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20話 二人で何か競い合ってるんだね
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英雄をプレイしていないのに、関係する夢を見た。しかも、今度は七海の敗北シーンだった。聖騎士にレベッカという名前からして、間違いない。
意識を取り戻した裕介が上半身を起こして周囲を確認すると、カーテンを閉め忘れた窓からは朝日が入り込んでいた。
昨日は夕食もとらずに眠ったので、さすがに空腹を覚える。毎朝恒例になりつつあるシャワーを浴び、着替えてダイニングへ向かう。
そこでは両親と一緒に、何故か制服姿の七海も朝ご飯を食べていた。
「おばさま、すみません。私まで朝食をご馳走になってしまって」
「いいのよ。私も娘ができたみたいで嬉しいし。いっそ、本当の娘になってみる?」
「まあ、おばさまったら」
頬に左手を当てて本気で照れる七海の背中を、気がつけば裕介は呆然と見つめていた。
「あら、裕介。そんなところで何をボーっとしているの。七海ちゃん、朝食もとらずにあなたを迎えに来てくれたのよ。早く食べてしまいなさい」
四人で座れるダイニングテーブル。いつもは裕介の正面に両親が並んで座っており、隣は空いている。そこに七海は腰を下ろしていた。
椅子に寄りかかったりせず、姿勢よく背筋を伸ばして箸を使っている。裕介が隣に移動すると、こちらを見て彼女は軽くウインクした。
「この前は置いていかれたからね。今日は早く来てみたの」
七海は誰に対しても分け隔てなく優しい女性だが、ここまで世話焼きでもない。昨日の件があったので、裕介を心配してくれたのだ。
「本当に裕介は果報者よね。七海ちゃんを逃がしたら駄目よ」
母親の発言で、危うく野菜ジュースを噴き出しそうになる。軽く咳き込むと、仕方ないなと七海が背中をさすってくれた。
確かにこうした光景だけ見れば、世話焼き女房である。小学生時代も、よく冷やかされた。
「七海ちゃんなら、人気も凄いでしょうしね」
「いいえ、私なんて全然です」
「そうなの?」
母親が心底不思議そうな目をした。朝食のパンを頬張っている父親も驚きを隠そうとしない。それだけ七海は美少女なのである。
「はい。いつも裕介と一緒にいますから、色々と噂にもなりますし」
「ごめんなさいね、うちの息子が苦労をかけて」
「気にしないでください。ただ、そろそろ噂を否定するのも面倒になってきたんですけど……鈍感大王なものでして」
言葉を一旦区切った七海が、裕介を横目で見る。
「ぼ、僕? 鈍感どうのより、面倒がらずにきちんと否定するべきだと思うよ」
七海のことを考えて真面目に答えたつもりだったが、三方向からため息をつかれてしまった。
とりわけ母親は申し訳なさそうな顔をして、正面に座っている七海へ席上で頭を下げた。
「本当に……鈍感の中の鈍感で申し訳ないわ」
「まさしく鈍感の大王様だな」
母親だけでなく、父親にまで鈍感呼ばわりされて裕介がむくれる。そんな姿を見て、他の三人は楽しそうに笑う。やがて裕介も、つられるように口元へ微かな笑みを浮かべた。
朝食を終え、家族に見守られて七海と一緒に裕介は家を出た。当たり前のように七海は隣を歩く。
「相変わらず、おばさまは料理がお上手ね。私もあんな風に作れればいいのだけど、そうそう上手くはいかないわ」
「そういえば、七海の手料理って食べた記憶があまりないね」
口にした何気ない一言に、七海は怖すぎるくらいの笑顔を作る。
「誰にでもね、得手不得手というのがあるの。わかった? 裕介君」
普段は呼び捨てなのに、君付けされるとさらに怖くなる。うんうんと頷いた裕介は、とりあえず料理の話題から離れようと決める。
しばらくは差し障りのない話をしていたが、どうしても途中で会話が止まってしまう。英雄をきっかけにした、大貴と裕介の一件のせいだった。
「ねえ。裕介は本当にもう英雄をやらないの?」
「うん。昨日も言ったけど、ゲーム自体を捨ててしまったからね」
「でもさ、裕介がやりたいなら、何とかなると思うわよ」
「そうかもしれないけど、今のところはね。大貴との約束もあるし」
「……それなら、大貴がプレイしてもいいと言えば、また英雄を始めるのね?」
向けられたのは決意に満ちた目。見ているだけで、なんだか嫌な予感を覚える。昨日の夢で、七海のカードと大貴のカードが、キャラクターとなっての戦いを目撃した影響もあるかもしれない。
強くなる不安に押し出されるように、裕介の口から言葉がこぼれる。
「約束はできないよ。だから、大貴と勝負しないでよ。まさか昨日、あれからやったなんて言わないよね?」
七海がギクリとした様子を見せる。目を逸らし、唇をもごもごさせる。昔から、嘘をつこうとする時に見せる癖だ。
「勝負したんだね。じゃあ、援軍は真雪ちゃん?」
「え!? どうして真雪ちゃんが援軍してくれたことまで知ってるの? まさか、私たちのあとをつけてた?」
目を丸くする七海に、逆に裕介が驚く。夢で見たのは現実で行われ、裕介が見ていないゲームの内容を反映していた可能性が高まったからだ。
「僕は部屋にいたけど……結果は惨敗、だったんだよね?」
「……ええ。真雪ちゃんと協力して挑んだけれど駄目だったわ。話し合って私が聖騎士のレベル十を、真雪ちゃんが神官戦士のレベル十を二枚用意したんだけどね」
裕介と二人で真雪を負かした際に、七海は聖騎士をレベル十にまで上昇させられたらしかった。他の人と対戦して稼いだ分もあり、配置ポイントもすべて使えるようになった。それでも惨敗としか言えない結果に終わった。
七海の説明は、裕介が夢で見た通りだった。わけがわからず混乱する。ただの偶然と割り切るには、あまりにも同じ点が多い。理由は不明で、考えても答えが見つかるとは思えない。
けれど裕介には夢どうこうよりも、先にすべきことがある。いつになく真剣な表情で七海の両肩を掴み、強い口調で大貴に挑むのはやめろと警告する。
「七海と真雪ちゃんを合わせてもレベル七。レベル十の大貴とは三も離れてる。僕と七海が協力して倒した時とは倍も違うんだ。使えるポイントが五百も増えれば、揃えられるカードの種類や強さは桁違いになる。昨日、勝負したなら実感できたよね」
「だから諦めるの? また引きこもるの? 私は嫌よ。テレビゲームが規制されてかわいそうだとは思うけど、せっかく裕介と外で遊べるようになったんだもの。英雄も同じゲームではあるけど、外で買い食いしたり他の人との輪に混ざってお喋りしたりもできるわ。それはなんだかデートみたいで、私には嬉しかったの。だからこそ、そんな場を奪った大貴が許せないのよ」
「何を言ってるんだよ! デートだったら他の場所でもできるじゃないか。ゲームにこだわる必要はないよ!」
叫んだ大貴の提案を、七海は首を振って却下した。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり裕介にとってはゲームが大事なんだと気付いたの。だって、負け続けても英雄をプレイしに通っていた時と顔つきが全然違うもの。落ち込んだ表情なんて裕介には似合わないわ。心配しなくても、私が大切な居場所を取り戻してあげる」
そこまでしてもらわなくとも大丈夫。裕介がそう言うより先に、別の言葉が七海に投げかけられた。
「いたいた、七姉! やっと見つけた!」
膝丈のスカートをひらひらさせ、真雪が右手を大きく振りながら駆け寄ってくる。昨日まで七海と呼び捨てていたのに、いつの間にやら七姉という昔の呼び方に戻っていた。
「裕兄ちゃん、おはよう。真雪ね、これからはちゃんと優しくしてあげるし」
「う、うん……でも、一体何があったの? 二人はずいぶん仲良くなってるみたいだけど……」
「私と真雪ちゃんは、基本的に昔から仲が良いのよ。意地悪もされたけど、それはまあ、理由が判明したしね。裕介の一件があって、疎遠になってただけ」
七海の言葉に、真雪が笑顔で頷く。
「そうそう。共通の目的も出来たし、一緒に練習したりしてる間に意気投合しちゃった。ライバルには変わりないけど」
「ライバル?」
裕介は首を傾げる。
「二人で何か競い合ってるんだね」
他人事みたいに納得する裕介に、七海と真雪は二人揃って長い長い溜息をついた。
「裕兄ちゃんって、やっぱりニブチンだよね」
「それこそ昔からでしょう。それより、真雪ちゃんは朝からどうしたの。学校は?」
「行ってる場合じゃないし! 特訓すんの! 裕兄ちゃんも!」
腕を引っ張って強引に仲間にしようとする真雪に、裕介は説明を求める。
「英雄の話に決まってるじゃん。さすがにお兄ちゃん、やりすぎてるし。このままじゃ、本当にひとりぼっちになっちゃうよ」
真雪の話によれば、大貴は誰彼構わずに戦いを挑んではポイントを奪っているらしい。奪い奪われが多い英雄というゲームではポイントの消費も激しく、レベル十に到達するのは意外と難しい。
裕介が通っていたコンビニでも、最高レベルに到達していたプレイヤーを見たことがなかった。せいぜいがレベル五。手を抜いていた大貴と同レベルだったのである。
「最高レベルの大貴に勝てるプレイヤーなんていないから、すぐに勝負を避けられるようになったわ。自業自得なんだけど、真雪ちゃんのためにも一回喝を入れてあげようかと思ってね」
あえて悪戯っぽく笑って、七海は場が暗くならないようにする。裕介を立ち直らせてくれた彼女だけに、大貴という存在がどれだけのトラウマか知っているのだ。
「勝手なお願いなのはわかってるけど、裕兄ちゃんも協力して! 助けてくれたら真雪、どんなお願いでも――あいた!」
体をくねらせだしたところで、七海のげんこつが真雪の脳天に炸裂した。
意識を取り戻した裕介が上半身を起こして周囲を確認すると、カーテンを閉め忘れた窓からは朝日が入り込んでいた。
昨日は夕食もとらずに眠ったので、さすがに空腹を覚える。毎朝恒例になりつつあるシャワーを浴び、着替えてダイニングへ向かう。
そこでは両親と一緒に、何故か制服姿の七海も朝ご飯を食べていた。
「おばさま、すみません。私まで朝食をご馳走になってしまって」
「いいのよ。私も娘ができたみたいで嬉しいし。いっそ、本当の娘になってみる?」
「まあ、おばさまったら」
頬に左手を当てて本気で照れる七海の背中を、気がつけば裕介は呆然と見つめていた。
「あら、裕介。そんなところで何をボーっとしているの。七海ちゃん、朝食もとらずにあなたを迎えに来てくれたのよ。早く食べてしまいなさい」
四人で座れるダイニングテーブル。いつもは裕介の正面に両親が並んで座っており、隣は空いている。そこに七海は腰を下ろしていた。
椅子に寄りかかったりせず、姿勢よく背筋を伸ばして箸を使っている。裕介が隣に移動すると、こちらを見て彼女は軽くウインクした。
「この前は置いていかれたからね。今日は早く来てみたの」
七海は誰に対しても分け隔てなく優しい女性だが、ここまで世話焼きでもない。昨日の件があったので、裕介を心配してくれたのだ。
「本当に裕介は果報者よね。七海ちゃんを逃がしたら駄目よ」
母親の発言で、危うく野菜ジュースを噴き出しそうになる。軽く咳き込むと、仕方ないなと七海が背中をさすってくれた。
確かにこうした光景だけ見れば、世話焼き女房である。小学生時代も、よく冷やかされた。
「七海ちゃんなら、人気も凄いでしょうしね」
「いいえ、私なんて全然です」
「そうなの?」
母親が心底不思議そうな目をした。朝食のパンを頬張っている父親も驚きを隠そうとしない。それだけ七海は美少女なのである。
「はい。いつも裕介と一緒にいますから、色々と噂にもなりますし」
「ごめんなさいね、うちの息子が苦労をかけて」
「気にしないでください。ただ、そろそろ噂を否定するのも面倒になってきたんですけど……鈍感大王なものでして」
言葉を一旦区切った七海が、裕介を横目で見る。
「ぼ、僕? 鈍感どうのより、面倒がらずにきちんと否定するべきだと思うよ」
七海のことを考えて真面目に答えたつもりだったが、三方向からため息をつかれてしまった。
とりわけ母親は申し訳なさそうな顔をして、正面に座っている七海へ席上で頭を下げた。
「本当に……鈍感の中の鈍感で申し訳ないわ」
「まさしく鈍感の大王様だな」
母親だけでなく、父親にまで鈍感呼ばわりされて裕介がむくれる。そんな姿を見て、他の三人は楽しそうに笑う。やがて裕介も、つられるように口元へ微かな笑みを浮かべた。
朝食を終え、家族に見守られて七海と一緒に裕介は家を出た。当たり前のように七海は隣を歩く。
「相変わらず、おばさまは料理がお上手ね。私もあんな風に作れればいいのだけど、そうそう上手くはいかないわ」
「そういえば、七海の手料理って食べた記憶があまりないね」
口にした何気ない一言に、七海は怖すぎるくらいの笑顔を作る。
「誰にでもね、得手不得手というのがあるの。わかった? 裕介君」
普段は呼び捨てなのに、君付けされるとさらに怖くなる。うんうんと頷いた裕介は、とりあえず料理の話題から離れようと決める。
しばらくは差し障りのない話をしていたが、どうしても途中で会話が止まってしまう。英雄をきっかけにした、大貴と裕介の一件のせいだった。
「ねえ。裕介は本当にもう英雄をやらないの?」
「うん。昨日も言ったけど、ゲーム自体を捨ててしまったからね」
「でもさ、裕介がやりたいなら、何とかなると思うわよ」
「そうかもしれないけど、今のところはね。大貴との約束もあるし」
「……それなら、大貴がプレイしてもいいと言えば、また英雄を始めるのね?」
向けられたのは決意に満ちた目。見ているだけで、なんだか嫌な予感を覚える。昨日の夢で、七海のカードと大貴のカードが、キャラクターとなっての戦いを目撃した影響もあるかもしれない。
強くなる不安に押し出されるように、裕介の口から言葉がこぼれる。
「約束はできないよ。だから、大貴と勝負しないでよ。まさか昨日、あれからやったなんて言わないよね?」
七海がギクリとした様子を見せる。目を逸らし、唇をもごもごさせる。昔から、嘘をつこうとする時に見せる癖だ。
「勝負したんだね。じゃあ、援軍は真雪ちゃん?」
「え!? どうして真雪ちゃんが援軍してくれたことまで知ってるの? まさか、私たちのあとをつけてた?」
目を丸くする七海に、逆に裕介が驚く。夢で見たのは現実で行われ、裕介が見ていないゲームの内容を反映していた可能性が高まったからだ。
「僕は部屋にいたけど……結果は惨敗、だったんだよね?」
「……ええ。真雪ちゃんと協力して挑んだけれど駄目だったわ。話し合って私が聖騎士のレベル十を、真雪ちゃんが神官戦士のレベル十を二枚用意したんだけどね」
裕介と二人で真雪を負かした際に、七海は聖騎士をレベル十にまで上昇させられたらしかった。他の人と対戦して稼いだ分もあり、配置ポイントもすべて使えるようになった。それでも惨敗としか言えない結果に終わった。
七海の説明は、裕介が夢で見た通りだった。わけがわからず混乱する。ただの偶然と割り切るには、あまりにも同じ点が多い。理由は不明で、考えても答えが見つかるとは思えない。
けれど裕介には夢どうこうよりも、先にすべきことがある。いつになく真剣な表情で七海の両肩を掴み、強い口調で大貴に挑むのはやめろと警告する。
「七海と真雪ちゃんを合わせてもレベル七。レベル十の大貴とは三も離れてる。僕と七海が協力して倒した時とは倍も違うんだ。使えるポイントが五百も増えれば、揃えられるカードの種類や強さは桁違いになる。昨日、勝負したなら実感できたよね」
「だから諦めるの? また引きこもるの? 私は嫌よ。テレビゲームが規制されてかわいそうだとは思うけど、せっかく裕介と外で遊べるようになったんだもの。英雄も同じゲームではあるけど、外で買い食いしたり他の人との輪に混ざってお喋りしたりもできるわ。それはなんだかデートみたいで、私には嬉しかったの。だからこそ、そんな場を奪った大貴が許せないのよ」
「何を言ってるんだよ! デートだったら他の場所でもできるじゃないか。ゲームにこだわる必要はないよ!」
叫んだ大貴の提案を、七海は首を振って却下した。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱり裕介にとってはゲームが大事なんだと気付いたの。だって、負け続けても英雄をプレイしに通っていた時と顔つきが全然違うもの。落ち込んだ表情なんて裕介には似合わないわ。心配しなくても、私が大切な居場所を取り戻してあげる」
そこまでしてもらわなくとも大丈夫。裕介がそう言うより先に、別の言葉が七海に投げかけられた。
「いたいた、七姉! やっと見つけた!」
膝丈のスカートをひらひらさせ、真雪が右手を大きく振りながら駆け寄ってくる。昨日まで七海と呼び捨てていたのに、いつの間にやら七姉という昔の呼び方に戻っていた。
「裕兄ちゃん、おはよう。真雪ね、これからはちゃんと優しくしてあげるし」
「う、うん……でも、一体何があったの? 二人はずいぶん仲良くなってるみたいだけど……」
「私と真雪ちゃんは、基本的に昔から仲が良いのよ。意地悪もされたけど、それはまあ、理由が判明したしね。裕介の一件があって、疎遠になってただけ」
七海の言葉に、真雪が笑顔で頷く。
「そうそう。共通の目的も出来たし、一緒に練習したりしてる間に意気投合しちゃった。ライバルには変わりないけど」
「ライバル?」
裕介は首を傾げる。
「二人で何か競い合ってるんだね」
他人事みたいに納得する裕介に、七海と真雪は二人揃って長い長い溜息をついた。
「裕兄ちゃんって、やっぱりニブチンだよね」
「それこそ昔からでしょう。それより、真雪ちゃんは朝からどうしたの。学校は?」
「行ってる場合じゃないし! 特訓すんの! 裕兄ちゃんも!」
腕を引っ張って強引に仲間にしようとする真雪に、裕介は説明を求める。
「英雄の話に決まってるじゃん。さすがにお兄ちゃん、やりすぎてるし。このままじゃ、本当にひとりぼっちになっちゃうよ」
真雪の話によれば、大貴は誰彼構わずに戦いを挑んではポイントを奪っているらしい。奪い奪われが多い英雄というゲームではポイントの消費も激しく、レベル十に到達するのは意外と難しい。
裕介が通っていたコンビニでも、最高レベルに到達していたプレイヤーを見たことがなかった。せいぜいがレベル五。手を抜いていた大貴と同レベルだったのである。
「最高レベルの大貴に勝てるプレイヤーなんていないから、すぐに勝負を避けられるようになったわ。自業自得なんだけど、真雪ちゃんのためにも一回喝を入れてあげようかと思ってね」
あえて悪戯っぽく笑って、七海は場が暗くならないようにする。裕介を立ち直らせてくれた彼女だけに、大貴という存在がどれだけのトラウマか知っているのだ。
「勝手なお願いなのはわかってるけど、裕兄ちゃんも協力して! 助けてくれたら真雪、どんなお願いでも――あいた!」
体をくねらせだしたところで、七海のげんこつが真雪の脳天に炸裂した。
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