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第44話 オーガの村(8)
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早速オーガ族の鍛錬を開始した。短期間で軍隊として動けるようにしなければならない。
第一線で戦える者は約140人だ。これには女も含まれている。そして、子供や戦えない女などが80人。ちなみに年寄りは存在しない。
「おい、シュテン、なんで年寄りが一人もいないんだ?まさか捨ててるのか?」
こういった戦闘民族だと、戦えなくなった年寄りは処分されているのかと思ったのだ。日本にもあった姥捨て山というヤツだ。
「いえ、オーガ族は120歳くらいまでは第一線で戦えます。そこから急速に衰えて数年で死ぬのです」
前族長は50歳くらいに見えたが、実際には110歳だったらしい。その娘のソーカは17歳くらいに見えるが実際には21歳で、人間の20歳くらいから50歳くらいが、オーガの25歳から120歳に相当するとのことだ。ずいぶん年を取ってから子供を作ったものだ。
そして、エーリカは幼く見えるがあれでも15歳、シュテンは35歳との事だった。
“若い期間が長いのはいいことだな。労働力としても戦力としても長く使える。それと、エーリカも15歳なんだったら、あと1年くらいで”大丈夫“なんじゃね?”
「あ、信長くん、今、悪いこと考えたでしょ」
ガラシャに突っ込まれた。どうやら顔に出ていたようだ。
蘭丸・坊丸・力丸の下にオーガ達を振り分けて、集団行動と剣術の特訓を行う。午前中は行進や行軍の教練で規律ある行動が出来るようにする。そして午後からは剣術の訓練だ。
ガラシャは、治癒魔法の使えるオーガ族に魔法の指導を実施した。治癒魔法は、人体の内部構造とその生理学的反応をイメージすることが重要であることを教えている。
「おい、ケートゥ。魔素の吸収が出来なくなったんだろ?どれくらいの期間で魔物が大量発生するんだ?」
『さあのぉ。正確にはわからんが、長くて半年くらいじゃろう。半年後には、先日のようなことが日常的になるぞ』
「なるほど。じゃあ、4ヶ月を目処に訓練を終了してアンジュン辺境伯領に攻め込むとするか」
戦闘できない子供や女達は、倒した魔物の解体作業と保存食への加工を行った。今までも干し肉にしていたようだが、ここは燻製を作ることにする。
「丁度いい小屋があるな。この小屋で燻製を作るぞ」
「“クンセイ”ですか?」
魔物の肉を適当な大きさに切り分けて岩塩を塗り込む。そして一日乾燥させた後に小屋に吊して下から燻すのだ。
「肉が、こんなに旨くなるとは・・・」
「今回は塩だけだが、ハーブとか胡椒とかを塗り込んだらまた違った味を楽しめるぞ」
オーガ達には大好評だった。塩分の取り過ぎで高血圧にならなければ良いのだが。
オーガの村には畑もあったが、麦などの穀類は作っていないらしい。大根やジャガイモのような根菜類と、大豆や空豆といった豆類ばかりだ。
「まあ、保存食にはなるか」
倒した魔物から、大量の魔石も取り出すことが出来た。魔力をあまり持たないオーガ族では、それほど魔石の活用が出来ないため、ほとんどドワーフの国に持って行き、鉄製の道具や武器と交換していたそうだ。
「少しの魔力で使うことのできる“光魔石”は使えますが、爆裂魔石や風魔石はオーガ族の魔力では発動しません」
鉄の道具が壊れたりした場合も、ドワーフの国に持って行って修理をしてもらうらしい。その対価として魔石を使うそうだ。
「なるほど。魔石がある程度通貨の役目も果たしているのか」
しかし、この世界では鉄などの金属はとにかく貴重らしい。金属の精錬はドワーフの国がほぼ独占していて、他の国は魔石や食料、衣料品などと交換してもらっている。ごく少量、人族のイーシ王国でも生産されているらしいのだが、実際の所は定かでないとのことだ。
それと、やはりというか当然というかオーガ族は一部の者しか文字が読めなかった。その為、読めるオーガを教師にして文字を徹底的に覚えさせた。教科書はエルフの館から持ってきた本がたくさんあったので、それをなんとか読めることが目標だ。
こうして、四ヶ月の月日が流れた。
「シュテン、かなり強くなったな」
「いえ、蘭丸様、まだまだでございます」
信長の前では、この三ヶ月間の成果を確認するべく、蘭丸達とオーガ達との試合が行われていた。
木刀ではすぐに折れてしまうため、刃引きをした模造刀を使っている。一応、急所は金属プレートで防御しているが、まともに入れば重傷は必至だ。
蘭丸とシュテンは何合か切り結ぶ。そして、蘭丸の鋭い突きをなんとか躱したところに、シュテンは下からの蹴りを受けてしまう。そしてシュテンの持っていた模造刀は宙を舞った。しかし、試合は終わらない。
刀を失ったシュテンは蘭丸の腰をめがけて激しいタックルをする。そして、そのまま倒してマウントをとろうとするが、その刹那、体を入れ替えて蘭丸はシュテンの左腕をとった。そしてすかさず横十字固めに入る。
シュテンの身長は190センチ、蘭丸の身長は175センチと体格差はあるが、関節をきっちり決められてしまってはどうしようも出来なかった。もしこれが実戦なら、片腕をへし折られてしまったとしても戦を続けるだろう。しかし、訓練の試合において勝敗は明確であった。
「負けました」
オーガ族最強のシュテンでもまだまだ蘭丸に及ばないが、この四ヶ月間の技術向上はめざましいものがあった。今まではただ力任せに剣を振り下ろしたり蹴ったり殴ったりするだけだったのだが、蘭丸達の指導によって剣術や体術を身につけることが出来た。さすが戦闘民族だけのことはある。
そして、信長達のもってきた魔導書の解析も進み、身体強化魔法はより強力に使えるようになった。しかし、どんなに頑張ってもオーガ族に攻撃魔法は使えないようだ。唯一、エーリカを除いて。
第一線で戦える者は約140人だ。これには女も含まれている。そして、子供や戦えない女などが80人。ちなみに年寄りは存在しない。
「おい、シュテン、なんで年寄りが一人もいないんだ?まさか捨ててるのか?」
こういった戦闘民族だと、戦えなくなった年寄りは処分されているのかと思ったのだ。日本にもあった姥捨て山というヤツだ。
「いえ、オーガ族は120歳くらいまでは第一線で戦えます。そこから急速に衰えて数年で死ぬのです」
前族長は50歳くらいに見えたが、実際には110歳だったらしい。その娘のソーカは17歳くらいに見えるが実際には21歳で、人間の20歳くらいから50歳くらいが、オーガの25歳から120歳に相当するとのことだ。ずいぶん年を取ってから子供を作ったものだ。
そして、エーリカは幼く見えるがあれでも15歳、シュテンは35歳との事だった。
“若い期間が長いのはいいことだな。労働力としても戦力としても長く使える。それと、エーリカも15歳なんだったら、あと1年くらいで”大丈夫“なんじゃね?”
「あ、信長くん、今、悪いこと考えたでしょ」
ガラシャに突っ込まれた。どうやら顔に出ていたようだ。
蘭丸・坊丸・力丸の下にオーガ達を振り分けて、集団行動と剣術の特訓を行う。午前中は行進や行軍の教練で規律ある行動が出来るようにする。そして午後からは剣術の訓練だ。
ガラシャは、治癒魔法の使えるオーガ族に魔法の指導を実施した。治癒魔法は、人体の内部構造とその生理学的反応をイメージすることが重要であることを教えている。
「おい、ケートゥ。魔素の吸収が出来なくなったんだろ?どれくらいの期間で魔物が大量発生するんだ?」
『さあのぉ。正確にはわからんが、長くて半年くらいじゃろう。半年後には、先日のようなことが日常的になるぞ』
「なるほど。じゃあ、4ヶ月を目処に訓練を終了してアンジュン辺境伯領に攻め込むとするか」
戦闘できない子供や女達は、倒した魔物の解体作業と保存食への加工を行った。今までも干し肉にしていたようだが、ここは燻製を作ることにする。
「丁度いい小屋があるな。この小屋で燻製を作るぞ」
「“クンセイ”ですか?」
魔物の肉を適当な大きさに切り分けて岩塩を塗り込む。そして一日乾燥させた後に小屋に吊して下から燻すのだ。
「肉が、こんなに旨くなるとは・・・」
「今回は塩だけだが、ハーブとか胡椒とかを塗り込んだらまた違った味を楽しめるぞ」
オーガ達には大好評だった。塩分の取り過ぎで高血圧にならなければ良いのだが。
オーガの村には畑もあったが、麦などの穀類は作っていないらしい。大根やジャガイモのような根菜類と、大豆や空豆といった豆類ばかりだ。
「まあ、保存食にはなるか」
倒した魔物から、大量の魔石も取り出すことが出来た。魔力をあまり持たないオーガ族では、それほど魔石の活用が出来ないため、ほとんどドワーフの国に持って行き、鉄製の道具や武器と交換していたそうだ。
「少しの魔力で使うことのできる“光魔石”は使えますが、爆裂魔石や風魔石はオーガ族の魔力では発動しません」
鉄の道具が壊れたりした場合も、ドワーフの国に持って行って修理をしてもらうらしい。その対価として魔石を使うそうだ。
「なるほど。魔石がある程度通貨の役目も果たしているのか」
しかし、この世界では鉄などの金属はとにかく貴重らしい。金属の精錬はドワーフの国がほぼ独占していて、他の国は魔石や食料、衣料品などと交換してもらっている。ごく少量、人族のイーシ王国でも生産されているらしいのだが、実際の所は定かでないとのことだ。
それと、やはりというか当然というかオーガ族は一部の者しか文字が読めなかった。その為、読めるオーガを教師にして文字を徹底的に覚えさせた。教科書はエルフの館から持ってきた本がたくさんあったので、それをなんとか読めることが目標だ。
こうして、四ヶ月の月日が流れた。
「シュテン、かなり強くなったな」
「いえ、蘭丸様、まだまだでございます」
信長の前では、この三ヶ月間の成果を確認するべく、蘭丸達とオーガ達との試合が行われていた。
木刀ではすぐに折れてしまうため、刃引きをした模造刀を使っている。一応、急所は金属プレートで防御しているが、まともに入れば重傷は必至だ。
蘭丸とシュテンは何合か切り結ぶ。そして、蘭丸の鋭い突きをなんとか躱したところに、シュテンは下からの蹴りを受けてしまう。そしてシュテンの持っていた模造刀は宙を舞った。しかし、試合は終わらない。
刀を失ったシュテンは蘭丸の腰をめがけて激しいタックルをする。そして、そのまま倒してマウントをとろうとするが、その刹那、体を入れ替えて蘭丸はシュテンの左腕をとった。そしてすかさず横十字固めに入る。
シュテンの身長は190センチ、蘭丸の身長は175センチと体格差はあるが、関節をきっちり決められてしまってはどうしようも出来なかった。もしこれが実戦なら、片腕をへし折られてしまったとしても戦を続けるだろう。しかし、訓練の試合において勝敗は明確であった。
「負けました」
オーガ族最強のシュテンでもまだまだ蘭丸に及ばないが、この四ヶ月間の技術向上はめざましいものがあった。今まではただ力任せに剣を振り下ろしたり蹴ったり殴ったりするだけだったのだが、蘭丸達の指導によって剣術や体術を身につけることが出来た。さすが戦闘民族だけのことはある。
そして、信長達のもってきた魔導書の解析も進み、身体強化魔法はより強力に使えるようになった。しかし、どんなに頑張ってもオーガ族に攻撃魔法は使えないようだ。唯一、エーリカを除いて。
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