25 / 61
第24話 騎士団副団長アルベルト(3)
しおりを挟む
「我ら騎士団5人に3人で戦えると思っているのか!?我らは精鋭ぞ!そこらの雑魚との違いを見せてやろう!」
エルフ達は馬に拍車をかけて信長達に迫る。その騎乗姿勢は美しく、明らかに熟練者だとわかるものだった。
と、そのとき、
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」
エルフ達の上半身が突然燃え上がったのだ。そして熱さのあまり落馬して転げ回ってしまう。
しかし次の瞬間、エルフ達の上から大量の水が降ってきて火を消してしまった。
エルフの中の一人が、なんとか水魔法の詠唱に成功したのだ。
「くっ、無詠唱で魔法が使えるのは事実だったのか・・・」
エルフ族は耳が大きい事からもわかるとおり、非常に聴力が高い。呪文の詠唱を聞き逃すような事は無いのだが、今は全く聞こえなかった。
上半身に火傷を負いながらも、なんとか立ち上がったエルフ達は体勢を整える。
火魔法を使ったのは後ろに下がっていたガラシャだった。前回は怒りのあまり確実に殺す為の魔法を使ったのだが、今回は足止めをするために手加減をした火魔法にした。その為、水魔法の詠唱時間を与えてしまったようだ。
「わしが雷撃魔法を使う。お前達はその時間をなんとしても稼ぐんだ」
アルベルトは部下に指示を出した。敵を倒すほどの雷撃魔法を使うには、呪文の詠唱に20秒ほどの時間がかかる。命を懸けてでも、その時間を作るように部下に命じたのだ。
「はい、アルベルト様!」
4人の騎士がアルベルトの前に出て、一斉に信長達に斬りかかった。上半身を火傷しているにもかかわらず戦意を喪失してはいない。例え自分の命を失おうとも、騎士としての誇りを失う事は無い。なんとしても時間を作って副団長の呪文詠唱を成功させるのだ。
それは、一瞬の出来事だった。
馬上の信長達を切るためにジャンプしたエルフ達であったが、その体は空中でいくつかの部分に分かれてしまった。目にも止まらぬ斬撃に襲われたのだ。
滑りゆく世界の中で、エルフ達は信長の邪悪な笑みを最後の記憶としてしまった。
“すまぬ、お前達。しかし、もうすぐ詠唱が終わる。お前達の死は無駄にはせぬ”
心の中で部下達にわびを入れたアルベルトは、勝利を確信していた。この間合いなら連中の剣撃は届かない。もう一度無詠唱の火魔法を浴びたとしても、詠唱を止めなければいい。
だから、必ず勝つ!
「・・・・・・・・・雷(いかずち)の精霊よ!今ここに・・うごふぶっ!」
アルベルトは顔面に激しい衝撃を受けて、後ろに倒れてしまった。そして、呪文の詠唱も最終段階で途切れてしまう。せっかく魔法発動のために集まってきた魔素も霧散して消えてしまったのだ。
「う・・いったい何が・・・あ・・・・何だ!これは!」
アルベルトは自分の顔に衝撃を与えた物の正体に激しい怒りがこみ上げてきた。それは、信長が履いていた“靴”だった。
「なあ、おっさん。いったい何時(いつ)になったらその“精鋭”ってのが出てくるんだ?」
目の前にはすでに信長が立っていて、のど元に剣が突きつけられている。部下も全員殺されてしまっては、もう抵抗する事は出来そうに無い。
「くっ、この下等な人族が!調子に乗るのも今のうちだけだ!神聖なエルフの地を汚してただですむと思う・・うがああああぁぁぁ!」
その言葉にイラッときた信長は、躊躇無くアルベルトの左耳を切り落とした。
「その下等な人族にいいようにされてちゃ、ざまあ無いな。ところでいろいろと聞きたい事がある。魔法がどうとか言っていたが、知ってる呪文を教えてくれないか?無詠唱の魔法は使えるんだが、詠唱魔法は知らないんだよ。死にたくなかったら教えてくれ」
信長は剣先をアルベルトの喉に押し当てながら質問をした。
「くっ!無詠唱の魔法が使えるのに詠唱魔法をしらないだと!?そんなバカな事があるか!無詠唱で魔法が使えるのはエルフ族でも限られておる!全く逆では無いか!それに、お前達に呪文を教えるわけは無いだろう!もういい!さっさと殺せ!」
アルベルトはまっすぐに信長の目をにらんでいる。全く迷いの無い目だ。
“こういう目をした奴は、絶対に降伏しないんだよな”
この目をする人間を、信長は何人も見た事があった。そして彼らは、決して信長に降る事はなかったのだ。
信長はアルベルトの言葉に返事をする事無く、その剣を喉に突き刺した。
エルフ達は馬に拍車をかけて信長達に迫る。その騎乗姿勢は美しく、明らかに熟練者だとわかるものだった。
と、そのとき、
「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」
エルフ達の上半身が突然燃え上がったのだ。そして熱さのあまり落馬して転げ回ってしまう。
しかし次の瞬間、エルフ達の上から大量の水が降ってきて火を消してしまった。
エルフの中の一人が、なんとか水魔法の詠唱に成功したのだ。
「くっ、無詠唱で魔法が使えるのは事実だったのか・・・」
エルフ族は耳が大きい事からもわかるとおり、非常に聴力が高い。呪文の詠唱を聞き逃すような事は無いのだが、今は全く聞こえなかった。
上半身に火傷を負いながらも、なんとか立ち上がったエルフ達は体勢を整える。
火魔法を使ったのは後ろに下がっていたガラシャだった。前回は怒りのあまり確実に殺す為の魔法を使ったのだが、今回は足止めをするために手加減をした火魔法にした。その為、水魔法の詠唱時間を与えてしまったようだ。
「わしが雷撃魔法を使う。お前達はその時間をなんとしても稼ぐんだ」
アルベルトは部下に指示を出した。敵を倒すほどの雷撃魔法を使うには、呪文の詠唱に20秒ほどの時間がかかる。命を懸けてでも、その時間を作るように部下に命じたのだ。
「はい、アルベルト様!」
4人の騎士がアルベルトの前に出て、一斉に信長達に斬りかかった。上半身を火傷しているにもかかわらず戦意を喪失してはいない。例え自分の命を失おうとも、騎士としての誇りを失う事は無い。なんとしても時間を作って副団長の呪文詠唱を成功させるのだ。
それは、一瞬の出来事だった。
馬上の信長達を切るためにジャンプしたエルフ達であったが、その体は空中でいくつかの部分に分かれてしまった。目にも止まらぬ斬撃に襲われたのだ。
滑りゆく世界の中で、エルフ達は信長の邪悪な笑みを最後の記憶としてしまった。
“すまぬ、お前達。しかし、もうすぐ詠唱が終わる。お前達の死は無駄にはせぬ”
心の中で部下達にわびを入れたアルベルトは、勝利を確信していた。この間合いなら連中の剣撃は届かない。もう一度無詠唱の火魔法を浴びたとしても、詠唱を止めなければいい。
だから、必ず勝つ!
「・・・・・・・・・雷(いかずち)の精霊よ!今ここに・・うごふぶっ!」
アルベルトは顔面に激しい衝撃を受けて、後ろに倒れてしまった。そして、呪文の詠唱も最終段階で途切れてしまう。せっかく魔法発動のために集まってきた魔素も霧散して消えてしまったのだ。
「う・・いったい何が・・・あ・・・・何だ!これは!」
アルベルトは自分の顔に衝撃を与えた物の正体に激しい怒りがこみ上げてきた。それは、信長が履いていた“靴”だった。
「なあ、おっさん。いったい何時(いつ)になったらその“精鋭”ってのが出てくるんだ?」
目の前にはすでに信長が立っていて、のど元に剣が突きつけられている。部下も全員殺されてしまっては、もう抵抗する事は出来そうに無い。
「くっ、この下等な人族が!調子に乗るのも今のうちだけだ!神聖なエルフの地を汚してただですむと思う・・うがああああぁぁぁ!」
その言葉にイラッときた信長は、躊躇無くアルベルトの左耳を切り落とした。
「その下等な人族にいいようにされてちゃ、ざまあ無いな。ところでいろいろと聞きたい事がある。魔法がどうとか言っていたが、知ってる呪文を教えてくれないか?無詠唱の魔法は使えるんだが、詠唱魔法は知らないんだよ。死にたくなかったら教えてくれ」
信長は剣先をアルベルトの喉に押し当てながら質問をした。
「くっ!無詠唱の魔法が使えるのに詠唱魔法をしらないだと!?そんなバカな事があるか!無詠唱で魔法が使えるのはエルフ族でも限られておる!全く逆では無いか!それに、お前達に呪文を教えるわけは無いだろう!もういい!さっさと殺せ!」
アルベルトはまっすぐに信長の目をにらんでいる。全く迷いの無い目だ。
“こういう目をした奴は、絶対に降伏しないんだよな”
この目をする人間を、信長は何人も見た事があった。そして彼らは、決して信長に降る事はなかったのだ。
信長はアルベルトの言葉に返事をする事無く、その剣を喉に突き刺した。
9
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる