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葉月の子育て編
百花の祝い
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そろそろ春の入口も見えてこようかというこの日、全葉月の中で激震が走った。
きっかけはリビングで穂月をあやしながら見ていたテレビ番組。
子供のお祝い事を特集すると聞き、母親として目を通さねばとソファに座り直した矢先、司会者がとんでもないことを言い出した。
「生後100日目くらいに行うお祝いで、子供に初めて大人と同じ食べ物をあげることを百花の祝いと言うんですね。またはお食初とも言います」
そんなことは聞いたこともなければ、祝ってもらった記憶もない。稲妻に打たれたみたいに全身を硬直させていた葉月は、慌てて自分の母親を呼ぶ。
ムーンリーフが休みの今日は、朝から和葉は台所仕事に勤しんでいた。
「どうしたの、大きな声を出して。穂月が起きてしまうわよ」
「こ、これっ」
指差したテレビ画面の向こうでは、ラフな格好の中年男性アナウンサーがマイク片手に軽快な説明を続けている。
「たくさん食べて元気に育ってもらおうと子供用の食器を揃え、ご飯を一粒だけ食べさせたり、尾頭付きの鯛などを用意します」
「ですが乳児は当然歯が生え揃っておりませんから、鯛なんかは食べる真似だけで結構です。そして丈夫な歯が生えてくるように願いを込めて、お膳に綺麗な青い石を乗せたりもするんですね」
おねむ中の愛娘を抱いたまま、葉月は首だけをグリンと動かす。
「私、祝ってもらった覚えがないよ!」
「子供の頃の記憶なんて、残ってるわけないでしょ」
「えっ? じゃあやってもらったの?」
「してないわよ」
「ママぁ!」
なんてひと騒ぎを終えつつ、葉月はスヤスヤと眠り続ける愛娘の顔を見る。
はっきり覚えている出産の日から、娘の成長を頭の中で追っていき、
「もう100日過ぎてるっ!」
と新たな衝撃に頭を抱えそうになる。
「た、大変だよ。皆に教えなきゃ」
スマホで探すのはママ友同盟のLINEだ。
夫の和也は葉月と一緒に子育てをすると張り切っていたが、せっかくの休日なのでたまにはゆっくり眠っててと半ば強引に二度寝をさせている。
『実希子ちゃん、百花の祝いってやった?』
『うちの娘は希だぞ』
『そんなボケはいいから!』
漫才みたいな始まりから、平日なので絶賛授業中の柚を除く面々が徐々に参加し始める。友人イコール職場の同僚なので、時間があるのは皆一緒なのだ。
百花の祝いとは何だと実希子が尋ね、葉月がテレビ番組から得た知識を長文上等の精神でひたすら打ち込んでいく。
実希子は初耳で、尚も祝っていなかった。
そうなれば葉月の決断は一つである。
「皆で百花の祝いをしよう!」
*
どの家よりも広い高木家のリビングに大きな食卓を用意し、舞台は整った。
乳児が主役なのであまり遅くなりすぎない方がいいだろうと、葉月が指定した時刻は午後五時だった。
市役所に中途入社を果たし、今日も残業が決定しているという晋太は参加できなかったが、柚の父親に雇われている実希子の夫は娘のお祝いというのもあって駆け付けてくれた。
「お祝いは一つでも多い方がいいと思いました!」
独身の好美まで強引に巻き込んだ葉月は、高々と拳を掲げて力説する。
丁度、学校帰りの柚も遅れて来たところで、改めて百花の祝いの開催を告げる。
「七五三とかもそうだけど、ガキの頃って確かに結構お祝いがあったよな」
「あんまり記憶に残ってないけどね」
膝に希を抱っこしている実希子の回想に、半笑いの尚が同意する。
「幼児健忘症って言うらしいわよ」
こういう時に幅広い知識を披露してくれるのは大体好美か柚で、今回も葉月は知らなかった名称を教えてくれたのは柚だった。
「大体三歳以前の記憶は思い出せないらしくてね、乳幼児は海馬っていう記憶や空間学習能力を持つ脳の器官が完成してないからというのが理由っぽいわ」
「けど、たまに赤ちゃんの時の記憶がある奴もいるだろ」
実希子の指摘に柚は小さく肩を竦め、
「ほとんどが偽物だそうよ。成長してから過去の映像とかを見たりして、自分の記憶だと錯覚するんだって」
「本当だとしたら夢がないな」
「夢って……実希子ちゃんは赤ちゃんの頃の記憶が知りたいの?」
「そう言われると……気にはなるけど、絶対に知りたいとかはないな」
顎に手を当てた実希子は軽く首を傾げると、だったらと言葉を繋げる。
「お祝いしたとしても、子供は覚えてないってことか」
「だとしても、きっと嬉しい気持ちはなくならないよ」
途中で遮りそうな勢いで葉月が言うと、実希子も笑顔になる。
「もちろんだ」
「まさに葉月ちゃんの言う通りで、三歳くらいまでで脳は八割方できあがると言われてるわ。例え記憶を忘れるのだとしても、その時に覚えた感情によって脳細胞も発達するのよ」
「へえ、よく知ってんな、さすが好美」
「さすがなのは私じゃなくて、便利になった世の中よ」
いつの間にか検索していたらしく、好美はスマホの操作を続ける。
「一番古い記憶からスタートするわけではなくて、その前から……生後三か月なら一週間、四か月で二週間ほど記憶が保持されてるそうよ。三歳頃の記憶から、きちんと思い出になるケースが増えるということみたいね」
「無駄じゃなく、きちんと我が子のためになってくれるなら万々歳だな」
*
生後百日がとっくに過ぎていたとしても、やらないよりはやるべきだろうと葉月は考える。
相手が嫌がっているなら話は別だが、葉月の目の前にいる天使は眩しいほどの笑顔を見せてくれる。
「和也君、穂月がお米をはむはむしてるよっ」
「よし、撮影だ!」
絶妙な動きでスマホで記念の一枚を撮影する和也は、確認した出来栄えに満足そうだ。
「なんだか昔の春道さんを見てるみたいね」
「ハハハ、和葉の間違い――いえ、何でもないです」
ダイニングで遠巻きに見守る両親に若干不穏な空気が流れた以外は、とても楽しく皆がワイワイと騒ぐ。
「そういや離乳食はやり始めたけど、米って初めてだな」
「柔らかいし、一粒くらいなら大丈夫そうですね」
実希子夫妻も希と撮影し、子供が好きな柚がちょっかいを出すも、どこかふてぶてしさ漂う赤ん坊は微動だにしない。
今年で三歳になる朱華は大人に混じって楽しそうに笑い、母親の足に引っ付いては自分もお米を一粒貰っておおいにはしゃぐ。
百花のお祝い自体は簡単に終わるので、あとは大人たちの時間になる。
まだ三歳未満の朱華は夜になってくると可愛い寝顔を見せ、まだ乳児の穂月と希は言わずもがなだ。
働いている面々は明日も早いのであまり遅くまで楽しめないが、それでも十分な息抜きにはなる。
「朱華ちゃんや穂月ちゃんは良い反応してくれるけど、なんだか希ちゃんって冷めてるわよね」
「乳児の時点でそれはどうなんだって感じではあるけどな」
柚の感想に応じる実希子は、以前みたいに我が子の現状をあまり危ぶんではいなかった。
傍目には元気がないように見える希だが、きちんと食欲はあるし、スクスク育っているので問題ないと、この前の検診で医師に言ってもらえたらしい。
ちなみに穂月も順調そのものだが、夜泣きはまだ継続中だ。子供によっては二歳くらいまで続く場合もあると聞かされ、戦慄したのが記憶に新しい。
「智之君のとこは夜泣きがないんだってな」
「はい。覚悟していたので拍子抜けというか……」
「いや、それでよかったよ。
佐々木も体力はあるけど、まだお産の影響もあるだろうしな。うちの葉月も丈夫な方なんだが、夜泣きの影響もあってかなりキツそうだから」
なんて父親同士の会話も耳にし、うちのと和也に言われて葉月は妙に嬉しくなる。小さい頃に春道の何気ない言動でやたら和葉がはしゃいだり落ち込んだりしていたが、今になってこういうことだったのかと理解できるようになってきた。
「そういや葉月、そろそろ雛祭りだけど、なんか準備してるか?」
「……そうだ! あれ、私の子供の頃ってどうしてたっけ」
実希子に言われて気付いた葉月は、慌てて和葉に確認する。
「雛人形ならあるわよ。
……どこかに」
「物置だね。後で探してみるよ」
子供思いの和葉が大切なものを捨てるわけがないので、ほぼ確実に他のものと一緒に閉まっているはずだ。
前の家ならすぐに出てきたのかもしれないが、引っ越したのもあって物置にはそのまま保管されているのも多い。
「実希子ちゃんのとこも雛人形を出すんでしょ?」
「出すというより買うだな。我儘だけどさ、お下がりじゃなくて、希だけのために用意したいだろ」
鼻の下を擦りながら言う実希子の親心に葉月は熱いものを感じたが、他の三人はそうでもなかったようだ。
「好美ちゃん、今の話、どう思う?」
「ほぼ間違いなく自分のを壊したのね。でも葉月ちゃんのが残ってるっぽいもんだから言えなくて、とりあえず恰好をつけたのよ」
「さすが専門家の分析は違うわね」
からかい半分に尚が尋ね、真顔で好美が答え、心の底から柚が納得する。
洗練された一連の流れに、チラリと夫を見てから実希子が恨みがましそうにした。
「皆、真実だからってあんまり虐めたら駄目だよ。実希子ちゃんだって、一応は女性なんだからね」
「フォローするように見せかけて、とどめを刺すのはやめてくれえ」
頭を抱えながら、それでも実希子が笑う。
いつも仲間うちで誰かをからかったり、からかわれたり。
それでも仲良く過ごせるのが本当の友達なのだと葉月は実感する。
だから、と心の中で我が子に声をかける。
あなたも何があっても許し合える大切な友達を見つけてね、と。
きっかけはリビングで穂月をあやしながら見ていたテレビ番組。
子供のお祝い事を特集すると聞き、母親として目を通さねばとソファに座り直した矢先、司会者がとんでもないことを言い出した。
「生後100日目くらいに行うお祝いで、子供に初めて大人と同じ食べ物をあげることを百花の祝いと言うんですね。またはお食初とも言います」
そんなことは聞いたこともなければ、祝ってもらった記憶もない。稲妻に打たれたみたいに全身を硬直させていた葉月は、慌てて自分の母親を呼ぶ。
ムーンリーフが休みの今日は、朝から和葉は台所仕事に勤しんでいた。
「どうしたの、大きな声を出して。穂月が起きてしまうわよ」
「こ、これっ」
指差したテレビ画面の向こうでは、ラフな格好の中年男性アナウンサーがマイク片手に軽快な説明を続けている。
「たくさん食べて元気に育ってもらおうと子供用の食器を揃え、ご飯を一粒だけ食べさせたり、尾頭付きの鯛などを用意します」
「ですが乳児は当然歯が生え揃っておりませんから、鯛なんかは食べる真似だけで結構です。そして丈夫な歯が生えてくるように願いを込めて、お膳に綺麗な青い石を乗せたりもするんですね」
おねむ中の愛娘を抱いたまま、葉月は首だけをグリンと動かす。
「私、祝ってもらった覚えがないよ!」
「子供の頃の記憶なんて、残ってるわけないでしょ」
「えっ? じゃあやってもらったの?」
「してないわよ」
「ママぁ!」
なんてひと騒ぎを終えつつ、葉月はスヤスヤと眠り続ける愛娘の顔を見る。
はっきり覚えている出産の日から、娘の成長を頭の中で追っていき、
「もう100日過ぎてるっ!」
と新たな衝撃に頭を抱えそうになる。
「た、大変だよ。皆に教えなきゃ」
スマホで探すのはママ友同盟のLINEだ。
夫の和也は葉月と一緒に子育てをすると張り切っていたが、せっかくの休日なのでたまにはゆっくり眠っててと半ば強引に二度寝をさせている。
『実希子ちゃん、百花の祝いってやった?』
『うちの娘は希だぞ』
『そんなボケはいいから!』
漫才みたいな始まりから、平日なので絶賛授業中の柚を除く面々が徐々に参加し始める。友人イコール職場の同僚なので、時間があるのは皆一緒なのだ。
百花の祝いとは何だと実希子が尋ね、葉月がテレビ番組から得た知識を長文上等の精神でひたすら打ち込んでいく。
実希子は初耳で、尚も祝っていなかった。
そうなれば葉月の決断は一つである。
「皆で百花の祝いをしよう!」
*
どの家よりも広い高木家のリビングに大きな食卓を用意し、舞台は整った。
乳児が主役なのであまり遅くなりすぎない方がいいだろうと、葉月が指定した時刻は午後五時だった。
市役所に中途入社を果たし、今日も残業が決定しているという晋太は参加できなかったが、柚の父親に雇われている実希子の夫は娘のお祝いというのもあって駆け付けてくれた。
「お祝いは一つでも多い方がいいと思いました!」
独身の好美まで強引に巻き込んだ葉月は、高々と拳を掲げて力説する。
丁度、学校帰りの柚も遅れて来たところで、改めて百花の祝いの開催を告げる。
「七五三とかもそうだけど、ガキの頃って確かに結構お祝いがあったよな」
「あんまり記憶に残ってないけどね」
膝に希を抱っこしている実希子の回想に、半笑いの尚が同意する。
「幼児健忘症って言うらしいわよ」
こういう時に幅広い知識を披露してくれるのは大体好美か柚で、今回も葉月は知らなかった名称を教えてくれたのは柚だった。
「大体三歳以前の記憶は思い出せないらしくてね、乳幼児は海馬っていう記憶や空間学習能力を持つ脳の器官が完成してないからというのが理由っぽいわ」
「けど、たまに赤ちゃんの時の記憶がある奴もいるだろ」
実希子の指摘に柚は小さく肩を竦め、
「ほとんどが偽物だそうよ。成長してから過去の映像とかを見たりして、自分の記憶だと錯覚するんだって」
「本当だとしたら夢がないな」
「夢って……実希子ちゃんは赤ちゃんの頃の記憶が知りたいの?」
「そう言われると……気にはなるけど、絶対に知りたいとかはないな」
顎に手を当てた実希子は軽く首を傾げると、だったらと言葉を繋げる。
「お祝いしたとしても、子供は覚えてないってことか」
「だとしても、きっと嬉しい気持ちはなくならないよ」
途中で遮りそうな勢いで葉月が言うと、実希子も笑顔になる。
「もちろんだ」
「まさに葉月ちゃんの言う通りで、三歳くらいまでで脳は八割方できあがると言われてるわ。例え記憶を忘れるのだとしても、その時に覚えた感情によって脳細胞も発達するのよ」
「へえ、よく知ってんな、さすが好美」
「さすがなのは私じゃなくて、便利になった世の中よ」
いつの間にか検索していたらしく、好美はスマホの操作を続ける。
「一番古い記憶からスタートするわけではなくて、その前から……生後三か月なら一週間、四か月で二週間ほど記憶が保持されてるそうよ。三歳頃の記憶から、きちんと思い出になるケースが増えるということみたいね」
「無駄じゃなく、きちんと我が子のためになってくれるなら万々歳だな」
*
生後百日がとっくに過ぎていたとしても、やらないよりはやるべきだろうと葉月は考える。
相手が嫌がっているなら話は別だが、葉月の目の前にいる天使は眩しいほどの笑顔を見せてくれる。
「和也君、穂月がお米をはむはむしてるよっ」
「よし、撮影だ!」
絶妙な動きでスマホで記念の一枚を撮影する和也は、確認した出来栄えに満足そうだ。
「なんだか昔の春道さんを見てるみたいね」
「ハハハ、和葉の間違い――いえ、何でもないです」
ダイニングで遠巻きに見守る両親に若干不穏な空気が流れた以外は、とても楽しく皆がワイワイと騒ぐ。
「そういや離乳食はやり始めたけど、米って初めてだな」
「柔らかいし、一粒くらいなら大丈夫そうですね」
実希子夫妻も希と撮影し、子供が好きな柚がちょっかいを出すも、どこかふてぶてしさ漂う赤ん坊は微動だにしない。
今年で三歳になる朱華は大人に混じって楽しそうに笑い、母親の足に引っ付いては自分もお米を一粒貰っておおいにはしゃぐ。
百花のお祝い自体は簡単に終わるので、あとは大人たちの時間になる。
まだ三歳未満の朱華は夜になってくると可愛い寝顔を見せ、まだ乳児の穂月と希は言わずもがなだ。
働いている面々は明日も早いのであまり遅くまで楽しめないが、それでも十分な息抜きにはなる。
「朱華ちゃんや穂月ちゃんは良い反応してくれるけど、なんだか希ちゃんって冷めてるわよね」
「乳児の時点でそれはどうなんだって感じではあるけどな」
柚の感想に応じる実希子は、以前みたいに我が子の現状をあまり危ぶんではいなかった。
傍目には元気がないように見える希だが、きちんと食欲はあるし、スクスク育っているので問題ないと、この前の検診で医師に言ってもらえたらしい。
ちなみに穂月も順調そのものだが、夜泣きはまだ継続中だ。子供によっては二歳くらいまで続く場合もあると聞かされ、戦慄したのが記憶に新しい。
「智之君のとこは夜泣きがないんだってな」
「はい。覚悟していたので拍子抜けというか……」
「いや、それでよかったよ。
佐々木も体力はあるけど、まだお産の影響もあるだろうしな。うちの葉月も丈夫な方なんだが、夜泣きの影響もあってかなりキツそうだから」
なんて父親同士の会話も耳にし、うちのと和也に言われて葉月は妙に嬉しくなる。小さい頃に春道の何気ない言動でやたら和葉がはしゃいだり落ち込んだりしていたが、今になってこういうことだったのかと理解できるようになってきた。
「そういや葉月、そろそろ雛祭りだけど、なんか準備してるか?」
「……そうだ! あれ、私の子供の頃ってどうしてたっけ」
実希子に言われて気付いた葉月は、慌てて和葉に確認する。
「雛人形ならあるわよ。
……どこかに」
「物置だね。後で探してみるよ」
子供思いの和葉が大切なものを捨てるわけがないので、ほぼ確実に他のものと一緒に閉まっているはずだ。
前の家ならすぐに出てきたのかもしれないが、引っ越したのもあって物置にはそのまま保管されているのも多い。
「実希子ちゃんのとこも雛人形を出すんでしょ?」
「出すというより買うだな。我儘だけどさ、お下がりじゃなくて、希だけのために用意したいだろ」
鼻の下を擦りながら言う実希子の親心に葉月は熱いものを感じたが、他の三人はそうでもなかったようだ。
「好美ちゃん、今の話、どう思う?」
「ほぼ間違いなく自分のを壊したのね。でも葉月ちゃんのが残ってるっぽいもんだから言えなくて、とりあえず恰好をつけたのよ」
「さすが専門家の分析は違うわね」
からかい半分に尚が尋ね、真顔で好美が答え、心の底から柚が納得する。
洗練された一連の流れに、チラリと夫を見てから実希子が恨みがましそうにした。
「皆、真実だからってあんまり虐めたら駄目だよ。実希子ちゃんだって、一応は女性なんだからね」
「フォローするように見せかけて、とどめを刺すのはやめてくれえ」
頭を抱えながら、それでも実希子が笑う。
いつも仲間うちで誰かをからかったり、からかわれたり。
それでも仲良く過ごせるのが本当の友達なのだと葉月は実感する。
だから、と心の中で我が子に声をかける。
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