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1話 もうそんなになるんだね
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男が倒れる。血を吐き、腹に刺された剣をそのままに生命の力を失わせる。
歪む視界に最後に映るのは住んでいた村。火に焼かれ、悲鳴が木霊す惨劇の村。
数秒後には力尽きそうな男が手を伸ばす。最期のその瞬間まで、大切なものを守ろうとするかのように。
しかし伸びきることのなかった腕は誰にも届かず、その場に落ちる。かすかな土煙だけが、彼の魂の旅路を見送った。
いや、正確にはもうひとり見ている者がいた。彼の頭上で、精神体のように透明な姿で浮かぶ少年が。
少年は田中裕介といった。見下ろす形で目撃した惨劇から、首を小さく左右に振って目を逸らす。
誰の目から見ても戦力差は明らかで、それはもはや戦いではなかった。単なる虐殺行為である。
気がつけば裕介は浮かんでいた。パジャマ姿で、まるで神様にでもなったかのように戦場の全体を見ている。
太陽が輝く青空の下、小さな村が近くにあった砦の兵士たちに攻められた。村人は頼りにしていた男を中心に全力で抵抗した。誰もが手に武器を持ち、向かってくる敵に挑みかかった。
けれど戦士や騎士などがいる相手に、ただの村人がいつまでも抵抗できるはずがなかった。村にも戦士はいたが、最初に村を守ろうとして四方八方から槍を突き出されて戦死した。若い女の戦士だった。
そしてつい先ほど、大将格と思われる頼りにされていた男が騎士のひとりに殺された。それにより村人は抵抗の意思を失い、投降した。
占拠された村からは金品が奪われ、持ち去られる。途方に暮れた村人は何もできない。抵抗すれば死が待っている。
赤子を抱く母親は遺体となった夫を見つけて崩れ落ち、両親を失った少年は血の涙を流しそうなくらいに敵を睨む。
悲惨。それ以外の言葉が見つからなかった。一部始終を見せられた裕介は顔をしかめる。
自分はただの学生なはずなのに、どうしてこのような場にいるのか。疑問は尽きない。
透き通った体に現実感はなく、誰かと目があっても気づかれない。村人も侵略者たちも、裕介が見えてないみたいだった。
常識で考えればあり得ない状況なのに、奇妙な生々しさがある。まるで現実だといわんばかりに。
やがて略奪を終えた兵士たちが村を去っていく。わずかに生き残った村人はまだ火が残り、廃墟も同然となった村を見て絶望する。
泣き喚く声が大きくなり、裕介の耳孔に突き刺さる。聞いているだけで苦しくなり、うなされる。
※
――直後に目が覚めた。
見下ろすのではなく、見上げる形に視界が変化している。視線の先にあるのは見慣れた天井だった。
目を見開き、荒い呼吸を数度繰り返したあと、反射的にベッドサイドにある小さな丸テーブルを見る。
午前七時にセットされた目覚まし時計と水の入ったマグカップ、両親に買ってもらったスマホが置かれている。何ひとつ違いのない普段どおりの光景だ。
額に手を当てる。濡れた前髪の感触で、汗をかいているのだと理解する。
「寝汗をかいちゃったのか」
ふうと一度大きく息を吐いてから、裕介は上半身を起こす。気持ち悪いくらいに、パジャマも汗でぐっしょりだ。原因はわかっている。夢見が悪かったせいだ。
いつもなら起きると同時に夢の内容を忘れるのだが、何故か今朝は鮮明に覚えている。
「とりあえず着替えようかな」
現在時刻は午前六時五十五分。黒電話のベルみたいな音が鳴る目覚まし時計のスイッチを切り、のそのそとベッドを出る。
二階建ての自宅は、若い頃から共働きだった両親の念願だったマイホームだ。裕介が幼稚園に通っている頃に完成し、そろそろ住んで七、八年くらいになる。
裕介の部屋と物置、客間が二階にあり、一階に両親の部屋とトイレ、浴室にダイニングやリビングがある。間取りはそこそこ広い。
部屋のタンスから制服と肌着を取り、浴室へ移動する。シャワーを浴びるつもりはないが、汗だくの体をタオルで拭くくらいはしておきたい。
着替えて顔を洗い、歯を磨く。そうしてるうちに、キッチンから美味しそうなにおいが漂ってくる。
父は営業マン。母は会計の事務員として同じ会社で働いている。さほど大きくないだけに、長年一緒に勤めているうちに仲が発展してというのがなれそめだった。
裕介から聞いたわけではないのだが、以前に教えられた覚えがある。ひとり息子の前でも惚気るくらいに仲が良いのだ。
今朝も隣同士の席でいちゃいちゃする両親を眺めながら、焼いた食パンにバターを塗って食べる。もう一枚は蜂蜜にする。
ベーコンエッグにレタスとトマトのサラダ。コーンスープも一緒に食べる。朝早く起きるのは、のんびりと朝食を楽しむ時間が欲しいからだ。あまりにもギリギリだと、来訪者によって強制的に中断させられる。
食事を終えて食器をキッチンへ下げる。戻ったリビングで、朝のニュースをチェックしているうちに迎えが来る。
鳴らされたチャイムの音を聞いた両親――特に母親が意味ありげな視線を裕介に向ける。冷やかしたくてたまらない。そんな感じだ。
あれこれ言われたくない年頃真っ盛りの裕介は、あえて反抗的な態度を見せて構うなと無言で抗議する。
出迎えるために開けた扉の前に立っていたのは、幼馴染の楠原七海だった。
近所に住む同い年の女の子で、いわゆる幼馴染だ。百五十八センチメートルの裕介よりもやや高い身長で、高校指定のブレザーを纏う体はスラリとしている。
「朝から人をじっと見て、どうしたの?」
小首を傾げると、七海の肩口までのワンレングスの黒髪が額を流れた。サラサラな黒髪は重さを感じさせず、朝日に反射して光沢を放っている。かすかに緩められた目元と薄ピンクの唇が形成する笑顔に、吸い込まれそうになる。隣近所に住む幼馴染は、間違いなく美少女だった。
七海は話す時、人の目をじっと見る。高い身長をやや屈め、見上げるような体勢でだ。好奇心が輝いているかのような瞳で見つめられれば、裕介でなくとも顔に熱を持つ。
「いや、その、制服だなって」
何を言ってるのよ、と七海が軽く吹き出す。
「当たり前じゃない。裕介も私も中学生になったんだから。寝ぼけてるの?」
「そういうわけじゃないんだけど」
口ごもる裕介の前で何を思ったのか、唐突に七海がその場で一回転した。セーラー服のスカートの裾がふわりと浮かび上がり、見えた脹脛に心臓の鼓動が大きくなる。
フィギアスケートの選手みたいに華麗に回った七海は、市内で咲き誇る桜にも負けない満開の笑みを浮かべた。
「ねえ。そういえば、似合ってるって言葉をまだ貰ってないんだけど」
悪戯っぽい七海の言動が聞こえたのか、背後のリビングで母親がクスッとする。見ていなくても雰囲気で察した裕介は、茹蛸みたいに顔面を火照らせる。
「に、似合ってるよ。それより、早く学校に行こう。遅刻して先生に目をつけられたら厄介だからね」
心がこもってないわねと不満げにする七海を回れ右させ、両手で肩を軽く押して外へ出す。玄関口とはいえ、いつまでも家の中にいたら更なる冷やかしを両親から受けかねない。危惧した裕介は、半ば強制的に家を出た。
舗装されたアスファルトに反射された陽光が、心地よい暖かさを与えてくれる。おかげでまだ肌寒い春の風にもなんとか耐えられそうだ。
押し出される形で裕介と一緒に地面へ靴を乗せた七海が「だいぶ暖かくなったね」と言った。
「そうだね。厚手のジャンパーも、そろそろクリーニングに出そうかな」
並んで通学路を歩き出した裕介の呟きに、大げさなほど七海が驚く。
「あの分厚い真冬用のジャンパーをまだ着てたの!?」
「四月のうちは寒かったからね。それに僕は春物の服を持ってないんだよ。冬が終われば夏という感じかな」
だったら買いなさいよという指摘を、裕介は曖昧に笑って受け流す。
裕介たちの暮らす東北の地方都市では、関東と違って四月でも寒い。雪はもうないが、吹きつける風には冬の名残が色濃くある。そのため日中はともかく、夜はジャンパーがなければ外では凍えそうになる。
春物の服を買うと断言しない裕介に、やがて七海は呆れたようなため息をついた。
「お小遣いは漫画か小説、あとはゲームに使ってしまうものね。テレビゲームが規制されて、もう二年は経つのに」
「そうか。もうそんなになるんだね」
青一色の空を見上げ、過去を懐かしむように裕介は目を細めた。
数年前まで日本は空前のオンラインゲームブームだった。スマートフォンの普及により幼い子供でも楽しめるようになり、様々なゲームが生まれた。部屋にいながら誰かと繋がれるというのは魅力で、裕介も楽しんでいたが、大流行に時の政権が待ったをかけた。
虐めの多様化も見られようになった昨今、スマートフォンのみならずテレビゲーム全体を規制した。
本決定というわけではなく試用期間を設け、その間にどう子供たちの環境が変化するのかを見定める狙いだとニュース番組では言っていた。当然、テレビゲーム業界は反発。愛好者も含めたもの凄い反対運動が起こった。
しかし時の政権はとりあえずの五年間でテレビゲームを規制した。インターネットは使えるものの、海外のゲームで遊ぶのも禁止となった。破った場合の罰則も設けられ、青少年の健全な育成を目的に取り締まりも行われた。
代わりに推奨された娯楽が対人のボードケームやカードゲームだった。勝ち馬に乗ろうと積極的に支援を申し出た大手玩具会社が企画した。
対面で一緒になって遊べばコミュニケーション能力は向上し、流行すればテレビゲームを規制した影響も薄れる。そう言って政府を説得し、税金で援助させた。ネットの掲示板では当たり前に流れている情報だ。
多額の補助金を得た玩具会社はボード上で行うカードゲームを発表。当初は無料として各都道府県に配布した。乗り気でなかった県も多かったが、テレビゲームよりはと最終的に受け入れた。
歪む視界に最後に映るのは住んでいた村。火に焼かれ、悲鳴が木霊す惨劇の村。
数秒後には力尽きそうな男が手を伸ばす。最期のその瞬間まで、大切なものを守ろうとするかのように。
しかし伸びきることのなかった腕は誰にも届かず、その場に落ちる。かすかな土煙だけが、彼の魂の旅路を見送った。
いや、正確にはもうひとり見ている者がいた。彼の頭上で、精神体のように透明な姿で浮かぶ少年が。
少年は田中裕介といった。見下ろす形で目撃した惨劇から、首を小さく左右に振って目を逸らす。
誰の目から見ても戦力差は明らかで、それはもはや戦いではなかった。単なる虐殺行為である。
気がつけば裕介は浮かんでいた。パジャマ姿で、まるで神様にでもなったかのように戦場の全体を見ている。
太陽が輝く青空の下、小さな村が近くにあった砦の兵士たちに攻められた。村人は頼りにしていた男を中心に全力で抵抗した。誰もが手に武器を持ち、向かってくる敵に挑みかかった。
けれど戦士や騎士などがいる相手に、ただの村人がいつまでも抵抗できるはずがなかった。村にも戦士はいたが、最初に村を守ろうとして四方八方から槍を突き出されて戦死した。若い女の戦士だった。
そしてつい先ほど、大将格と思われる頼りにされていた男が騎士のひとりに殺された。それにより村人は抵抗の意思を失い、投降した。
占拠された村からは金品が奪われ、持ち去られる。途方に暮れた村人は何もできない。抵抗すれば死が待っている。
赤子を抱く母親は遺体となった夫を見つけて崩れ落ち、両親を失った少年は血の涙を流しそうなくらいに敵を睨む。
悲惨。それ以外の言葉が見つからなかった。一部始終を見せられた裕介は顔をしかめる。
自分はただの学生なはずなのに、どうしてこのような場にいるのか。疑問は尽きない。
透き通った体に現実感はなく、誰かと目があっても気づかれない。村人も侵略者たちも、裕介が見えてないみたいだった。
常識で考えればあり得ない状況なのに、奇妙な生々しさがある。まるで現実だといわんばかりに。
やがて略奪を終えた兵士たちが村を去っていく。わずかに生き残った村人はまだ火が残り、廃墟も同然となった村を見て絶望する。
泣き喚く声が大きくなり、裕介の耳孔に突き刺さる。聞いているだけで苦しくなり、うなされる。
※
――直後に目が覚めた。
見下ろすのではなく、見上げる形に視界が変化している。視線の先にあるのは見慣れた天井だった。
目を見開き、荒い呼吸を数度繰り返したあと、反射的にベッドサイドにある小さな丸テーブルを見る。
午前七時にセットされた目覚まし時計と水の入ったマグカップ、両親に買ってもらったスマホが置かれている。何ひとつ違いのない普段どおりの光景だ。
額に手を当てる。濡れた前髪の感触で、汗をかいているのだと理解する。
「寝汗をかいちゃったのか」
ふうと一度大きく息を吐いてから、裕介は上半身を起こす。気持ち悪いくらいに、パジャマも汗でぐっしょりだ。原因はわかっている。夢見が悪かったせいだ。
いつもなら起きると同時に夢の内容を忘れるのだが、何故か今朝は鮮明に覚えている。
「とりあえず着替えようかな」
現在時刻は午前六時五十五分。黒電話のベルみたいな音が鳴る目覚まし時計のスイッチを切り、のそのそとベッドを出る。
二階建ての自宅は、若い頃から共働きだった両親の念願だったマイホームだ。裕介が幼稚園に通っている頃に完成し、そろそろ住んで七、八年くらいになる。
裕介の部屋と物置、客間が二階にあり、一階に両親の部屋とトイレ、浴室にダイニングやリビングがある。間取りはそこそこ広い。
部屋のタンスから制服と肌着を取り、浴室へ移動する。シャワーを浴びるつもりはないが、汗だくの体をタオルで拭くくらいはしておきたい。
着替えて顔を洗い、歯を磨く。そうしてるうちに、キッチンから美味しそうなにおいが漂ってくる。
父は営業マン。母は会計の事務員として同じ会社で働いている。さほど大きくないだけに、長年一緒に勤めているうちに仲が発展してというのがなれそめだった。
裕介から聞いたわけではないのだが、以前に教えられた覚えがある。ひとり息子の前でも惚気るくらいに仲が良いのだ。
今朝も隣同士の席でいちゃいちゃする両親を眺めながら、焼いた食パンにバターを塗って食べる。もう一枚は蜂蜜にする。
ベーコンエッグにレタスとトマトのサラダ。コーンスープも一緒に食べる。朝早く起きるのは、のんびりと朝食を楽しむ時間が欲しいからだ。あまりにもギリギリだと、来訪者によって強制的に中断させられる。
食事を終えて食器をキッチンへ下げる。戻ったリビングで、朝のニュースをチェックしているうちに迎えが来る。
鳴らされたチャイムの音を聞いた両親――特に母親が意味ありげな視線を裕介に向ける。冷やかしたくてたまらない。そんな感じだ。
あれこれ言われたくない年頃真っ盛りの裕介は、あえて反抗的な態度を見せて構うなと無言で抗議する。
出迎えるために開けた扉の前に立っていたのは、幼馴染の楠原七海だった。
近所に住む同い年の女の子で、いわゆる幼馴染だ。百五十八センチメートルの裕介よりもやや高い身長で、高校指定のブレザーを纏う体はスラリとしている。
「朝から人をじっと見て、どうしたの?」
小首を傾げると、七海の肩口までのワンレングスの黒髪が額を流れた。サラサラな黒髪は重さを感じさせず、朝日に反射して光沢を放っている。かすかに緩められた目元と薄ピンクの唇が形成する笑顔に、吸い込まれそうになる。隣近所に住む幼馴染は、間違いなく美少女だった。
七海は話す時、人の目をじっと見る。高い身長をやや屈め、見上げるような体勢でだ。好奇心が輝いているかのような瞳で見つめられれば、裕介でなくとも顔に熱を持つ。
「いや、その、制服だなって」
何を言ってるのよ、と七海が軽く吹き出す。
「当たり前じゃない。裕介も私も中学生になったんだから。寝ぼけてるの?」
「そういうわけじゃないんだけど」
口ごもる裕介の前で何を思ったのか、唐突に七海がその場で一回転した。セーラー服のスカートの裾がふわりと浮かび上がり、見えた脹脛に心臓の鼓動が大きくなる。
フィギアスケートの選手みたいに華麗に回った七海は、市内で咲き誇る桜にも負けない満開の笑みを浮かべた。
「ねえ。そういえば、似合ってるって言葉をまだ貰ってないんだけど」
悪戯っぽい七海の言動が聞こえたのか、背後のリビングで母親がクスッとする。見ていなくても雰囲気で察した裕介は、茹蛸みたいに顔面を火照らせる。
「に、似合ってるよ。それより、早く学校に行こう。遅刻して先生に目をつけられたら厄介だからね」
心がこもってないわねと不満げにする七海を回れ右させ、両手で肩を軽く押して外へ出す。玄関口とはいえ、いつまでも家の中にいたら更なる冷やかしを両親から受けかねない。危惧した裕介は、半ば強制的に家を出た。
舗装されたアスファルトに反射された陽光が、心地よい暖かさを与えてくれる。おかげでまだ肌寒い春の風にもなんとか耐えられそうだ。
押し出される形で裕介と一緒に地面へ靴を乗せた七海が「だいぶ暖かくなったね」と言った。
「そうだね。厚手のジャンパーも、そろそろクリーニングに出そうかな」
並んで通学路を歩き出した裕介の呟きに、大げさなほど七海が驚く。
「あの分厚い真冬用のジャンパーをまだ着てたの!?」
「四月のうちは寒かったからね。それに僕は春物の服を持ってないんだよ。冬が終われば夏という感じかな」
だったら買いなさいよという指摘を、裕介は曖昧に笑って受け流す。
裕介たちの暮らす東北の地方都市では、関東と違って四月でも寒い。雪はもうないが、吹きつける風には冬の名残が色濃くある。そのため日中はともかく、夜はジャンパーがなければ外では凍えそうになる。
春物の服を買うと断言しない裕介に、やがて七海は呆れたようなため息をついた。
「お小遣いは漫画か小説、あとはゲームに使ってしまうものね。テレビゲームが規制されて、もう二年は経つのに」
「そうか。もうそんなになるんだね」
青一色の空を見上げ、過去を懐かしむように裕介は目を細めた。
数年前まで日本は空前のオンラインゲームブームだった。スマートフォンの普及により幼い子供でも楽しめるようになり、様々なゲームが生まれた。部屋にいながら誰かと繋がれるというのは魅力で、裕介も楽しんでいたが、大流行に時の政権が待ったをかけた。
虐めの多様化も見られようになった昨今、スマートフォンのみならずテレビゲーム全体を規制した。
本決定というわけではなく試用期間を設け、その間にどう子供たちの環境が変化するのかを見定める狙いだとニュース番組では言っていた。当然、テレビゲーム業界は反発。愛好者も含めたもの凄い反対運動が起こった。
しかし時の政権はとりあえずの五年間でテレビゲームを規制した。インターネットは使えるものの、海外のゲームで遊ぶのも禁止となった。破った場合の罰則も設けられ、青少年の健全な育成を目的に取り締まりも行われた。
代わりに推奨された娯楽が対人のボードケームやカードゲームだった。勝ち馬に乗ろうと積極的に支援を申し出た大手玩具会社が企画した。
対面で一緒になって遊べばコミュニケーション能力は向上し、流行すればテレビゲームを規制した影響も薄れる。そう言って政府を説得し、税金で援助させた。ネットの掲示板では当たり前に流れている情報だ。
多額の補助金を得た玩具会社はボード上で行うカードゲームを発表。当初は無料として各都道府県に配布した。乗り気でなかった県も多かったが、テレビゲームよりはと最終的に受け入れた。
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