9 / 25
9話 だったら、頑張るしかないでしょ
しおりを挟む
断る理由はないので、素直に感謝する。審判の梨田さんが同盟状態を確認し、援軍を認めたので、七海は場にカードを並べられるようになる。
不愉快そうな真雪とは対照的に、大貴は余裕そのものだ。決められたルールなんだから、仕方ねえだろと妹を宥める。
「もっとも昨日登録したばかりのレベル一が援軍に来たところで、結果は変わらねえだろうがな」
「相変わらず自信家ね。昔は何をするにも、裕介に負けてたくせに。体が大きくなってから虐めるのは、その時の仕返しなの? 器の小さい男よね」
「お前も昔は裕介の尻しか見てなかっただろ。ガキの頃からそういう趣味でもあったのかよ」
挑発したつもりが、大貴の反撃で逆に七海が顔を真っ赤にする。
「どこまでも最低な男ね!」
「最初にくだらねえこと言ったのはお前だろ。ガキの頃の話を持ち出しやがって。いつまでそいつにくっついてるつもりだ。保護者にでもなったのか」
「そんなの私の勝手でしょ。裕介も何か言ってやったら? 溜まってる怒りがあるでしょ」
急に話を振られた裕介は何も言えず、いつもと同じように曖昧な笑みを浮かべるだけだった。
「そいつにそんな度胸があるわけねえだろ。真雪に弱介言われても、黙ってやがるんだぞ。昔とは違うんだよ」
忌まわしい記憶を振り払うかのうように大声を上げ、大貴は七海に早くカードを置けと告げる。
援軍に入ったプレイヤーは、同盟を組んでいる者の陣地にカードを置ける。上限は配置ポイントで、同盟者の拠点が占拠されれば敗北となる。操作は援軍に入ったプレイヤーが行い、特別な効果やデメリットは存在しない。隠しルール次第でどうなるかはわからないが、表のルールではそうなっていた。
「昔とは違っても人の本質は変わらないわ。だから裕介は今も、人見知りだった子供時代の私の背を押してくれた頼りがいのある男の子なのよ」
何かを訴えかけるような目。確かにそんな時もあったかもしれないが、どちらかといえば大貴の認識が合っている。現在の裕介は年下の女の子からバカにされても、文句ひとつ言えないただのヘタレだ。
「僕は……頼られる資格のない男だよ」
「そうかもしれないわね」
あっさりと七海は肯定した。
「だから今は私に頼って。いつか元の格好いい裕介に戻るまでね」
満面の笑みは、正面に立つ大貴を見るなり掻き消える。真剣な顔つきになった七海は、まず裕介の拠点前にシンボルリーダーを置いた。
そのカードを見た瞬間、場にいる誰もが驚愕で目を見開いた。いつになく大貴も声を震わせる。
「レベル十の……村人、だと? お前、俺をコケにしてやがんのか!」
「何で怒ってるのよ。裕介がいつも村人をリーダーにしてるから、私も真似たの。名前も決めてあるのよ。ソフィーリアって言うの」
どうだとばかりにカードならぬキャラ紹介をする七海に、裕介は必ずしも名前などは必要でないと教える。
「ある程度の設定を作れるのも英雄の魅力だけど、戦闘には影響しないから決めない人の方が多いんだ。僕のも単なる趣味みたいなものだしね」
「そ、そうなの?」
裕介がプレイしたのを見た経験しかない七海は、英雄について勘違いをしていた。シンボルリーダーを村人にしたのもそのひとつだ。
考えてみれば、裕介の窮地に黙っていられなくなり、登録をしたのが昨日なのだ。基本的なゲームの遊び方しか知らないのである。
「と、とにかくゲームをしましょう。次はこれね」
やはり拠点の近くに七海はカードを置いた。今度はレベル一の聖騎士だ。性別は女性で、名前はレベッカと設定されている。
「もう一枚も聖騎士よ。これはエレノアね。で、最後は魔騎士。ひとりだけ男性でガルディよ。とりあえず強そうなのを選んでみたの」
量より質という考えで、村人以外は上級職とされる聖騎士と魔騎士が並んだ。
聖騎士はレベル三までの神聖魔法が使える騎士だ。基本はレベル一で一回、レベル五で二回、レベル十で三回となる。レベル十の聖騎士であれば、神聖魔法レベル三の魔法を一回、レベル二を二回、レベル一を三回、装備した魔法に合わせて使えるようになる。
魔騎士は聖騎士の神聖魔法ではなく、通常の魔法を使えるバージョンだ。騎士としての能力を持ち、魔術師の魔法も使える。同じく最高レベルまで到達して、ようやくレベル三の魔法を使えるようになるが、前衛も遠距離攻撃もできる点から汎用性は高い。
「見た限りだと、裕介は大貴の拠点を狙おうとしてるのよね。だったら私は本拠地を守ってあげる」
頼りなかった裕介の拠点防衛隊に、レベル一ながら聖騎士二人と魔騎士一人が加わった。聖騎士のレベッカと魔騎士のガルディをダイナルの左右へ移動させ、盾とすると同時に早速の魔法を使う。
「レベッカに装備した神聖魔法のガードを魔騎士のガルディに、そしてガルディが装備中の魔法のパワーを本人に使うわ」
七海の宣言により、ガルディに防御力を高める効果のガードと、攻撃力を高める効果のパワーが使われた。おかげでレベル一でも、結構な能力になった。
中央にダイナル。右にレベッカで左にガルディ。ダイナルの真後ろにはヒールを装備した聖騎士のエレノア。彼女の右にドナミス、左にレイマッドという布陣となった。
拠点には援軍に来てくれたソフィーリアが入り、すぐ前に神官のミリアルル。ノーマンとリエリの村人コンビはより後方へ避難させた。大貴が全滅を目的としない限りは、村が占拠されても助かる位置だ。
七海が守りを固めてくれたのを受けて、裕介はデュラゾンとアニラを真っ直ぐに敵拠点へ向かわせる。少ない確率の勝利を得るために。
「フン。魔騎士や聖騎士がいても、レベル一じゃ相手にならねえんだよ!」
小手調べなどする必要もないと、大貴は弓兵を使って魔騎士へ間接攻撃を仕掛ける。三度の移動でも戦士では接近しきれない距離だったため、ダメージを与える方法はこれしかなかった。
レベル五の弓兵であれば、本来は魔騎士が相手でもそれなりに生命力を奪えるが、七海の魔騎士は魔法の効果で能力を上昇させていた。
連続での弓攻撃にも耐え抜き、次ターンが始まるとエレノアのヒールで全快近くまで回復する。
「まずはひとりでも戦士の数を減らそう」
提案に七海が頷いたのを受けて、裕介は先陣を切ってきた大貴のシンボルリーダー、レベル十の戦士にドナミスのフレアとレイマッドの弓攻撃を食らわせた。
戦士は生命力と攻撃力こそ高いが、防御力は村人と大差ない。魔法攻撃はもちろん、レベル一の弓兵でもそれなりにダメージを与えられる。
間接攻撃に怯んだかどうかは知らないが、そこへパワーアップ中の魔騎士が渾身の一撃を見舞う。
戦士はまだ倒れないが、ガルディの前にダイナルを出してとどめを刺す。集中攻撃により一枚を倒すと、今度は聖騎士をダイナルの前と右隣に移動させる。集中攻撃を食らうとすぐに倒れてしまうので、攻撃されるポイントを守備力に優れる聖騎士のレベッカとエレノアで塞いだのだ。
「これで一から二ターンは時間が稼げるけど、大砦に接近して、生命力をゼロにするまでの時間を考えるとまだ足りない」
「だったら、頑張るしかないでしょ」
あくまでも前向きな七海につられるように、裕介も弾んだ声で「そうだね」と返した。
戦局はまだ大貴有利だが、良い勝負すらできなかった最近を考えれば上出来だ。
「女に味方してもらって調子に乗ってんのか。お前には相応しいぜ。せいぜい頑張りな」
二枚の弓兵が、ダイナルへ攻撃を仕掛ける。レベル一で守備力に難がある戦士のダイナルだが、ギリギリのところで耐えた。
本当なら対魔術師用の間接攻撃部隊だったのだろうが、裕介と七海の連合軍でまだ魔法を使えるのは、ヒールを残す神官のミリアルルだけだ。
戦力にならないカードを潰しても仕方ないと考え、ダイナルに狙いを変えたのだろう。しかし、能力値の予想を誤ったせいで、瀕死であっても生き残らせる結果になった。
三枚残っている戦士の一枚を使ってダイナルを仕留め、厄介な弓兵のレイマッドをもう一枚で潰す。残りの一枚はダイナルがいなくなって、攻撃を仕掛けられるようになったガルディを狙った。
ターンが裕介に移ると、ミリアルルを移動させてガルディへヒールを使った。これで頼りの魔騎士の生命力が回復した。
魔法を使えなくなった魔術師や神官も敵に攻撃はできるが、正直なところ攻撃力は村人と同等かそれ以下だ。
防御力の低い戦士や弓兵、同じ職種のカードには多少なりともダメージを与えられるが、相手が騎士などになるとまったく戦力にはならない。あとは壁にするくらいである。
しかし例の夢を二度も見て以降、どうにも裕介は犠牲戦法を選べなくなった。それしかないのならそうするべきなのだが、他に良い作戦があるのではないかと必死になって脳みそを働かせる。
昨日の夢でデュラゾンは言った。一対一で戦える状況にして時間を稼ぎ、敵の兵糧が尽きるのを待つ。
英雄は指定ターン数までに決着がつかなければ引き分けとなる。あまりに長々とプレイし続ければ、順番待ちのプレイヤーたちがゲームできなくなってしまうからである。
だが、今回は引き分けを狙えない。物理攻撃メインの部隊を組んだ大貴が、戦法などお構いなしの力任な特攻をひたすら行ってくるせいだ。さすがは真雪の兄というべきか、戦い方もよく似ていた。
大貴には挑発されたが、今の裕介に七海の援軍はありがたい限りだった。本来ならダイナルとレイマッドがやられた時点で、拠点防衛に残っているのは魔法を撃ち終えたドナミスとミリアルル、あとはノーマンとリエリの村人二人になっていた。
けれど七海のおかげで、村の前には能力上昇中の魔騎士と二人の聖騎士が。拠点にはソフィーリアがまだ残っている。
相手は防御力の低い戦士だけに、ドナミスで仕掛けてもダメージは与えられる。ほんの少しであっても役に立つくらい、裕介側の戦力は心許ない。
だからこそ、戦士の一枚へ集中攻撃を行う。間接攻撃のできる弓兵を先に狙うべきか迷ったが、攻撃力に優れる戦士をより脅威だと判断した。
不愉快そうな真雪とは対照的に、大貴は余裕そのものだ。決められたルールなんだから、仕方ねえだろと妹を宥める。
「もっとも昨日登録したばかりのレベル一が援軍に来たところで、結果は変わらねえだろうがな」
「相変わらず自信家ね。昔は何をするにも、裕介に負けてたくせに。体が大きくなってから虐めるのは、その時の仕返しなの? 器の小さい男よね」
「お前も昔は裕介の尻しか見てなかっただろ。ガキの頃からそういう趣味でもあったのかよ」
挑発したつもりが、大貴の反撃で逆に七海が顔を真っ赤にする。
「どこまでも最低な男ね!」
「最初にくだらねえこと言ったのはお前だろ。ガキの頃の話を持ち出しやがって。いつまでそいつにくっついてるつもりだ。保護者にでもなったのか」
「そんなの私の勝手でしょ。裕介も何か言ってやったら? 溜まってる怒りがあるでしょ」
急に話を振られた裕介は何も言えず、いつもと同じように曖昧な笑みを浮かべるだけだった。
「そいつにそんな度胸があるわけねえだろ。真雪に弱介言われても、黙ってやがるんだぞ。昔とは違うんだよ」
忌まわしい記憶を振り払うかのうように大声を上げ、大貴は七海に早くカードを置けと告げる。
援軍に入ったプレイヤーは、同盟を組んでいる者の陣地にカードを置ける。上限は配置ポイントで、同盟者の拠点が占拠されれば敗北となる。操作は援軍に入ったプレイヤーが行い、特別な効果やデメリットは存在しない。隠しルール次第でどうなるかはわからないが、表のルールではそうなっていた。
「昔とは違っても人の本質は変わらないわ。だから裕介は今も、人見知りだった子供時代の私の背を押してくれた頼りがいのある男の子なのよ」
何かを訴えかけるような目。確かにそんな時もあったかもしれないが、どちらかといえば大貴の認識が合っている。現在の裕介は年下の女の子からバカにされても、文句ひとつ言えないただのヘタレだ。
「僕は……頼られる資格のない男だよ」
「そうかもしれないわね」
あっさりと七海は肯定した。
「だから今は私に頼って。いつか元の格好いい裕介に戻るまでね」
満面の笑みは、正面に立つ大貴を見るなり掻き消える。真剣な顔つきになった七海は、まず裕介の拠点前にシンボルリーダーを置いた。
そのカードを見た瞬間、場にいる誰もが驚愕で目を見開いた。いつになく大貴も声を震わせる。
「レベル十の……村人、だと? お前、俺をコケにしてやがんのか!」
「何で怒ってるのよ。裕介がいつも村人をリーダーにしてるから、私も真似たの。名前も決めてあるのよ。ソフィーリアって言うの」
どうだとばかりにカードならぬキャラ紹介をする七海に、裕介は必ずしも名前などは必要でないと教える。
「ある程度の設定を作れるのも英雄の魅力だけど、戦闘には影響しないから決めない人の方が多いんだ。僕のも単なる趣味みたいなものだしね」
「そ、そうなの?」
裕介がプレイしたのを見た経験しかない七海は、英雄について勘違いをしていた。シンボルリーダーを村人にしたのもそのひとつだ。
考えてみれば、裕介の窮地に黙っていられなくなり、登録をしたのが昨日なのだ。基本的なゲームの遊び方しか知らないのである。
「と、とにかくゲームをしましょう。次はこれね」
やはり拠点の近くに七海はカードを置いた。今度はレベル一の聖騎士だ。性別は女性で、名前はレベッカと設定されている。
「もう一枚も聖騎士よ。これはエレノアね。で、最後は魔騎士。ひとりだけ男性でガルディよ。とりあえず強そうなのを選んでみたの」
量より質という考えで、村人以外は上級職とされる聖騎士と魔騎士が並んだ。
聖騎士はレベル三までの神聖魔法が使える騎士だ。基本はレベル一で一回、レベル五で二回、レベル十で三回となる。レベル十の聖騎士であれば、神聖魔法レベル三の魔法を一回、レベル二を二回、レベル一を三回、装備した魔法に合わせて使えるようになる。
魔騎士は聖騎士の神聖魔法ではなく、通常の魔法を使えるバージョンだ。騎士としての能力を持ち、魔術師の魔法も使える。同じく最高レベルまで到達して、ようやくレベル三の魔法を使えるようになるが、前衛も遠距離攻撃もできる点から汎用性は高い。
「見た限りだと、裕介は大貴の拠点を狙おうとしてるのよね。だったら私は本拠地を守ってあげる」
頼りなかった裕介の拠点防衛隊に、レベル一ながら聖騎士二人と魔騎士一人が加わった。聖騎士のレベッカと魔騎士のガルディをダイナルの左右へ移動させ、盾とすると同時に早速の魔法を使う。
「レベッカに装備した神聖魔法のガードを魔騎士のガルディに、そしてガルディが装備中の魔法のパワーを本人に使うわ」
七海の宣言により、ガルディに防御力を高める効果のガードと、攻撃力を高める効果のパワーが使われた。おかげでレベル一でも、結構な能力になった。
中央にダイナル。右にレベッカで左にガルディ。ダイナルの真後ろにはヒールを装備した聖騎士のエレノア。彼女の右にドナミス、左にレイマッドという布陣となった。
拠点には援軍に来てくれたソフィーリアが入り、すぐ前に神官のミリアルル。ノーマンとリエリの村人コンビはより後方へ避難させた。大貴が全滅を目的としない限りは、村が占拠されても助かる位置だ。
七海が守りを固めてくれたのを受けて、裕介はデュラゾンとアニラを真っ直ぐに敵拠点へ向かわせる。少ない確率の勝利を得るために。
「フン。魔騎士や聖騎士がいても、レベル一じゃ相手にならねえんだよ!」
小手調べなどする必要もないと、大貴は弓兵を使って魔騎士へ間接攻撃を仕掛ける。三度の移動でも戦士では接近しきれない距離だったため、ダメージを与える方法はこれしかなかった。
レベル五の弓兵であれば、本来は魔騎士が相手でもそれなりに生命力を奪えるが、七海の魔騎士は魔法の効果で能力を上昇させていた。
連続での弓攻撃にも耐え抜き、次ターンが始まるとエレノアのヒールで全快近くまで回復する。
「まずはひとりでも戦士の数を減らそう」
提案に七海が頷いたのを受けて、裕介は先陣を切ってきた大貴のシンボルリーダー、レベル十の戦士にドナミスのフレアとレイマッドの弓攻撃を食らわせた。
戦士は生命力と攻撃力こそ高いが、防御力は村人と大差ない。魔法攻撃はもちろん、レベル一の弓兵でもそれなりにダメージを与えられる。
間接攻撃に怯んだかどうかは知らないが、そこへパワーアップ中の魔騎士が渾身の一撃を見舞う。
戦士はまだ倒れないが、ガルディの前にダイナルを出してとどめを刺す。集中攻撃により一枚を倒すと、今度は聖騎士をダイナルの前と右隣に移動させる。集中攻撃を食らうとすぐに倒れてしまうので、攻撃されるポイントを守備力に優れる聖騎士のレベッカとエレノアで塞いだのだ。
「これで一から二ターンは時間が稼げるけど、大砦に接近して、生命力をゼロにするまでの時間を考えるとまだ足りない」
「だったら、頑張るしかないでしょ」
あくまでも前向きな七海につられるように、裕介も弾んだ声で「そうだね」と返した。
戦局はまだ大貴有利だが、良い勝負すらできなかった最近を考えれば上出来だ。
「女に味方してもらって調子に乗ってんのか。お前には相応しいぜ。せいぜい頑張りな」
二枚の弓兵が、ダイナルへ攻撃を仕掛ける。レベル一で守備力に難がある戦士のダイナルだが、ギリギリのところで耐えた。
本当なら対魔術師用の間接攻撃部隊だったのだろうが、裕介と七海の連合軍でまだ魔法を使えるのは、ヒールを残す神官のミリアルルだけだ。
戦力にならないカードを潰しても仕方ないと考え、ダイナルに狙いを変えたのだろう。しかし、能力値の予想を誤ったせいで、瀕死であっても生き残らせる結果になった。
三枚残っている戦士の一枚を使ってダイナルを仕留め、厄介な弓兵のレイマッドをもう一枚で潰す。残りの一枚はダイナルがいなくなって、攻撃を仕掛けられるようになったガルディを狙った。
ターンが裕介に移ると、ミリアルルを移動させてガルディへヒールを使った。これで頼りの魔騎士の生命力が回復した。
魔法を使えなくなった魔術師や神官も敵に攻撃はできるが、正直なところ攻撃力は村人と同等かそれ以下だ。
防御力の低い戦士や弓兵、同じ職種のカードには多少なりともダメージを与えられるが、相手が騎士などになるとまったく戦力にはならない。あとは壁にするくらいである。
しかし例の夢を二度も見て以降、どうにも裕介は犠牲戦法を選べなくなった。それしかないのならそうするべきなのだが、他に良い作戦があるのではないかと必死になって脳みそを働かせる。
昨日の夢でデュラゾンは言った。一対一で戦える状況にして時間を稼ぎ、敵の兵糧が尽きるのを待つ。
英雄は指定ターン数までに決着がつかなければ引き分けとなる。あまりに長々とプレイし続ければ、順番待ちのプレイヤーたちがゲームできなくなってしまうからである。
だが、今回は引き分けを狙えない。物理攻撃メインの部隊を組んだ大貴が、戦法などお構いなしの力任な特攻をひたすら行ってくるせいだ。さすがは真雪の兄というべきか、戦い方もよく似ていた。
大貴には挑発されたが、今の裕介に七海の援軍はありがたい限りだった。本来ならダイナルとレイマッドがやられた時点で、拠点防衛に残っているのは魔法を撃ち終えたドナミスとミリアルル、あとはノーマンとリエリの村人二人になっていた。
けれど七海のおかげで、村の前には能力上昇中の魔騎士と二人の聖騎士が。拠点にはソフィーリアがまだ残っている。
相手は防御力の低い戦士だけに、ドナミスで仕掛けてもダメージは与えられる。ほんの少しであっても役に立つくらい、裕介側の戦力は心許ない。
だからこそ、戦士の一枚へ集中攻撃を行う。間接攻撃のできる弓兵を先に狙うべきか迷ったが、攻撃力に優れる戦士をより脅威だと判断した。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜
green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。
しかし、父である浩平にその夢を反対される。
夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。
「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」
一人のお嬢様の挑戦が始まる。
優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由
棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。
(2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。
女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。
彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。
高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。
「一人で走るのは寂しいな」
「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」
孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。
そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。
陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。
待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。
彼女達にもまた『駆ける理由』がある。
想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。
陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。
それなのに何故! どうして!
陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか!
というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。
嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。
ということで、書き始めました。
陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。
表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる