって答えたらお高そうな創作和食レストランにされそうだったので、あわててラーメンを指定しました。どうも、田中A子です。

正直、選択を誤ったと思っています。


「ん、鶏白湯うまい」
「ソウデスカ……」


いや、私はいいんです。
ラーメン屋に抵抗ないし、ラーメン好きだし、昨日しおラーメン食べたけど連続ラーメンいける口だし。なによりモブなので、一人でラーメン屋に入ってもうまい具合に空気に溶け込めるというか。

問題は、この人。


「餃子もうまいし、いいね、ここ」
「ソリャヨカッタデス……」


ラーメン屋に王子。
ラーメン屋にさわやか系王子。
ラーメン屋にお高いスーツのさわやか系王子。

場違いもいいとこ! 明らかなるミス! これが仕事だったら厳重注意通り越して減俸ものだわ! じゃあ仕事じゃなくてよかったね。じゃなくて!!

ああ、こんな事ならお高くても創作和食にしておくんだった。でも給料日まであと何日……いやいや、単品料理にすれば値段も抑えられるし。でもそうなると結局この人に恥をかかせることに? ああやだ、金持ちのセフレってお金かかるのかも。


「エンボちゃん」
「アッハイ」
「そっち貝出汁だっけ? スープひと口もらっていい?」
「え」
「あ、そういうの嫌なタイプ?」
「ぅあ、いえ、どうぞ」


テーブル席が埋まっているのでカウンターで、背中にビシバシと刺さる視線が痛いだけです。この人は慣れているのか自覚がないのか、平然としているけど。
ラーメン皿を渡そうとしたら、肩が触れるほど近くまできて身がすくむ。だから! 近いんだってば! どうなってるのパーソナルスペース!


「柚子入ってるんだ、これも好きだなー」
「ヨカッタデス」
「今度はこっちにしよう」


やめたげて。来ないであげて。
さっきからコワモテ店主がソワソワしてるの。落ち着かない。このままだと芸能人と勘違いして色紙を持って来かねない。そんな事されたら行きつけの店がひとつ無くなるから、ほんと。


「あー食ったー」
「あの、私ちょっとお手洗いに」
「ん、いってらっしゃい」


空前絶後の超絶イケメンに見送られながらトイレに入って、便座に座って、やっと落ち着いた。できるならこのまま閉じこもってたい。いやダメ、あんなのをこれ以上この場に置いたら管理不行き届きで当局に連行される。当局ってなによ。馬鹿か私は。

結局大して時間もかけずに戻った。化粧なんて直してない、ひっつめ眼鏡のいつもの私。これからのことを期待してるとか、この人に気に入られたいとか、そんな風に思ってるなんて微塵もとられたくない。幻滅、大いに結構。なんならここで解散でいい。


「お待たせしました」
「ん。じゃあ行こっか」
「はい。えっと、あれ、伝票……」
「さっき払っといた。行こ?」
「え、あの、おいくらでした? 今度はちゃんと払います」
「ふふ、なに今度はって? いーよ、また財布出すの面倒だし」
「でも、でも」
「ほらおいで、行くよ」


……今日は最初っから、恋人つなぎ。


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