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神に近い男
しおりを挟むしゃらしゃらしゃら。
動くたびに、身体の真珠がくすぐるように音を立てる。
脱力したウバドの身体は重たかった。サラディーヤはなんとかウバドを引きずり寝台の中央まで移動させ、やっとのことでシェンティを引っ張りだして取り去った。はあはあと息が上がり、白い肌は久しぶりに血色がよく汗ばんでいる。これだけでも少々疲れてしまった。
それにしても、眠りが深い。
引きずられても、シェンティを取っても、ウバドはまったく目を覚さない。
今のうちに妻になってしまわなければ。
まぐわってしまわなければならない。
しかし、まぐわうための幹も今はぐったりとうなだれ、眠っているようだった。そういう状態も、刺激が必要なのだということもサラディーヤは知っている。年嵩の神官たちなどに多く、そうした場合、彼らはサラディーヤの口や手を道具にして己の幹を目覚めさせた。
あれをするのは最終手段だ。
気分が悪くなるし、吐き気もする。
それに、初めから幹を刺激しては目が覚めてしまうかもしれない。
サラディーヤは改めてウバドを見て……
まずは腕へ。
おそるおそる、触れた。
丸太のように大きくて太い。
腕の先から肩まで浮き出た血管を、指でそうっとなぞってみた。……たくましい。血の流れまで分かるような……。
つぎは、肩から胸へ。
脇の間にちょこんと座って、広い胸へ手のひらを当てた。どくっ、どくっ……と、やや早い鼓動が伝わってくる。サラディーヤは意識していなかったが、そのとき、ふたりはほぼ同じ速度の心音だった。
指先で、ふたつの黒い頂に触れてみる……反応はない。眠っているばかりだ。
サラディーヤは神殿の男たちにされたことを思い出した。男たちはサラディーヤのここをつまんだり、舐めたり、噛むのを好んだ。サラディーヤはちっとも好ましく思わなかったが、果たしてウバドはどうなのだろう。……。
「……ンっ……」
サラディーヤはびっくり跳ねた。
頂の片方を舐めたとき、ウバドが低く唸ったのだ。じっとりと嫌な汗をかきながら、サラディーヤは様子をうかがう。起きたらどうしよう。またあのように、大きな声で怒られたら……
反応は、ない。
規則的な寝息に、サラディーヤはほっと息をついた。そしてもう一度舐めてみる。ウバドはまた小さく呻いたが、どうやら起きる気配はない。
そうなると面白いもので、わずかな反応を見るためにサラディーヤはウバドの豆粒のような頂を何度も舐め、時には吸って、噛んでみたりした。
「ん……」
「ンあぁ……」
「ぐ……」
もっとも反応がいいのは吸ったときだ。ウバドはなんとも言えない表情でため息をつく。逆に噛みすぎるのは良くないらしく、眉間にシワが寄る。
サラディーヤは熱心な生徒のように、ひとつひとつの反応を確認して、反復して……満足した。
胸から腹へ移る。
「……わぁ……」
サラディーヤは、自分でも知らぬ間に心酔のため息を漏らしていた。この見事に練り上げられた体躯といったら……
神殿にある神々の彫刻が、どうしてウバドのようなのかをサラディーヤは理解した。美しいからだ。この身体は、神殿にいた男たちとは比べ物にならないほど美しい。ウバドは神に近い生き物なのだと、サラディーヤは理解した。
そしてサラディーヤにとって、もはやそれに恐ろしさはなかった。なにしろウバドはぐっすりと眠っている。この場において、サラディーヤは何をしてもいい。
まず、手のひらで腹に触れた。
硬い。そして大きい。ひとつひとつの割れた腹筋がサラディーヤの手のひらほどもある。その割れ目をなぞると、ウバドは少しくすぐったそうに唸っていた。気にするほどではない。
次に……頬を寄せてみる。
なんと熱いのだろう。まるで灼熱の太陽だ。それだけではなく、ウバドの腹はなめらかだった。どんなに丁寧になめした革よりもきっと肌触りがいい。深く染み込んだ褐色の肌は内側から輝くようで不思議だ。
すこしずつ大胆になったサラディーヤは、今度はウバドの身体に乗り上げ、広い胸へ寝そべってみた。
どくん。どくん。
耳を当てると、先ほどよりも落ち着いた心音に、サラディーヤの気持ちも吸い寄せられた。心地いい。あたたかくて、ゆったりとして……親にくるまれた雛鳥というのは、こんな気分なのだろうか。ウバドの深い呼吸と一緒に溶けてしまいそう。
「……ふふっ」
しばらく閉じていた目を開けると、ウバドの小さな頂が見えてサラディーヤは笑った。ウバドは何もかもが大きいのに、胸の先のだけは愛らしい。寝転がりながら、サラディーヤは再びそこへ手を伸ばし、くりくりと指でつまんで、引っ張ったり、押しつぶしたりした。
しばらく、そうやっていたから。
気づかなかった。
「あれ……?」
ウバドの心臓は、
「……」
もう、早鐘のようになっている。
そして、幹が立ち上がっている。
驚きにサラディーヤが顔を起こした、瞬間ーー
「貴様ァ!!! なにを盛った!!!」
鬼の形相をしたウバドは、吠えた。
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