本能寺から始める異世界天下布武 ~転生した信長は第六天魔王になって異世界に君臨します~

朝日カヲル

文字の大きさ
上 下
45 / 61

第44話 オーガの村(8)

しおりを挟む
 早速オーガ族の鍛錬を開始した。短期間で軍隊として動けるようにしなければならない。

 第一線で戦える者は約140人だ。これには女も含まれている。そして、子供や戦えない女などが80人。ちなみに年寄りは存在しない。

「おい、シュテン、なんで年寄りが一人もいないんだ?まさか捨ててるのか?」

 こういった戦闘民族だと、戦えなくなった年寄りは処分されているのかと思ったのだ。日本にもあった姥捨て山というヤツだ。

「いえ、オーガ族は120歳くらいまでは第一線で戦えます。そこから急速に衰えて数年で死ぬのです」

 前族長は50歳くらいに見えたが、実際には110歳だったらしい。その娘のソーカは17歳くらいに見えるが実際には21歳で、人間の20歳くらいから50歳くらいが、オーガの25歳から120歳に相当するとのことだ。ずいぶん年を取ってから子供を作ったものだ。

 そして、エーリカは幼く見えるがあれでも15歳、シュテンは35歳との事だった。

 “若い期間が長いのはいいことだな。労働力としても戦力としても長く使える。それと、エーリカも15歳なんだったら、あと1年くらいで”大丈夫“なんじゃね?”

「あ、信長くん、今、悪いこと考えたでしょ」

 ガラシャに突っ込まれた。どうやら顔に出ていたようだ。

 蘭丸・坊丸・力丸の下にオーガ達を振り分けて、集団行動と剣術の特訓を行う。午前中は行進や行軍の教練で規律ある行動が出来るようにする。そして午後からは剣術の訓練だ。

 ガラシャは、治癒魔法の使えるオーガ族に魔法の指導を実施した。治癒魔法は、人体の内部構造とその生理学的反応をイメージすることが重要であることを教えている。

「おい、ケートゥ。魔素の吸収が出来なくなったんだろ?どれくらいの期間で魔物が大量発生するんだ?」

『さあのぉ。正確にはわからんが、長くて半年くらいじゃろう。半年後には、先日のようなことが日常的になるぞ』

「なるほど。じゃあ、4ヶ月を目処に訓練を終了してアンジュン辺境伯領に攻め込むとするか」

 戦闘できない子供や女達は、倒した魔物の解体作業と保存食への加工を行った。今までも干し肉にしていたようだが、ここは燻製を作ることにする。

「丁度いい小屋があるな。この小屋で燻製を作るぞ」

「“クンセイ”ですか?」

 魔物の肉を適当な大きさに切り分けて岩塩を塗り込む。そして一日乾燥させた後に小屋に吊して下から燻すのだ。

「肉が、こんなに旨くなるとは・・・」

「今回は塩だけだが、ハーブとか胡椒とかを塗り込んだらまた違った味を楽しめるぞ」

 オーガ達には大好評だった。塩分の取り過ぎで高血圧にならなければ良いのだが。

 オーガの村には畑もあったが、麦などの穀類は作っていないらしい。大根やジャガイモのような根菜類と、大豆や空豆といった豆類ばかりだ。

「まあ、保存食にはなるか」

 倒した魔物から、大量の魔石も取り出すことが出来た。魔力をあまり持たないオーガ族では、それほど魔石の活用が出来ないため、ほとんどドワーフの国に持って行き、鉄製の道具や武器と交換していたそうだ。

「少しの魔力で使うことのできる“光魔石”は使えますが、爆裂魔石や風魔石はオーガ族の魔力では発動しません」

 鉄の道具が壊れたりした場合も、ドワーフの国に持って行って修理をしてもらうらしい。その対価として魔石を使うそうだ。

「なるほど。魔石がある程度通貨の役目も果たしているのか」

 しかし、この世界では鉄などの金属はとにかく貴重らしい。金属の精錬はドワーフの国がほぼ独占していて、他の国は魔石や食料、衣料品などと交換してもらっている。ごく少量、人族のイーシ王国でも生産されているらしいのだが、実際の所は定かでないとのことだ。

 それと、やはりというか当然というかオーガ族は一部の者しか文字が読めなかった。その為、読めるオーガを教師にして文字を徹底的に覚えさせた。教科書はエルフの館から持ってきた本がたくさんあったので、それをなんとか読めることが目標だ。

 こうして、四ヶ月の月日が流れた。

「シュテン、かなり強くなったな」

「いえ、蘭丸様、まだまだでございます」

 信長の前では、この三ヶ月間の成果を確認するべく、蘭丸達とオーガ達との試合が行われていた。

 木刀ではすぐに折れてしまうため、刃引きをした模造刀を使っている。一応、急所は金属プレートで防御しているが、まともに入れば重傷は必至だ。

 蘭丸とシュテンは何合か切り結ぶ。そして、蘭丸の鋭い突きをなんとか躱したところに、シュテンは下からの蹴りを受けてしまう。そしてシュテンの持っていた模造刀は宙を舞った。しかし、試合は終わらない。

 刀を失ったシュテンは蘭丸の腰をめがけて激しいタックルをする。そして、そのまま倒してマウントをとろうとするが、その刹那、体を入れ替えて蘭丸はシュテンの左腕をとった。そしてすかさず横十字固めに入る。

 シュテンの身長は190センチ、蘭丸の身長は175センチと体格差はあるが、関節をきっちり決められてしまってはどうしようも出来なかった。もしこれが実戦なら、片腕をへし折られてしまったとしても戦を続けるだろう。しかし、訓練の試合において勝敗は明確であった。

「負けました」

 オーガ族最強のシュテンでもまだまだ蘭丸に及ばないが、この四ヶ月間の技術向上はめざましいものがあった。今まではただ力任せに剣を振り下ろしたり蹴ったり殴ったりするだけだったのだが、蘭丸達の指導によって剣術や体術を身につけることが出来た。さすが戦闘民族だけのことはある。

 そして、信長達のもってきた魔導書の解析も進み、身体強化魔法はより強力に使えるようになった。しかし、どんなに頑張ってもオーガ族に攻撃魔法は使えないようだ。唯一、エーリカを除いて。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...