【R18】だれがフィクションだと言った 〜圧倒的モブ田中A子のセフレ生活〜

サバ無欲

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1.モブの心得

その1、モブたるもの空気であれ

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田中A子は圧倒的モブである。
と、自覚している。
いつ頃からか、自覚している。


学芸会では町民5(ヒトでよかった)、文化祭では小道具係、部活は漫研(絵は上手くない)。運動ぎらいの集団コワイ。特技はなくて趣味はカラオケ。チャームポイントを強いて挙げればチチくらい。

まぁ圧倒的モブである。

モブにはモブの役割がある。
髪を染めない、眼鏡をかける、背中は猫背などなど、モブ役に対する要求は多岐に渡るが自然とこなせる。たぶん私は生まれもってのモブなのだ。であればなおさら真っ当に、モブとしての生涯を全うしていく所存。異論なし。全会一致。


「A子せんぱーい、あのぉ……」


はい、こちら後輩のキラキラ系女子 早織ちゃん。最近ついに秘書課からお呼びがかかっているとのウワサデス。

本日もゆるふわパーマの決まっている早織ちゃん、うるぷるリップをとがらせて、その手には数枚の書類をたずさえております。それにしても手が綺麗。爪も丁寧にネイルしてある。パーフェクト。


「デート? いいよ、やっとくやっとく」
「うわぁーん、ありがとうございます! 先輩も用事のときは言ってくださいね! いつでも変わりますんで」
「ありがとー、ほら、早く行かないと彼氏くんに怒られるよー」
「あっ、ほんとヤバい! じゃあA子先輩、すみませんが、よろしくお願いします……っ!」
「はいはーい」


うおっと、結構多いな。ってかこれ月末処理じゃんか。くっそー、やられた。

でもぺこぺこと頭を下げながら退勤していく早織ちゃんを見ると、ちくちくした気持ちも削げてしまった。早織ちゃんの彼氏(名前……わすれたなー)はちょっと前にパリ出張から帰ったところだ。会いたくて会いたくて震えたんだろ? 気持ちはわかるぜ。

こういうときは心を無にする。計算は電卓がしてくれるし、ブラインドタッチは小学校の頃からやってたんだから、大丈夫。パソコンを作れる兄がいてよかったなぁ。

パチポチ、パチポチ、1枚おわり。
2枚、3枚……キーを叩く音が強くなる。いけないクセだ。家族にも何度も言われたけれど、結局修正できなかった。


お疲れ様です。
お先に失礼します。


そんなやりとりを何度も繰り返していると、いつの間にか夜の9時。時計をみる目がかすんでる。頭を起こすと肩と首とがゴキゴキ鳴った。

そう言えばお腹も空いている。
デスクの中をごそごそ探るとコンビニブランドのカップラーメン醤油味。賞味期限……半年前。イケる。完全なる勝利。お湯を注いで約3分待つ。

前は出前を頼んでいたけど、受け取り人の守衛さんにいい顔をされなくなってから、やめた。『いい歳のお嬢さんが、遅くまで家に帰らないで危ないよ』だと? じゃあ人員を増やしてくれ。それか業務を減らしてよジーサン。ちがう、ジーザス。

さいわい(?)、ウチは残業代が分単位でつく。
しっかり働けば稼げる職場だ。とは言え、資格や技能検定を受ける気はない。安い基本給とまあまあな残業代で、そこそこ安定した暮らしができれば、モブのA子は満足なのです。


ぽろん、ぽろん、ぽろん。


ラインがお知らせ通知をしている。あ、かやく入れ忘れた。まぁいいや。麺をぐるぐる回しながら画面を見ると、Uくんからだった。

そうそう、来週は箱根なんだよな。
Uくんも私も出不精だから、基本温泉とか庭園とか、ジジババが行くようなところにしか出歩かない。お金もかかるから、宿だって贅沢は言ってられないけど、今回はUくんの誕生日が近いからちょっと……




『ごめん』
『好きな人ができました』
『別れてください』




田中A子、26歳、独身。
とりあえず泣いていいですか?
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