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番外編
はちみつの妻③
しおりを挟む自分の股ぐらに蜂蜜が垂らされる。
ウバドはその様を眺めるしかなかった。
今や恍惚としている妻は、うっすらと妖艶な笑みを崩さずに、蜂蜜のついた手でウバドの猛りきったものを一度、撫で回す。ぬち、と卑猥な音がした。それが蜂蜜なのか精液なのか先走りなのか、ウバドには分からない。が、答えはすぐ知ることになる。
サラディーヤがぬめった手のひらを、見せつけるように舐めとったから。
「グゥ……ッ」
「あまくておいしい……」
「ッ、そうか、あっ、サラディーヤ、ぐっ、やめてくれっ……!」
そうなるだろうと、大方予想はできていたのに。
薔薇の花びらのような唇が先端に吸い付くと、ウバドは呻きながら制止を乞うしかなかった。当然それは聞き入れられず、サラディーヤは視線を合わせたままちゅるちゅると蜜を味わっている。先ほど射精したばかりだが、数日間の禁欲と妄想を経たウバドはまだまだ元気で、いつ射るとも限らない。
そしてサラディーヤは……巧みだ。
ウバドのーー男のーー何をどうすれば絶頂へ導けるか、彼女は初めから心得ていた。その理由は考えたくもないが、ともかく、彼女はウバドにその技巧を披露することを楽しんでいる。特に今は。
小さな口を大きく開けて、吸い付くようにすぼめたその中で赤い舌がチロチロ動く。白魚の手で根元を逆撫でされれば、腰も背中もガクガクと震える。頬の内側で先をこすられ、彼女の口の中に溜まった体液を嚥下されると、ウバドはまた声を上げた。
そんなウバドのさまを見て、サラディーヤの瞳は弧に歪む。
「おいひぃ、ウバド」
「……ッたのむ、もう挿れさせてくれ、耐えられないんだッ……!」
「んー……ウバドはきもちいいの?」
「っあ、ああ! 気持ちいいから! だからもうっ……ううっ……!」
キシ、と寝台が軋んだ。
サラディーヤが乗り上げたためだった。
彼女は、樹液を垂らした巨木のような夫の下腹を跨ぎ、静かに腰を下ろした。互いの秘部はぬらぬらとぬめり、熱を持って重なっている。ウバドは深くため息をついた。そうしなければ、一刻たりとも耐えられそうにない。妻のそこはウバドになお一層の切迫感を与えるほど、とろけきっているから。
さらりと、太陽で編んだ糸のような金の髪がウバドを包む。ウバドはもうたまらなかった。その先にあるサラディーヤの、紅潮した顔のなんと美しいことか!
そしてウバドは、ゆっくりと落とされたサラディーヤの唇を存分に味わった。四肢を縛られた今の状態でできる、唯一のことだから。溜まりきった欲と愛情とがないまぜになる。触れたくて触れたくて、気がおかしくなりそうだったのだ。
「ぁん、う、んん……ね、ウバド」
「ッフゥゥー……!」
しかし無情にも唇は離される。
物足りないウバドに対し、サラディーヤは満足げだった。そして上半身を起こすと、その柳腰がゆるやかに律動しはじめる。
互いにただ、折り重なってこすれるだけ。
甘い匂いがその中心から漂ってくる。
それだけで充分だった。
「……すごい、ウバド……あつい……」
「グッ、あ、何をして……っ!」
「これ、いや? きもちよく、ない……?」
「くそ、くそ、あぁ……! 気持ちいいに、決まってるだろう……ッ! くそ、もう射る……!」
情けないその申告が、二発目の合図になるーーはずだった。
しかしサラディーヤはウバドの根元をその細い指できつく掴み、また腰の動きを止めて射精を制した。そして何事かと驚いているうちに飾り紐ーーおそらくは彼女の下着の一部だったものーーでウバドのものを縛り上げてしまう。
消化不良を起こしたそこはまるで別の物体のようにヒクヒクと跳ねていた。ブチンと、頭の血管の切れた音がした気さえする。ウバドはもう言葉も出ず、瀕死の獣のように荒い呼吸を繰り返し
ーーサラディーヤの訪れを迎えた。
「ん、あぁ……ウバド、とけちゃいそうっ……」
「グッ、ぅう、ううう!」
「あっ、だめ! 動いちゃだめ!」
「ッなぜ!!」
「今日はだめって言ったじゃない!」
挿入ったと思って腰を動かした瞬間に引き抜かれ、つい吠えてしまったウバドだが、サラディーヤは怯えなかった。それどころか言い返され、それまでの焦燥が嘘のように引いてゆく。
しまったと思ったのだ。
やってしまったと。
いつもならこんな大声を出せば、妻は泣き出してしまう。怯えて、姿を消してしまうことだって未だあるくらいだ。それがーー
「今日は、わたしが全部するの」
「ーーあぁッ……」
「ウバドは、動いちゃ、だめなんだからぁ……ッ」
再び、サラディーヤの濡れしたたる蜜壺がウバドを咥え込んだ。そして今度ははっきりと上下に、前後にと動いてウバドを刺激する。
白い乳房が跳ね。
玉のような汗が光り。
普段ならここまでされて、いつ射精してもおかしくない状態だが、サラディーヤの巻いた飾り紐がそれをうまく阻止していた。そしてそれは、彼女自身にも伝わっている。
「うぁっ、ウバド、すごいの……っ、いつもより、すっごく、おおき、かたい……!」
「グ、ああ……っ! すごいなこれは……」
「うん、すごい、すご……ッあぁ……!」
ガチャガチャと音がする。
ウバドは必死に鎖に手をかけていた。動きそうになる腰を止めるために。サラディーヤの希望を叶えるために。愛しい妻がそうしたいのなら、ウバドはその願いがなんであれ、叶えてやりたいのだ。
しかし、サラディーヤは甘い声を上げて、動きを早めてゆく。
その姿を見るに、耐えられる気がしなかった。腹の上でしなやかに、いやらしく踊る妻に、ウバドは願い出る。
「サラディーヤ、くちづけを」
「ウバド……っ」
「お前の唇を、俺にくれ。たのむ……ッ」
ーー甘い。
最後の言葉は、サラディーヤの口の中へ消えた。
あとはただ甘ったるい味がふたりを繋いで。
サラディーヤは嬌声のなか、時折ふふと笑っていた。それがひどく楽しそうで、ウバドは、妻が喜ぶならこんな扱いも悪くはないとまた思うのだった。
夜は長く。
ふたりは、何度も蜂蜜を分け合った。
はちみつの妻 了
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あだちさん!
感想ありがとうございます😭🙌✨
面白いと言っていただけるのが1番嬉しいです!!結末までも優しく見守っていただいてありがたい限り……ッ!
ヘヘッ……神官たちは私も許せないので、でもその件でサラディーヤの心を乱したくないのがウバドなので、ひっそりと処してもらいました。こういう『表は情けないぐらいなのに裏では血も涙もない』男が好きです……ヘヘッ……
最初はサラディーヤの動きに戸惑っていたウバドですが、番外編ではそういう勝手をする妻にも慣れて「許せる」度量、みたいなのも描きたかったのですが……今読み直したらやっぱ尻に敷かれてるし、それが似合いますね…www
とにかく、お読み頂きありがとうございました!
番外編最高です〜!!!もっともっと2人のお話読んでいたいです!!ぜひまたよろしくお願いします!!!
わー!ななさんありがとうございます!
ラブラブで奥さん優位なおふたりでした!またどこかで会うことがあれば、その時はよろしくお願いします!( *´艸`)
大好きなお話なので、番外編が更新されていて嬉しいです!!
ありがとうございます!
わぁい!お読みいただきありがとうございます!
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