34 / 61
第33話 黄金の三頭竜(1)
しおりを挟む
「助けに来た・・・?そんなこと・・・・あるはずがないわ・・・。私は望んでここに来たの・・・。だから、そんな嘘を吐かないで・・・」
少女はかすれた声で信長を拒絶した。そして、その目に固い決意のようなものが感じられる。
“この少女は何かの目的で自らここに来ているのか・・・”
少女の周りでは魔石が淡く光っている。少女の前には祭壇のような物が備え付けられていて、そこには何かしらの呪術的な雰囲気のする道具が置かれていた。
そして少女は白装束をまとって、一心不乱に呪文かお経のようなものを唱えていた。
「まるで入定(にゅうじょう)のようですね、信長様」
「ああ、俺もそう思っていたところだ」
信長と蘭丸達は小声で話し合っている。皆、この少女が入定をする僧のように思えたのだ。
「ねえ、“にゅうじょう”って何?」
と、ガラシャがきょとんとした顔で質問をする。
「え?日本史の授業で習っただろ?坊さんが断食をして即身仏(そくしんぶつ)になることだよ。つまり餓死して仏様になる修行のことだ」
それを聞いたガラシャは「ああ」と頷いた。
「即身仏ならわかるわよ。その“入定”ね。じゃあ、あの子はここで死ぬつもりって事?」
ガラシャは眉根を寄せて信長に質問をする。もしそうだとしたら、あまりにも人の命を軽く使いすぎる。角が生えているので人族ではないかも知れないが、それでもまだ幼さの残る少女が即身仏になるなど考えられない。
「そうだな。そうかも知れん」
信長達が小声で話をしていると、緑色の髪の少女が口を開いた。
「はやく・・・逃げて・・・あなたたちも巻き添えになるわ・・・・」
“巻き添え?”
巻き添えと言うことは、この後何かのイベントが発生すると言うことだ。つまり、即身仏ではなくて何かに生け贄として捧げられるのだろうか?
「何が出てくるかは知らないが、俺たちがそいつをぶっ殺してお前を助けてやるって言ってるんだよ。とりあえずここを出るぞ!さあ、俺たちに付いてこい!」
そう言って信長は手を出したが、緑色の髪の少女はその手を振り払う。
「もし・・逃げたら・・・村が・・滅びる・・・だから・・行けない・・」
「なんだ、やっぱり生け贄じゃねぇか。そうとわかればなおさら放っておけないな。無理矢理にでも連れて行くぞ」
信長は少女の手首を強引につかんで引っ張り上げた。その少女は想像以上に軽い。
「もう・・・手遅れ・・・・・」
信長に持ち上げられた少女は、祭壇の向こうにある高さ10mくらいの岩を見る。この広い空間の天井にまで突き刺さっている、巨大な一本の柱のような岩だ。そしてその岩が徐々に光を放ち始める。
音も熱さも感じない。ただ金色の光がこの空間を包んでいった。
そして、その光が少し弱くなった時、その大岩の前に巨大な生物が立っていた。
その巨体は薄い金色の光を放っている。その体は鱗で覆われていて、太く短い足で二本立ちしている。そして背中にはプテラノドンのような翼が広がっていて、ゆっくりと動かしている。さらにその上には、伝説にあるような竜の頭が三つ、鎌首を持ち上げてこちらをにらんでいた。
「あ、あれは・・・・・」
信長達はその巨体を見上げて固まってしまった。
「知ってる・・」
そうだ、俺たちはあれを知っている。何度も見たことがある。自分以外のあらゆる物に絶対的な敵意を示し、世界の滅びを望む存在。
「キング○ドラ・・・本当に居たんだ・・・」
その神々しいまでの姿に皆が心を奪われていたのだが、力丸だけはそれを凝視して観察をしていた。そして、
「いえ、あれはキング○ドラではありません。この三頭竜には腕がありますが、キング○ドラには腕は無いのです。ですから、あれはまがい物ですね。便宜的に、キングヒドラとでも呼称しましょう」
力丸の冷静な分析眼に、みな驚嘆した。本物のキング○ドラなら勝てるイメージは出てこないが、まがい物ならなんとかなりそうな気がしてくるから不思議なものだ。
「なあ、嬢ちゃん。お前は、あれに喰われるためにここに来たのか?村を守るためか?」
緑色の髪の少女は信長の目をじっと見て、ゆっくりと頷いた。そして口を開く。
「腕が、痛い」
少女は信長に腕を掴まれて持ち上げられたままだったのだ。
少女はかすれた声で信長を拒絶した。そして、その目に固い決意のようなものが感じられる。
“この少女は何かの目的で自らここに来ているのか・・・”
少女の周りでは魔石が淡く光っている。少女の前には祭壇のような物が備え付けられていて、そこには何かしらの呪術的な雰囲気のする道具が置かれていた。
そして少女は白装束をまとって、一心不乱に呪文かお経のようなものを唱えていた。
「まるで入定(にゅうじょう)のようですね、信長様」
「ああ、俺もそう思っていたところだ」
信長と蘭丸達は小声で話し合っている。皆、この少女が入定をする僧のように思えたのだ。
「ねえ、“にゅうじょう”って何?」
と、ガラシャがきょとんとした顔で質問をする。
「え?日本史の授業で習っただろ?坊さんが断食をして即身仏(そくしんぶつ)になることだよ。つまり餓死して仏様になる修行のことだ」
それを聞いたガラシャは「ああ」と頷いた。
「即身仏ならわかるわよ。その“入定”ね。じゃあ、あの子はここで死ぬつもりって事?」
ガラシャは眉根を寄せて信長に質問をする。もしそうだとしたら、あまりにも人の命を軽く使いすぎる。角が生えているので人族ではないかも知れないが、それでもまだ幼さの残る少女が即身仏になるなど考えられない。
「そうだな。そうかも知れん」
信長達が小声で話をしていると、緑色の髪の少女が口を開いた。
「はやく・・・逃げて・・・あなたたちも巻き添えになるわ・・・・」
“巻き添え?”
巻き添えと言うことは、この後何かのイベントが発生すると言うことだ。つまり、即身仏ではなくて何かに生け贄として捧げられるのだろうか?
「何が出てくるかは知らないが、俺たちがそいつをぶっ殺してお前を助けてやるって言ってるんだよ。とりあえずここを出るぞ!さあ、俺たちに付いてこい!」
そう言って信長は手を出したが、緑色の髪の少女はその手を振り払う。
「もし・・逃げたら・・・村が・・滅びる・・・だから・・行けない・・」
「なんだ、やっぱり生け贄じゃねぇか。そうとわかればなおさら放っておけないな。無理矢理にでも連れて行くぞ」
信長は少女の手首を強引につかんで引っ張り上げた。その少女は想像以上に軽い。
「もう・・・手遅れ・・・・・」
信長に持ち上げられた少女は、祭壇の向こうにある高さ10mくらいの岩を見る。この広い空間の天井にまで突き刺さっている、巨大な一本の柱のような岩だ。そしてその岩が徐々に光を放ち始める。
音も熱さも感じない。ただ金色の光がこの空間を包んでいった。
そして、その光が少し弱くなった時、その大岩の前に巨大な生物が立っていた。
その巨体は薄い金色の光を放っている。その体は鱗で覆われていて、太く短い足で二本立ちしている。そして背中にはプテラノドンのような翼が広がっていて、ゆっくりと動かしている。さらにその上には、伝説にあるような竜の頭が三つ、鎌首を持ち上げてこちらをにらんでいた。
「あ、あれは・・・・・」
信長達はその巨体を見上げて固まってしまった。
「知ってる・・」
そうだ、俺たちはあれを知っている。何度も見たことがある。自分以外のあらゆる物に絶対的な敵意を示し、世界の滅びを望む存在。
「キング○ドラ・・・本当に居たんだ・・・」
その神々しいまでの姿に皆が心を奪われていたのだが、力丸だけはそれを凝視して観察をしていた。そして、
「いえ、あれはキング○ドラではありません。この三頭竜には腕がありますが、キング○ドラには腕は無いのです。ですから、あれはまがい物ですね。便宜的に、キングヒドラとでも呼称しましょう」
力丸の冷静な分析眼に、みな驚嘆した。本物のキング○ドラなら勝てるイメージは出てこないが、まがい物ならなんとかなりそうな気がしてくるから不思議なものだ。
「なあ、嬢ちゃん。お前は、あれに喰われるためにここに来たのか?村を守るためか?」
緑色の髪の少女は信長の目をじっと見て、ゆっくりと頷いた。そして口を開く。
「腕が、痛い」
少女は信長に腕を掴まれて持ち上げられたままだったのだ。
9
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる