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第28話 ボードレー伯爵邸(4)
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「ガ、ガラシャ、冗談だよ。そんな事をするわけないだろ」
「信長くんって、そんなに冗談を言う人だったかしら?小学校の頃から一緒だけど、私の知ってる信長くんは冗談なんて言わなかったわよ」
信長は背中にかいた汗が、一瞬にして凍るのがわかった。ガラシャは極低温領域をだんだんと信長に近づけている。
「わ、わかったガラシャ、このメイド達はちゃんと無事に解放するから許してくれ。な?俺たち、“友達”だろ?」
――――
とりあえず、メイド達に騒がれてもまずいので手と足を縛って動けなくした。包丁を持っていたメイドも当然一瞬で制圧している。
「で、この館の他の連中はどこにいる?それとあと何人くらい残っているんだ?」
信長は、包丁を持って気丈に立ち向かってきたメイドに問いかける。おそらく、この部署の責任者なのだろう。メイド達の先頭に立って皆を守ろうとしている。
「ロベルトやドミーウを殺したって本当なの?なんて惨い事を・・・・」
メイド達には、スティアの従者を殺した賊が来るかもしれないので、一階厨房の奥に隠れているよう命令が出ていたのだ。
「ああん?だれだ、それ?しらねぇなぁ。俺たちを襲ってきたエルフなら、もう20人くらい殺しちまったからなぁ。その中に居たんだとしたら運の悪い奴だぜ」
「え?二十人ですって!そんなに・・・」
そのやりとりを聞いていたエルフの一人が突然大声を上げて泣き出した。
「ロベルト!ロベルト!なんで殺したの!?あんなに優しい人を・・・ねえ・・・どうして私からロベルトを奪ったの!?」
その泣き声につられたのか、他のエルフ達も鳴き始める。厨房の中は泣き声の大合唱となってしまった。
「ちっ、めんどくせーな。蘭、こいつら全員首刎ねろ!」
ガンッ!
厨房に激しい衝撃音がこだました。そして、信長はその場に倒れてしまう。
「いってーな!何すんだよ、ガラシャ!普通なら死んじまうぞ!」
そこには大きなフライパンを持ったガラシャが鬼の形相で立っていた。
「信長くん、あなたね!すぐに殺すとか何考えてるの!?子供を助ける為とか襲われたって状況じゃないでしょ!?今度そんな事を言ったら本当に許さないわよ!」
その様子を見ていた蘭丸達は、腕を組んで“うんうん”とうなずいていた。戦国の世で育った蘭丸達であったが、信長よりはかなり21世紀の常識を受け入れているようだ。
「わかったよ。紳士的にやるよ。しゃーねーな」
そう言って信長は、縛られているエルフ達の前に中腰で座る。
「でだ、この屋敷にはあと何人くらいいるんだ?襲ってさえこなければ、俺たちも好き好んで殺したりはしねーよ。今までは問答無用で殺されそうになったからな。不幸な行き違いってヤツだ。この屋敷に何人残っててどこにいるかわかれば、話し合いだって出来るだろ?協力してくれないかな?」
信長は精一杯の笑顔を作って語りかけた。しかし、日頃笑顔などしない信長が無理に作った表情は、信じられないくらい気色悪かった。
「どうする?蘭。こいつら協力してくれそうに無いな。無理矢理にでも道案内に連れて行くか?」
「信長様。無理に連れて行っても足手まといになるだけでしょう。ここは放置して我々だけで家捜しの続きをしましょう」
「そうだな、そうするか。おい、お前達。騒いだりしないでここでおとなしくしてろよ!そうすればあとで開放してやるからな!」
そう言って信長達は厨房から出て行く。
「あなたたち、ごめんなさいね。いきなり襲われたから反撃して、何人か死んじゃったかもしれないんだけど、最初から殺すつもりなんて無かったのよ。本当よ。す、少なくとも私はね。だから、ここで静かにしててね」
ロベルト!と叫んでいたエルフは、おそらく恋人なのだろう。突然訳のわからない状況で恋人を殺されたのだから、怒りや悲しみに支配されてしまうのは致し方のない事だ。不幸なファーストコンタクトとなってしまったが、ガラシャも子供の命と自分の命を守りたいのだ。それは致し方のない事だったと自分に言い聞かせた。
「信長くんって、そんなに冗談を言う人だったかしら?小学校の頃から一緒だけど、私の知ってる信長くんは冗談なんて言わなかったわよ」
信長は背中にかいた汗が、一瞬にして凍るのがわかった。ガラシャは極低温領域をだんだんと信長に近づけている。
「わ、わかったガラシャ、このメイド達はちゃんと無事に解放するから許してくれ。な?俺たち、“友達”だろ?」
――――
とりあえず、メイド達に騒がれてもまずいので手と足を縛って動けなくした。包丁を持っていたメイドも当然一瞬で制圧している。
「で、この館の他の連中はどこにいる?それとあと何人くらい残っているんだ?」
信長は、包丁を持って気丈に立ち向かってきたメイドに問いかける。おそらく、この部署の責任者なのだろう。メイド達の先頭に立って皆を守ろうとしている。
「ロベルトやドミーウを殺したって本当なの?なんて惨い事を・・・・」
メイド達には、スティアの従者を殺した賊が来るかもしれないので、一階厨房の奥に隠れているよう命令が出ていたのだ。
「ああん?だれだ、それ?しらねぇなぁ。俺たちを襲ってきたエルフなら、もう20人くらい殺しちまったからなぁ。その中に居たんだとしたら運の悪い奴だぜ」
「え?二十人ですって!そんなに・・・」
そのやりとりを聞いていたエルフの一人が突然大声を上げて泣き出した。
「ロベルト!ロベルト!なんで殺したの!?あんなに優しい人を・・・ねえ・・・どうして私からロベルトを奪ったの!?」
その泣き声につられたのか、他のエルフ達も鳴き始める。厨房の中は泣き声の大合唱となってしまった。
「ちっ、めんどくせーな。蘭、こいつら全員首刎ねろ!」
ガンッ!
厨房に激しい衝撃音がこだました。そして、信長はその場に倒れてしまう。
「いってーな!何すんだよ、ガラシャ!普通なら死んじまうぞ!」
そこには大きなフライパンを持ったガラシャが鬼の形相で立っていた。
「信長くん、あなたね!すぐに殺すとか何考えてるの!?子供を助ける為とか襲われたって状況じゃないでしょ!?今度そんな事を言ったら本当に許さないわよ!」
その様子を見ていた蘭丸達は、腕を組んで“うんうん”とうなずいていた。戦国の世で育った蘭丸達であったが、信長よりはかなり21世紀の常識を受け入れているようだ。
「わかったよ。紳士的にやるよ。しゃーねーな」
そう言って信長は、縛られているエルフ達の前に中腰で座る。
「でだ、この屋敷にはあと何人くらいいるんだ?襲ってさえこなければ、俺たちも好き好んで殺したりはしねーよ。今までは問答無用で殺されそうになったからな。不幸な行き違いってヤツだ。この屋敷に何人残っててどこにいるかわかれば、話し合いだって出来るだろ?協力してくれないかな?」
信長は精一杯の笑顔を作って語りかけた。しかし、日頃笑顔などしない信長が無理に作った表情は、信じられないくらい気色悪かった。
「どうする?蘭。こいつら協力してくれそうに無いな。無理矢理にでも道案内に連れて行くか?」
「信長様。無理に連れて行っても足手まといになるだけでしょう。ここは放置して我々だけで家捜しの続きをしましょう」
「そうだな、そうするか。おい、お前達。騒いだりしないでここでおとなしくしてろよ!そうすればあとで開放してやるからな!」
そう言って信長達は厨房から出て行く。
「あなたたち、ごめんなさいね。いきなり襲われたから反撃して、何人か死んじゃったかもしれないんだけど、最初から殺すつもりなんて無かったのよ。本当よ。す、少なくとも私はね。だから、ここで静かにしててね」
ロベルト!と叫んでいたエルフは、おそらく恋人なのだろう。突然訳のわからない状況で恋人を殺されたのだから、怒りや悲しみに支配されてしまうのは致し方のない事だ。不幸なファーストコンタクトとなってしまったが、ガラシャも子供の命と自分の命を守りたいのだ。それは致し方のない事だったと自分に言い聞かせた。
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