10 / 32
第10話 必要以上に愛でるのはやめてほしいのです
しおりを挟む
自分の名前が出たことで、注目されていると理解したのか、ナナがここぞとばかりに胸を張る。
「ナナはどらごんなのです。えっへん」
ナナの頭の上にあるデフォルメされたドラゴンの顔も、どことなく自慢げに見える。
住民たちはナナに驚いてはいるが、ドラゴンというのはやはり信じない。倒した盗賊同様に、ナナが魔法を使ったと考えているみたいだった。
ドラゴンだと賞賛されないことに不満でも覚えたのか、むーっと拗ねるようにナナが唇を尖らせる。
さすがに無害な一般市民に炎を吐いたりはしないだろうと、眺めているカイルの側に、心配そうなサレッタがやってくる。
「ナナちゃんに助けられちゃったね」
手には回復用のポーションを持っている。
無事な右手で受け取ったカイルは、すぐに小瓶に入っていた青色の中身を飲み干す。
空になったポーションの瓶をサレッタに渡したあと、ふうと息を大きく吐いた。
「盗賊のリーダーもろとも吹き飛ばされたが、助けられたのは事実だな。本当に不思議な女の子だよ」
「どらごんらしいからね。あ、ドラゴンじゃないわよ。間違えたら、またナナちゃん怒るからね」
「俺にはその微妙な差がわからないけどな。ま、とりあえずは全員生きててよかったよ」
もう一度安堵の息をついたところで、ナナがとことことサレッタのところへ歩いてくる。
「無事だったのです? 遊んでると思ったので、混ざろうかどうか考えていたのです。助けるのが遅れてごめんなさいなのです」
ぺこりと頭を下げたナナに案の定、可愛いを連呼するサレッタが抱きつく。頬擦り攻撃のおまけつきだ。
「ほおお……! こ、これだけは慣れないのです。必要以上に愛でるのはやめてほしいのです」
盗賊の脅しにも怯まなかったナナが、狂気の光を瞳に宿したサレッタには手も足も出せずに恐怖から硬直する。微笑ましいような、なんとも不思議な光景だった。
「やあ。君たちのおかげで助かったよ」
激戦を終えたからか、やたらとフレンドリーな感じで、共に戦った衛兵がカイルに声をかけてきた。
倒れた三人の盗賊の捕縛をすでに終えており、簡単には逃げられないように近くの木に繋いでいる。仲間の衛兵が戻ってきたら、町にある詰所にでも連行するつもりなのだろう。
「助かったのはこちらの方ですよ。俺たちだけなら、時間稼ぎも出来ずに殺されてたでしょうしね」
「だとしても、私ひとりではこの場を守れなかったよ。ありがとう」
飲んだポーションのおかげで回復したカイルは立ち上がると、お礼を言ってくれた衛兵と握手をする。
互いに無事でよかったと言い合ったところで、他の衛兵が現場にやってきた。元からいたひとりだけでなく、他にも屈強そうな者を連れている。
「無事だったか?」
「ああ。ここにいる冒険者カイルのパーティのおかげでね」
「そうか。こっちも冒険者に協力してもらって賊はすべて捕らえたが、陽動だったと判明して来たんだ。間に合わなかったみたいだがね」
町の出入口を守っていたもうひとりの衛兵も、カイルに感謝の握手を求めてくる。拒否する理由はないので素直に応じる。
「盗賊の親玉を捕らえられたのは、君の功績みたいだね。朝になったら、冒険者ギルドに向かってくれ。国から賞金が出る」
「ということは、盗賊の親玉に賞金がかかってたんですか?」
カイルの問いかけに答える前に、衛兵はちらりと木に縛り付けられている三人の盗賊を見た。リーダーは気絶したままだが、他の二人は意識を保っている。
そこに衛兵の仲間が向かい、三人の目元を露わにして素顔を確認し、カイルの前に立つ衛兵を見て頷く。
「どうやら親玉だけじゃなく、あそこにいる三人ともに賞金がかかっていたようだ。最近ここらで悪さをしていた奴らみたいでね。恐らく賞金をかけられたのをきっかけに、新たな盗賊団を結成したんだろう」
「結成された盗賊団が予想よりも強大になったから、調子に乗って今回の計画を実行したってところですかね。俺には理解できませんが」
「ははは。盗賊の思考を理解できたら、こちらの仕事が増えてしまう。推測でしかないが、冒険者カイルの指摘どおりだろうね。連中の誤算は、町の出入口で君たちがテントを張っていたことだな。手薄になった町の出入口から堂々と突破するつもりが、この場にいたのは衛兵だけではなかったのだからね」
付け加えはしなかったが、さらにいうとナナという自らをどらごんと呼称する不思議少女がいたこともだろう。実際にカイルとサレッタは何の役にも立てなかった。ナナがいたからこそ、賞賛される側に回れた。
「礼なら、あそこにいるドラゴンに言ってやってください。彼女のおかげでもあるんで」
「君の娘さんか。小さいのに旅に同行させてるのかと最初は疑問に思ったが、盗賊のリーダーを倒した場面を遠目でも目撃できたおかげで納得したよ。幼いながらも魔法を使えるんだな」
どうやって火を吐いているのかはカイルにも不明なので、曖昧に笑って誤魔化しておく。ナナに聞いても、きっとどらごんだからなのですで終わるだろう。
そのナナはといえば、なすすべもなくサレッタに頬擦りをされたままだ。仕草や姿は可愛らしい少女なので、町の住民からも微笑ましげに見守られている。
本人はあくまでもどらごんだと言い張るが、恐ろしさよりも可愛らしさを連想させるドラゴンの顔部分も相まって、やはりペンギンのようにしか見えない。丁度、ナナの頭の上に兜みたいにドラゴンの顔が乗っているような感じなので、余計にそういった印象が強くなる。
ある程度の事情説明を終えたところで、衛兵の何人かが捕縛された盗賊の三人を詰所へと連行していく。町の出入口には、仲間が残っていた場合に備え、従来の二人から倍の四人に衛兵が増えた。
賞金を貰えるらしいが、冒険者ギルドを通さなければいけないので、カイルたちの文無しは変わらない。やはり今夜はテント生活になりそうだ。
衛兵に事情を説明して宿代を借りることはできそうだったが、カイルの提案はサレッタに却下された。理由は、ナナが誰よりテントで眠るのを楽しみにしているからだ。
子供ができたら、サレッタは間違いなく親バカになるな。苦笑こそしたものの、カイルもテントで休むのを承諾した。今夜のヒーロー、いやヒロインは間違いなくナナだ。ならば彼女の希望どおりにしてあげようと思った。
夏の夜とはいえ、少し肌寒い。野次馬の住民がいなくなり、再びシンとした空気が戻ってきた町の出入口ならなおさらだ。
大きな町で、遠方からやってくる人間も多いだけに、城壁みたいな立派なものは設置されていない。そのため、その気になればどこからでも入ってこられるが、他の町よりも衛兵を多く配置している。
カイルたちがテントを張っている場所の他にも、衛兵が二名ずつ見晴らしのいい場所に立っている。例の盗賊も衛兵を倒すのにこだわっていなければ、簡単に町を脱出できていたはずだ。
適当に集めた木々をテントの前で燃やす。いわゆる焚き火だ。火種はナナがいるので用意する必要はない。サレッタがお願いし、口を開いたナナが火を吐いた。
「ナナちゃんは、吐く火の量や強さを自由に調整できるの?」
火を吐けるのに、感動の面持ちで焚き火を眺めていたナナが「もちろんなのです」と自慢げに答えた。
「どのくらい火を残すかもできるのです。ナナは恐怖のどらごんなので、人間を消し炭にもできるのです」
そう言ったナナが、悪戯っぽい目でカイルを見た。盗賊と一緒に燃やさなかったのを、ありがたく思えとでも言いたいのかもしれない。
視線を受け取ったカイルは、なんとなしに質問を投げかけてみる。
「そのわりには盗賊をひとりも殺さなかったな。恐怖のドラゴンなら、どうして命を助けたんだ?」
「そ、それは……あ! またドラゴンっていったのです。ナナはどらごんなのです。いい加減にしないと消し炭にしてしまうのです!」
「そうか。お前に助けられた命だからな。好きにしろよ。ただし、苦しまないように一瞬で燃え尽きるようにしてくれ。頼む」
「え……? い、いや、あの……ほ、本気でするのです。ナナは恐怖のどらごんなのです!」
「もちろんだ。覚悟はできてる。ただ、さっきの頼みは聞いてくれ」
どうぞと言い張るカイルを前に、ナナが面白いくらいに落ち着きをなくしていく。変わった力を所持しているみたいだが、やはり根はいい子なのだろう。少しだけ安心する。
「カイル。ナナちゃんを虐めちゃ駄目でしょ」
「ははは。サレッタにはバレてたか」
カイルとサレッタの会話に、ナナは「え?」という感じで首を傾げた。
「ナナちゃんは優しいどらごんだから、人間を簡単に殺さないということをカイルは知ってたのよ。だから、あんな風に言ったの」
サレッタの説明は半分以上正しい。本当に人間を恐怖させるドラゴンであれば、偶然に知り合ったとはいえ、カイルたちの窮地を救おうと考えるはずがない。同時に、自分に歯向かった敵を許すとも思えなかった。
あれだけの能力があるのなら、簡単に盗賊たちの命を奪えたのに、ナナはしなかった。単純に考えれば、最初から殺すつもりがなかったことになる。
頬を膨らませたナナに軽い火の玉攻撃はされるかもしれない。からかった代償はしっかり受け止めようと心の準備をしたカイルだったが、いつまでも覚悟した衝撃には襲われなかった。
どうしたのだろうとナナを見ると、彼女は焚き火の前で悲しげに俯いていた。
「虐めは……駄目なのです。仲間外れは……悲しいのです」
うっかりこぼれたといった感じの呟きで、これまでナナがどのような人生を送ってきたのかを少しだけ知ったような気がした。
どうやって慰めたり、励ましたりすればいいのかわからず、戸惑い気味のサレッタに見つめられる中、カイルはおもいきり頭を下げた。
「ナナはどらごんなのです。えっへん」
ナナの頭の上にあるデフォルメされたドラゴンの顔も、どことなく自慢げに見える。
住民たちはナナに驚いてはいるが、ドラゴンというのはやはり信じない。倒した盗賊同様に、ナナが魔法を使ったと考えているみたいだった。
ドラゴンだと賞賛されないことに不満でも覚えたのか、むーっと拗ねるようにナナが唇を尖らせる。
さすがに無害な一般市民に炎を吐いたりはしないだろうと、眺めているカイルの側に、心配そうなサレッタがやってくる。
「ナナちゃんに助けられちゃったね」
手には回復用のポーションを持っている。
無事な右手で受け取ったカイルは、すぐに小瓶に入っていた青色の中身を飲み干す。
空になったポーションの瓶をサレッタに渡したあと、ふうと息を大きく吐いた。
「盗賊のリーダーもろとも吹き飛ばされたが、助けられたのは事実だな。本当に不思議な女の子だよ」
「どらごんらしいからね。あ、ドラゴンじゃないわよ。間違えたら、またナナちゃん怒るからね」
「俺にはその微妙な差がわからないけどな。ま、とりあえずは全員生きててよかったよ」
もう一度安堵の息をついたところで、ナナがとことことサレッタのところへ歩いてくる。
「無事だったのです? 遊んでると思ったので、混ざろうかどうか考えていたのです。助けるのが遅れてごめんなさいなのです」
ぺこりと頭を下げたナナに案の定、可愛いを連呼するサレッタが抱きつく。頬擦り攻撃のおまけつきだ。
「ほおお……! こ、これだけは慣れないのです。必要以上に愛でるのはやめてほしいのです」
盗賊の脅しにも怯まなかったナナが、狂気の光を瞳に宿したサレッタには手も足も出せずに恐怖から硬直する。微笑ましいような、なんとも不思議な光景だった。
「やあ。君たちのおかげで助かったよ」
激戦を終えたからか、やたらとフレンドリーな感じで、共に戦った衛兵がカイルに声をかけてきた。
倒れた三人の盗賊の捕縛をすでに終えており、簡単には逃げられないように近くの木に繋いでいる。仲間の衛兵が戻ってきたら、町にある詰所にでも連行するつもりなのだろう。
「助かったのはこちらの方ですよ。俺たちだけなら、時間稼ぎも出来ずに殺されてたでしょうしね」
「だとしても、私ひとりではこの場を守れなかったよ。ありがとう」
飲んだポーションのおかげで回復したカイルは立ち上がると、お礼を言ってくれた衛兵と握手をする。
互いに無事でよかったと言い合ったところで、他の衛兵が現場にやってきた。元からいたひとりだけでなく、他にも屈強そうな者を連れている。
「無事だったか?」
「ああ。ここにいる冒険者カイルのパーティのおかげでね」
「そうか。こっちも冒険者に協力してもらって賊はすべて捕らえたが、陽動だったと判明して来たんだ。間に合わなかったみたいだがね」
町の出入口を守っていたもうひとりの衛兵も、カイルに感謝の握手を求めてくる。拒否する理由はないので素直に応じる。
「盗賊の親玉を捕らえられたのは、君の功績みたいだね。朝になったら、冒険者ギルドに向かってくれ。国から賞金が出る」
「ということは、盗賊の親玉に賞金がかかってたんですか?」
カイルの問いかけに答える前に、衛兵はちらりと木に縛り付けられている三人の盗賊を見た。リーダーは気絶したままだが、他の二人は意識を保っている。
そこに衛兵の仲間が向かい、三人の目元を露わにして素顔を確認し、カイルの前に立つ衛兵を見て頷く。
「どうやら親玉だけじゃなく、あそこにいる三人ともに賞金がかかっていたようだ。最近ここらで悪さをしていた奴らみたいでね。恐らく賞金をかけられたのをきっかけに、新たな盗賊団を結成したんだろう」
「結成された盗賊団が予想よりも強大になったから、調子に乗って今回の計画を実行したってところですかね。俺には理解できませんが」
「ははは。盗賊の思考を理解できたら、こちらの仕事が増えてしまう。推測でしかないが、冒険者カイルの指摘どおりだろうね。連中の誤算は、町の出入口で君たちがテントを張っていたことだな。手薄になった町の出入口から堂々と突破するつもりが、この場にいたのは衛兵だけではなかったのだからね」
付け加えはしなかったが、さらにいうとナナという自らをどらごんと呼称する不思議少女がいたこともだろう。実際にカイルとサレッタは何の役にも立てなかった。ナナがいたからこそ、賞賛される側に回れた。
「礼なら、あそこにいるドラゴンに言ってやってください。彼女のおかげでもあるんで」
「君の娘さんか。小さいのに旅に同行させてるのかと最初は疑問に思ったが、盗賊のリーダーを倒した場面を遠目でも目撃できたおかげで納得したよ。幼いながらも魔法を使えるんだな」
どうやって火を吐いているのかはカイルにも不明なので、曖昧に笑って誤魔化しておく。ナナに聞いても、きっとどらごんだからなのですで終わるだろう。
そのナナはといえば、なすすべもなくサレッタに頬擦りをされたままだ。仕草や姿は可愛らしい少女なので、町の住民からも微笑ましげに見守られている。
本人はあくまでもどらごんだと言い張るが、恐ろしさよりも可愛らしさを連想させるドラゴンの顔部分も相まって、やはりペンギンのようにしか見えない。丁度、ナナの頭の上に兜みたいにドラゴンの顔が乗っているような感じなので、余計にそういった印象が強くなる。
ある程度の事情説明を終えたところで、衛兵の何人かが捕縛された盗賊の三人を詰所へと連行していく。町の出入口には、仲間が残っていた場合に備え、従来の二人から倍の四人に衛兵が増えた。
賞金を貰えるらしいが、冒険者ギルドを通さなければいけないので、カイルたちの文無しは変わらない。やはり今夜はテント生活になりそうだ。
衛兵に事情を説明して宿代を借りることはできそうだったが、カイルの提案はサレッタに却下された。理由は、ナナが誰よりテントで眠るのを楽しみにしているからだ。
子供ができたら、サレッタは間違いなく親バカになるな。苦笑こそしたものの、カイルもテントで休むのを承諾した。今夜のヒーロー、いやヒロインは間違いなくナナだ。ならば彼女の希望どおりにしてあげようと思った。
夏の夜とはいえ、少し肌寒い。野次馬の住民がいなくなり、再びシンとした空気が戻ってきた町の出入口ならなおさらだ。
大きな町で、遠方からやってくる人間も多いだけに、城壁みたいな立派なものは設置されていない。そのため、その気になればどこからでも入ってこられるが、他の町よりも衛兵を多く配置している。
カイルたちがテントを張っている場所の他にも、衛兵が二名ずつ見晴らしのいい場所に立っている。例の盗賊も衛兵を倒すのにこだわっていなければ、簡単に町を脱出できていたはずだ。
適当に集めた木々をテントの前で燃やす。いわゆる焚き火だ。火種はナナがいるので用意する必要はない。サレッタがお願いし、口を開いたナナが火を吐いた。
「ナナちゃんは、吐く火の量や強さを自由に調整できるの?」
火を吐けるのに、感動の面持ちで焚き火を眺めていたナナが「もちろんなのです」と自慢げに答えた。
「どのくらい火を残すかもできるのです。ナナは恐怖のどらごんなので、人間を消し炭にもできるのです」
そう言ったナナが、悪戯っぽい目でカイルを見た。盗賊と一緒に燃やさなかったのを、ありがたく思えとでも言いたいのかもしれない。
視線を受け取ったカイルは、なんとなしに質問を投げかけてみる。
「そのわりには盗賊をひとりも殺さなかったな。恐怖のドラゴンなら、どうして命を助けたんだ?」
「そ、それは……あ! またドラゴンっていったのです。ナナはどらごんなのです。いい加減にしないと消し炭にしてしまうのです!」
「そうか。お前に助けられた命だからな。好きにしろよ。ただし、苦しまないように一瞬で燃え尽きるようにしてくれ。頼む」
「え……? い、いや、あの……ほ、本気でするのです。ナナは恐怖のどらごんなのです!」
「もちろんだ。覚悟はできてる。ただ、さっきの頼みは聞いてくれ」
どうぞと言い張るカイルを前に、ナナが面白いくらいに落ち着きをなくしていく。変わった力を所持しているみたいだが、やはり根はいい子なのだろう。少しだけ安心する。
「カイル。ナナちゃんを虐めちゃ駄目でしょ」
「ははは。サレッタにはバレてたか」
カイルとサレッタの会話に、ナナは「え?」という感じで首を傾げた。
「ナナちゃんは優しいどらごんだから、人間を簡単に殺さないということをカイルは知ってたのよ。だから、あんな風に言ったの」
サレッタの説明は半分以上正しい。本当に人間を恐怖させるドラゴンであれば、偶然に知り合ったとはいえ、カイルたちの窮地を救おうと考えるはずがない。同時に、自分に歯向かった敵を許すとも思えなかった。
あれだけの能力があるのなら、簡単に盗賊たちの命を奪えたのに、ナナはしなかった。単純に考えれば、最初から殺すつもりがなかったことになる。
頬を膨らませたナナに軽い火の玉攻撃はされるかもしれない。からかった代償はしっかり受け止めようと心の準備をしたカイルだったが、いつまでも覚悟した衝撃には襲われなかった。
どうしたのだろうとナナを見ると、彼女は焚き火の前で悲しげに俯いていた。
「虐めは……駄目なのです。仲間外れは……悲しいのです」
うっかりこぼれたといった感じの呟きで、これまでナナがどのような人生を送ってきたのかを少しだけ知ったような気がした。
どうやって慰めたり、励ましたりすればいいのかわからず、戸惑い気味のサレッタに見つめられる中、カイルはおもいきり頭を下げた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる