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穂月の小学校編
文化祭で演じるのはかぐや姫、アドリブなんて邪道です
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夏休みが終わるのは悲しいが、学校が始まれば多くの仲間たちにも会える。
そうして少しずつ秋の気配が濃くなってきた頃、担任の柚が告げた。
「行事のプリントをきちんと見た人は知っているだろうけど、再来週の日曜日に文化祭があります」
高校などでやる本格的なものとは違い、学芸会みたいな雰囲気漂う文化祭なのだが、小学1年生になったばかりの穂月が知るはずもなく、とりあえず大喜びしてみる。
「穂月ちゃんが楽しみにしてくれてるみたいで、先生も嬉しいわ」
「うんっ!
でも……ぶんかさいってなあに?」
「……ああ、うん、とっても穂月ちゃんらしくて、ある意味安心するわね」
苦笑した柚が文化祭について説明する。
クラスごとに出し物をして、当日は保護者を呼んで公開するのだという。高校などの文化祭みたいに誰でも入れるわけではなく、安全面への配慮から基本的に関係者のみになる。
「屋台とかは高学年の子が先生たちと協力して行うわ。皆にはこの教室を使って何かしてもらうの。その何かを決めようというのが今の時間ね」
給食が終わって眠そうにしている児童もいるが、楽しそうな話し合いだとわかると目を輝かせて参加する。もちろん穂月のその中の1人だ。
「おばけやしきっ」
「そうそう、そういう感じのよ」
「めいどきっさ」
「……ちょくちょく出てくるマセた発言は誰から覚えてくるのかしら」
「おとうさん」
「……他に案はないかしら」
主に男児と柚がやりとりする中、2学期始まって早々の席替えで運よく近場に固まることができた穂月たちはこそこそと相談をする。
「だしものってなあに?」
「ほっちゃんのママのお店みたいなことをするんです」
「おー」
沙耶の説明に、思わず穂月は興奮の拍手をする。
「で、でも、パン屋さんとかはむりじゃないかとおもうの」
「だいじょうぶ、さっきのはもののたとえです。わたしもわかってます」
「はわわ、さっちゃんはやっぱりすごいの」
「それでなにをするかいけんをだしあってるんですが、のぞちゃんは……やっぱりふさんかっぽいですね」
穂月の真後ろにいる希は、器用に目を開けながらくーくーと寝息を立てている。机に突っ伏して寝ているとすぐに柚から注意を受けるので、希が編み出したのだ。
そのことを知った柚は、努力の方向が間違っていると頭を抱えていた。
「だしものってなんでもいいのかな?」
「そうです」
「なら、ほづきはげきがいいっ」
挙手して元気に立ち上がった穂月に視線が集まる。劇という言葉を耳にした柚は、やっぱりねと言いたげに頷いた。
「教室を使った出し物の他に、各クラス10分ずつ与えられて、体育館での発表もあるの。大抵は合唱なんだけど、もちろん劇でも構わないわ」
「おー」
照れ臭いのか男子はこぞって嫌がるが、他に妙案も出てこない。
「クラスのでも、体育館のでも、総合順位がつくわ。他の学級は合唱が多いからこそ、劇とかは目立つかもしれないわね」
柚に言われ、男子の目の色が変わる。勝負事になると女子よりもずっとやる気を見せるのだ。
最終的に穂月の案は採用され、教室では輪投げ、体育館では劇を発表することが決まった。
*
その日の放課後、ムーンリーフに帰ると、早速穂月は部屋で事務作業をしていた好美に報告した。
「劇ねえ……楽しかったけど、心臓にも悪かったのよね」
好美がどこか遠い目をして窓から外の風景を見つめる。
子供の頃の好美も参加している劇のビデオを、穂月は何度も見ていた。
「よしみさんもげきをしたことがあるんですか?」
沙耶の質問を、苦笑とともに好美は肯定する。
「途中から台詞を忘れたり、恥ずかしがって台本にない行動をする人がいたりで、とんでもない内容になってしまったんだけどね」
「それは……なんといえばいいかわからないです」
「はわわ、げきってたいへんなの」
「沙耶ちゃんと悠里ちゃんは何があっても普通に劇をするのよ」
好美に念を押され、2人が怖々と首を縦に動かした。
その後やってきた葉月に頼んで当時にビデオを皆で見た。耶と悠里は好美の忠告の意味をはっきり認識したらしく、何度も穂月にきちんと劇をやろうと言っていた。
*
何度も練習を重ねた本番当日。
穂月たちのクラスが劇の題材として選んだのは、以前に絵本で見たかぐや姫だった。
かぐや姫は目の色を変えて立候補した穂月。劇に恥ずかしがる児童もいる中、沙耶と悠里も率先して台詞のある役についてくれた。
その沙耶が早速お爺さん役で登場する。
「たけがひかっているのです」
紙で手作りした小道具の鎌で竹を切るふりをする。
それが合図となって、黒い布で全身を隠しながらやはり手作りの竹を持っていた穂月が姿を現す。
それぞれの衣装は各自が自宅で用意した、役に合っていそうな服だ。
「かぐやひめというなまえにします」
場面は次の日に移る。竹役や黄金役の児童を相手に、お爺さんがお金持ちになるまでを沙耶が演じる。
3ヵ月が経過したとナレーションが流れ、美しく成長した――といっても衣装も何も変わってないが――かぐや姫こと穂月がステージの中央に立つ。
各クラスは10分以内で発表を終えないといけないため、かなり大急ぎで劇を進行しなければならない。
それでも穂月は、初めての演劇に興奮と感動を覚えっぱなしだった。
「おじいさん、わたしはつきにかえらなければなりません」
殺到した結婚の申し込みを、無理難題を吹っかけて回避したかぐや姫が十五夜に近づいた日にお爺さんへ告げた。
「わたしはつきのもので、8月のじゅうごやにつきからおむかえがきます」
「それはあんまりです」
お爺さんこと沙耶は十五夜に大勢の侍を雇ってかぐや姫を守ろうとする。
「せんせい、おねがいします」
「……任せて」
玩具屋で購入した脇差を腰に差して、多くの男児と一緒に現れたのは希だった。
観客席から一際大きな声が上がる。すぐに隣の理性的な人物に口を押さえられていたが。
そこに月の使者役の悠里が舞台袖からとことこと歩いてくる。
「むかえにきたの」
「そうはさせないです。せんせい、でばんです」
「くっ、体が動かない……」
刀を構えたまま硬直するシーンで、希が迫真の演技を見せる。
本音は面倒臭がっているはずなのに、穂月が楽しみにしていたのを知っているからか、練習時から真面目に付き合ってくれた親友に心の中でありがとうを言う。
「かぐやひめ、いっしょにかえるの」
希の脇を通り抜け、悠里が手を伸ばす。
その手を取ったあとで、穂月はお爺さん役の沙耶を見る。
「おじいさん、これはいのちのくすりです。どうかこれからもげんきにすごしてください」
感謝と別れを告げて、穂月は手を繋いだままの悠里とステージから退出する。
続いて希や他の侍役もいなくなると、最後のお爺さんの家の場面になる。
「かぐやひめがいないのに、ながいきしてもいみないです」
悲しそうに呟き、貰った命の薬を燃える火の役をしている児童に渡す。
そこで劇は終了し、最後に出演者一同がステージに集まって、見てくれた保護者は他のクラスの児童たちにお礼の挨拶をしたのだった。
*
「うんうん、穂月、輝いてたよ」
若干涙ぐみながら、愛娘が主演の劇を見終えた葉月はふーっと大きく息を吐いた。隣り合った席には実希子の他に好美もいる。ステージの近くでは穂月たちの担任をしてくれている柚も無事に終わって安堵の表情を見せていた。
「希の奴も、しっかり役を演じてやがったな」
「だからといって劇中に興奮しすぎないでほしいわね」
途中で実希子の口を塞いだ好美が、おもむろに肩を落とした。
「タハハ、悪い悪い。ついつい声が出ちまった。
しかしムーンリーフは子煩悩な親が多いよな」
劇の時間に合わせて一時的に店を閉めてまで、関係者一同が勢揃い中である。茉優や恭介もこの場にいて、自分たちもいつか子供ができたらなんて話をしている。
「それだけ皆、楽しみにしてたんだよ」
「特に葉月と和葉ママだな」
チラリと視線を横に向ければ、緊張からの解放感と感動から号泣しそうになっている母親の姿があった。
「緊張するとパパの手や服を強く握ったりするのは相変わらずなんだね」
どことなくホッとしている春道を見れば、穂月の演技中に和葉がどんな感じだったのか一目瞭然だ。
「それも夫婦の形の1つだろ。葉月も感極まったら旦那に抱き着いてもいいんだぞ。ただし首は絞めるなよ」
「実希子ちゃんじゃないんだからしないよ」
「ハッハッハ、子供の頃と違って簡単に言い返されちまうな」
実希子と一緒に笑ったあとで葉月は目を細める。
「時間が過ぎるのって早いよね。夜泣きばかりしてた穂月が、もう皆の前で劇を披露できるまでになったんだから」
「ああ、あっという間だ。今もアタシはたまにグラウンドで葉月たちとソフトボールをやってる夢を見るよ」
「ふふ、過去を懐かしむ回数が増えるのは年寄りになってきた証ね」
「違いない。そういう好美はどうなんだ?」
「もちろん葉月ちゃんや実希子ちゃんと一緒よ。もう立派なおばさんだしね」
どこかしんみりとした空気を打ち払うように、葉月はパンと手を叩いた。
「それじゃ、帰ろうか。穂月たちが帰ってきたら、美味しいおやつを食べさせてあげないといけないしね」
*
春に入学したばかりの1年生が問題もなく劇を終えたのが評価され、総合順位とは別に特別賞が穂月たちのクラスに与えられた。
学校がわざわざ作ってくれた賞状を両手に持たせてもらえ、黒板前の中央で皆との写真を撮ってもらえた穂月の笑顔は誰よりも輝いていた。
そうして少しずつ秋の気配が濃くなってきた頃、担任の柚が告げた。
「行事のプリントをきちんと見た人は知っているだろうけど、再来週の日曜日に文化祭があります」
高校などでやる本格的なものとは違い、学芸会みたいな雰囲気漂う文化祭なのだが、小学1年生になったばかりの穂月が知るはずもなく、とりあえず大喜びしてみる。
「穂月ちゃんが楽しみにしてくれてるみたいで、先生も嬉しいわ」
「うんっ!
でも……ぶんかさいってなあに?」
「……ああ、うん、とっても穂月ちゃんらしくて、ある意味安心するわね」
苦笑した柚が文化祭について説明する。
クラスごとに出し物をして、当日は保護者を呼んで公開するのだという。高校などの文化祭みたいに誰でも入れるわけではなく、安全面への配慮から基本的に関係者のみになる。
「屋台とかは高学年の子が先生たちと協力して行うわ。皆にはこの教室を使って何かしてもらうの。その何かを決めようというのが今の時間ね」
給食が終わって眠そうにしている児童もいるが、楽しそうな話し合いだとわかると目を輝かせて参加する。もちろん穂月のその中の1人だ。
「おばけやしきっ」
「そうそう、そういう感じのよ」
「めいどきっさ」
「……ちょくちょく出てくるマセた発言は誰から覚えてくるのかしら」
「おとうさん」
「……他に案はないかしら」
主に男児と柚がやりとりする中、2学期始まって早々の席替えで運よく近場に固まることができた穂月たちはこそこそと相談をする。
「だしものってなあに?」
「ほっちゃんのママのお店みたいなことをするんです」
「おー」
沙耶の説明に、思わず穂月は興奮の拍手をする。
「で、でも、パン屋さんとかはむりじゃないかとおもうの」
「だいじょうぶ、さっきのはもののたとえです。わたしもわかってます」
「はわわ、さっちゃんはやっぱりすごいの」
「それでなにをするかいけんをだしあってるんですが、のぞちゃんは……やっぱりふさんかっぽいですね」
穂月の真後ろにいる希は、器用に目を開けながらくーくーと寝息を立てている。机に突っ伏して寝ているとすぐに柚から注意を受けるので、希が編み出したのだ。
そのことを知った柚は、努力の方向が間違っていると頭を抱えていた。
「だしものってなんでもいいのかな?」
「そうです」
「なら、ほづきはげきがいいっ」
挙手して元気に立ち上がった穂月に視線が集まる。劇という言葉を耳にした柚は、やっぱりねと言いたげに頷いた。
「教室を使った出し物の他に、各クラス10分ずつ与えられて、体育館での発表もあるの。大抵は合唱なんだけど、もちろん劇でも構わないわ」
「おー」
照れ臭いのか男子はこぞって嫌がるが、他に妙案も出てこない。
「クラスのでも、体育館のでも、総合順位がつくわ。他の学級は合唱が多いからこそ、劇とかは目立つかもしれないわね」
柚に言われ、男子の目の色が変わる。勝負事になると女子よりもずっとやる気を見せるのだ。
最終的に穂月の案は採用され、教室では輪投げ、体育館では劇を発表することが決まった。
*
その日の放課後、ムーンリーフに帰ると、早速穂月は部屋で事務作業をしていた好美に報告した。
「劇ねえ……楽しかったけど、心臓にも悪かったのよね」
好美がどこか遠い目をして窓から外の風景を見つめる。
子供の頃の好美も参加している劇のビデオを、穂月は何度も見ていた。
「よしみさんもげきをしたことがあるんですか?」
沙耶の質問を、苦笑とともに好美は肯定する。
「途中から台詞を忘れたり、恥ずかしがって台本にない行動をする人がいたりで、とんでもない内容になってしまったんだけどね」
「それは……なんといえばいいかわからないです」
「はわわ、げきってたいへんなの」
「沙耶ちゃんと悠里ちゃんは何があっても普通に劇をするのよ」
好美に念を押され、2人が怖々と首を縦に動かした。
その後やってきた葉月に頼んで当時にビデオを皆で見た。耶と悠里は好美の忠告の意味をはっきり認識したらしく、何度も穂月にきちんと劇をやろうと言っていた。
*
何度も練習を重ねた本番当日。
穂月たちのクラスが劇の題材として選んだのは、以前に絵本で見たかぐや姫だった。
かぐや姫は目の色を変えて立候補した穂月。劇に恥ずかしがる児童もいる中、沙耶と悠里も率先して台詞のある役についてくれた。
その沙耶が早速お爺さん役で登場する。
「たけがひかっているのです」
紙で手作りした小道具の鎌で竹を切るふりをする。
それが合図となって、黒い布で全身を隠しながらやはり手作りの竹を持っていた穂月が姿を現す。
それぞれの衣装は各自が自宅で用意した、役に合っていそうな服だ。
「かぐやひめというなまえにします」
場面は次の日に移る。竹役や黄金役の児童を相手に、お爺さんがお金持ちになるまでを沙耶が演じる。
3ヵ月が経過したとナレーションが流れ、美しく成長した――といっても衣装も何も変わってないが――かぐや姫こと穂月がステージの中央に立つ。
各クラスは10分以内で発表を終えないといけないため、かなり大急ぎで劇を進行しなければならない。
それでも穂月は、初めての演劇に興奮と感動を覚えっぱなしだった。
「おじいさん、わたしはつきにかえらなければなりません」
殺到した結婚の申し込みを、無理難題を吹っかけて回避したかぐや姫が十五夜に近づいた日にお爺さんへ告げた。
「わたしはつきのもので、8月のじゅうごやにつきからおむかえがきます」
「それはあんまりです」
お爺さんこと沙耶は十五夜に大勢の侍を雇ってかぐや姫を守ろうとする。
「せんせい、おねがいします」
「……任せて」
玩具屋で購入した脇差を腰に差して、多くの男児と一緒に現れたのは希だった。
観客席から一際大きな声が上がる。すぐに隣の理性的な人物に口を押さえられていたが。
そこに月の使者役の悠里が舞台袖からとことこと歩いてくる。
「むかえにきたの」
「そうはさせないです。せんせい、でばんです」
「くっ、体が動かない……」
刀を構えたまま硬直するシーンで、希が迫真の演技を見せる。
本音は面倒臭がっているはずなのに、穂月が楽しみにしていたのを知っているからか、練習時から真面目に付き合ってくれた親友に心の中でありがとうを言う。
「かぐやひめ、いっしょにかえるの」
希の脇を通り抜け、悠里が手を伸ばす。
その手を取ったあとで、穂月はお爺さん役の沙耶を見る。
「おじいさん、これはいのちのくすりです。どうかこれからもげんきにすごしてください」
感謝と別れを告げて、穂月は手を繋いだままの悠里とステージから退出する。
続いて希や他の侍役もいなくなると、最後のお爺さんの家の場面になる。
「かぐやひめがいないのに、ながいきしてもいみないです」
悲しそうに呟き、貰った命の薬を燃える火の役をしている児童に渡す。
そこで劇は終了し、最後に出演者一同がステージに集まって、見てくれた保護者は他のクラスの児童たちにお礼の挨拶をしたのだった。
*
「うんうん、穂月、輝いてたよ」
若干涙ぐみながら、愛娘が主演の劇を見終えた葉月はふーっと大きく息を吐いた。隣り合った席には実希子の他に好美もいる。ステージの近くでは穂月たちの担任をしてくれている柚も無事に終わって安堵の表情を見せていた。
「希の奴も、しっかり役を演じてやがったな」
「だからといって劇中に興奮しすぎないでほしいわね」
途中で実希子の口を塞いだ好美が、おもむろに肩を落とした。
「タハハ、悪い悪い。ついつい声が出ちまった。
しかしムーンリーフは子煩悩な親が多いよな」
劇の時間に合わせて一時的に店を閉めてまで、関係者一同が勢揃い中である。茉優や恭介もこの場にいて、自分たちもいつか子供ができたらなんて話をしている。
「それだけ皆、楽しみにしてたんだよ」
「特に葉月と和葉ママだな」
チラリと視線を横に向ければ、緊張からの解放感と感動から号泣しそうになっている母親の姿があった。
「緊張するとパパの手や服を強く握ったりするのは相変わらずなんだね」
どことなくホッとしている春道を見れば、穂月の演技中に和葉がどんな感じだったのか一目瞭然だ。
「それも夫婦の形の1つだろ。葉月も感極まったら旦那に抱き着いてもいいんだぞ。ただし首は絞めるなよ」
「実希子ちゃんじゃないんだからしないよ」
「ハッハッハ、子供の頃と違って簡単に言い返されちまうな」
実希子と一緒に笑ったあとで葉月は目を細める。
「時間が過ぎるのって早いよね。夜泣きばかりしてた穂月が、もう皆の前で劇を披露できるまでになったんだから」
「ああ、あっという間だ。今もアタシはたまにグラウンドで葉月たちとソフトボールをやってる夢を見るよ」
「ふふ、過去を懐かしむ回数が増えるのは年寄りになってきた証ね」
「違いない。そういう好美はどうなんだ?」
「もちろん葉月ちゃんや実希子ちゃんと一緒よ。もう立派なおばさんだしね」
どこかしんみりとした空気を打ち払うように、葉月はパンと手を叩いた。
「それじゃ、帰ろうか。穂月たちが帰ってきたら、美味しいおやつを食べさせてあげないといけないしね」
*
春に入学したばかりの1年生が問題もなく劇を終えたのが評価され、総合順位とは別に特別賞が穂月たちのクラスに与えられた。
学校がわざわざ作ってくれた賞状を両手に持たせてもらえ、黒板前の中央で皆との写真を撮ってもらえた穂月の笑顔は誰よりも輝いていた。
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