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おおばかもの

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女の肌に溺れる。


それがどういう事なのか、ウバドは真に理解した。深みにはまればはまるほど、抜け出せなくなる。まるで深海の洞窟へ導かれるような闇雲さで、くちづけ、触れ、隅々まで味わう。ウバドは、はじめてのサラディーヤの肌に溺れ、没頭していた。


「ふぁ、あ、ぅうん……っ!」


サラディーヤはよく鳴く。
切なく、甘く鳴く。
きゅうきゅうと鳴くその声は、ウバドの耳から脳へ、骨の髄へ染み渡ってこびりついた。ひとつ鳴かれるたびに、自分すら、ゾクリと怖気に似た何かが立ちのぼる。


「ーーど……まっ、ぁ、ーー」


たまらない。彼女のそれが媚薬の効能であると理解していても、気が触れてしまいそうなほど興奮した。

しかし。


「ーーう、ウバドっ!」
「むッ!」


繋いでいた片手に爪を立てられてウバドは目覚めた。そうされるまで、夢中でサラディーヤを貪っていたのだ。

我を忘れていた。
怖がられたか。

しかし、顔を上げたウバドが見つけたのは……


「も、もう、大丈夫ですから」
「ぐ」
「こ……子種を、ください……わたしを、ウバドさまの……妻に……」


顔を赤らめ、青い瞳を潤ませた、ただの女神であった。


「ぐぅう……ッ!」


ウバドは叫び出しそうな己をかろうじて制した。よくこらえたと、心の奥底から褒めてやりたい気分だった。しかし例によってそんな余裕はない。

なにしろ、ウバドの男根は膨れあがっていた。一度我にかえると、それが痛いほどによく分かる。一刻の猶予も許されなかった。ウバドはわずかに震える手で、サラディーヤの膝を開き、脚の付け根を、そっと、なぞった。


「っ、あぁ……!」


ああ!
その、ため息とも鳴き声ともつかぬ甘い響きにぐらりと揺れる。今すぐーー乱暴に、凶暴にーーサラディーヤのすべてを奪ってしまいたい。

しかし、そんな愚行を犯してはならない。
催淫効果が濃いうちはまだいい。だが、慎重にいかなければ、効果が切れたあと待っているのは別離の道だ。

破裂しそうなほどの欲望を強靭な精神で押しとどめ、ウバドはついに、おそるおそる、指を突き立て……


「ど……どこだ」
「ふ、ぇ」
「……穴は、どこだ……」


突き立てられなかった。
分からなかった。

サラディーヤの蜜壺は、薄金の体毛と、蜜と、小さな陰唇にまぎれていた。悲しいかな、ウバドには、女の経験がない。見たことがない……

こんなことなら!
こんなことなら、訓練をサボってでも娼館に行って女体の神秘を学んでおくべきだった! なぜ、たった一度でも同僚の誘いに乗らなかったのか! このおおばかものめ、筋肉バカめ!!

今すぐ頭を掻きむしり、布団にもぐり、時空を超えて過去の自分を殴りに行こうかー……などと馬鹿げた逃避に陥りかけて。


「う、ウバド、わたしの手を」
「む……」
「手を、そこへ……」


ごくり、と生唾を飲む。

サラディーヤの手をそっと持ち上げ、股の間へ置いた。細い指が控えめに動き……陰唇を、左右に開く。

染まる頬。
震える唇。
桃色の媚肉。

潤んだ瞳は恥ずかしげに視線を逸らすのに。


「……ここ……」


ぬらぬらと光る媚肉が、ヒクン、と跳ねた。
まるで誘っているかのように。

ウバドは、息も詰まるほど食い入ってそこを見つめた。だらだらと脂汗が吹き出て、息は、もうずっとまともに吐けない。


「ぅ、ぐ……グァ……」
「ウバド、ねぇっ……おねがい……」


腕の血管が浮いていた。
きっと、顔もそうなっている。

事実、真っ赤な鬼の形相でウバドはサラディーヤのそこへ触れた。とろとろと蜜をこぼし、肉は柔らかく……

だが、ウバドの顔色は見る見るうちに熱を失う。


「……いかん……」
「う、ウバド?」
「狭すぎる……」
「っあ、ヒ、ひゃんッ?!」
「これでは……入らん……!」


中指に、肉がまとわりつく。
余裕などない。

考えれば分かることだった。サラディーヤは小さく細い。男どもに蹂躙されていたから慣れている、というわけではないのだ。むしろ心ないまぐわいで、秘部も心もぴたりと閉じてしまったのだろう。そうだ。きっとそうに違いない。


「あっン、だめ! ウバド! だめぇっ!」


蜜の助けもあり、中指一本ならすんなりと出し入れできた。
サラディーヤが受け入れてくれるならば、ウバドは彼女が慣れるまで、どこまでも付き合うつもりだ。自分の欲など精神力でなんとでもなる。女神サラディーヤに、痛みを与えるわけにはいかない。そんな事をすれば逃げられる……逃げられたくない。


自分の大きさにまで。

くちゅくちゅと、指ばかりを往復させる。
肉は柔らかく、しかし隙間は……ない。


「ひぁっ! どうして……ウバド……!」
「すまない、耐えてくれ」
「ァあ、や、いや、かき回すの、イヤぁ……ッ」


蜜色の髪を振りかぶり、海の瞳から涙をこぼしてサラディーヤは嫌がった。やはり辛いのだろうか、痛いのだろうか……

申し訳なさと欲を耐える苦しみで、ウバドの声は深く低く、サラディーヤの耳を犯す。


「痛むか?」
「ぁあんッ、ち、ちが……!」
「本当に……? お前はけなげだから、俺は……困る。痛みを隠しているのではないかと……」
「ちがっ、アァあ! いたいんじゃ、ンくっ、ないぃ……!」
「しかしこんなに狭く……嗚呼いかん、どんどん狭くなっている……」
「ッ、あ、ああぁ……ーーーー!」
「……くそ……」


悔しかった。

サラディーヤの秘部は、絹を裂くような彼女の悲鳴とともに、ウバドの指を追い出すように締め付けたのだ。

やはり未熟者よ。
なにも知らぬおおばかものよ。

ウバドは自分を叱りつけ、指を抜いた。そして思いつくままに巨体を丸めてかがめた。指よりも柔らかく、彼女に極力痛みを与えないものを……ウバドは思い出したのだ。


つい先ほどまで酔いしれた、あのくちづけを。


「ひぅ、ウバド、なにッ……!」
「すまない……少し、耐えてくれ……」
「やだ、やだきたなッ……!」


両脚を割り開き、顔を近づければ独特の芳香にくらりと酔う。不快さはない。むしろ神聖な場所を侵す興奮さえある。

舌先を尖らせ、ウバドはまずひと舐めした。


「ッアぁ?!」


サラディーヤの腰が
ウバドは彼女のくびれた腰を両手で、蜜壺へ舌を突き刺した。きゅうう、と舌が締めつけられる。


「ンぁああっ! ぺろぺろ、しちゃ、だめえっ!」


一体どうすれば。

途方に暮れながら、一方でウバドはひどく興奮していた。サラディーヤの肌の匂い、蜜の味、鳴き声。その何もかもがウバドを濃厚に責めたて狂わせる。まともな判断などできるはずもなく、ただひたすらに、舌を抜き差しする。

じゅぷじゅぷと、溺れてゆく。


「ア、だめ! またっ、んく、ウバド! やめて、それ以上はいや、いやぁッ! ア、やめっ……!」
「ッく……」
「アァアッ……やぁああーーッ!!」


サラディーヤの白い身体がビクンビクンと何度目かの痙攣をする。嫌と言われたのに……やめられなかった。穴はますます縮こまり、隙間などわずかにもない。

ウバドは再び我に帰って、泣きたくなった。
しかし涙でしとどに濡れるサラディーヤを見てなんとか奮い立つ。泣いている場合ではない。無理を強いたのは、ほかでもない自分だ。サラディーヤは心も秘部もしまった。


今日はもう、無理だろう……


「すまん、サラディーヤ……」
「ぁ、んく……、……ウバド……?」
「今日はもう……やめておこう。これ以上、お前に負担をかけたくない。俺が至らぬばかりに、お前には苦痛を強いてしまって……すまないと思っている」
「え、え……?」


がっくりと下を向けば、自分のモノと目が合う。
おおばかものめ。欲ばかりを大きくさせて、女神を喜ばせる術などなにひとつ知らない。

今度こそ、呆れられたことだろう。
しかしもう、手放せない。


「未熟ですまない。今度は……きちんと女体を学んでから、お前を妻にしようと思う」
「なに、ウバド……? え、学んでって……?」
「ああ。どこか娼館にでも行って教えてもらう。お前が辛くないよう……だから、頼むからそれまでーー」


待っていてくれ。


そう言いかけて、言えなかった。
ウバドはなにが起こったのか分からなかった。

気づけば視界には天井が、そして、


「ウバドのばかっ!」


怒った顔も愛らしい女神が映る。


「うっ、ぐあっ!」
「ッあぁん……すごい、おくまで……っ」


さらにウバドは大きく呻いた。
馬乗りになった女神は、あろうことか、閉じていたはずの媚肉でウバドを一気に咥え込んだ。そしてふるると震え、きゅん、と幹を締め上げる。

ウバドの背がざわっと粟立ち、


「ふぁあン……!」
「ーーぅぉおおッ?!」


ウバドは、叫んだ。
そして気づいたら暴発していた。


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