本能寺から始める異世界天下布武 ~転生した信長は第六天魔王になって異世界に君臨します~

朝日カヲル

文字の大きさ
上 下
3 / 61

第2話 なぜか生きていた

しおりを挟む
「・・・・・・・ここは?」

 信長は、酷い頭痛を覚えながら意識を取り戻した。目を見開いて辺りを見回すが、暗くて様子がわからない。空に目を向けると薄い三日月が浮かんでいた。辺りは暗くまだ目が慣れていない為、周囲がよく見えないのだ。

 自分の姿もよく見えないがどうやら裸のようだ。もしかすると、本能寺で炎に巻かれた後、誰かの助けが入り、火の付いた衣服を脱がせて運び出されたのであろうか?しかし、火傷をしているような感じでも無い。

 信長は声を出そうかとも思ったが、もし、近くに明智の手勢が居るようならまずいので、声を出さずに辺りの様子を伺うことにした。

 信長は手を動かして地面の感触を確かめてみる。どうやら丈の短い草が茂っているようだ。上を見ると、三日月に薄く照らされた木の枝が多数見える。そして、辺りからは虫の音が聞こえていた。

 信長は目を大きく見開いて暗闇を凝視する。だんだんと目が慣れてくるに従って様子がわかってきた。

 “ここは、林の中か・・・”

 体を起こし傍らを見てみると、そこに横たわる人の姿があった。そして、その者も衣服を着けていない裸の様だ。

 信長は、横たわっている人影に近づき、その姿をまじまじと観察する。

 “童か・・。しかし、なぜ童が裸でこのような所に・・・”

 そう思っていると、その子供がゆっくりと目を開けた。その子はまだ目が慣れていないのか、のぞき込んでいる信長の顔をまじまじと凝視していた。

「う、上様は・・?上様はご無事でしょうか?」

 “!?上様と呼ぶということは明智の手勢ではあるまい。それでは、味方の武将の子供か?ならば、やはり味方に救い出されたと言うことであろうか?“

「わしじゃ。わしが織田正二位信長じゃ。そなたは誰じゃ?・・・えっ?」

 信長は声を発したときに強烈な違和感に襲われた。声が明らかに高い。まるでそれは子供の声の様だった。

「えっ?し、しかし、上様・・?お声が・・・・」

 二人ともだんだんと目が慣れてくる。お互いの姿を見て、そして自分自身の姿を見て驚愕した。

「わ、童になってる!?」

 二人は驚き自分の体を触ってみる。確かに子供の体になっていた。あそこにも毛が生えていない。

「これはいったい・・・」

「う、上様・・・なのでしょうか?」

「おお、そうじゃ。お前は誰ぞ?」

「わ、私は森蘭丸にございます。このように童の体になってしまうとは・・・、一体何が起こったのでしょう?」

「解らぬ。解らぬが生きていることは間違いなかろう?そうじゃ、他の者は?」

 二人は立ち上がり辺りを見回した。すると三間(約6m)ほど離れた所に、二人の子供が裸で倒れていた。そして、その二人は傷を負っていて血を流している。意識は無い。

「この二人は坊丸に力丸か!?童の姿だが刀傷はそのままだな。息はあるようだが、手当をせねば」

 二人は辺りを見回すが、衣服も一切無く傷を抑えることのできる物は無さそうだった。

「わしが味方を見つけてくる。それまで蘭はここで二人を見ておれ」

「し、しかし上様」

「二人の兄であるお前が看てやらねば誰が看るというのだ。安心せい。すぐに手勢を連れて戻ってくる」

 信長はそう言って立ち上がり歩き始める。林の中ではあるが、下草は良く刈られており人の手が入っていることが解る。そして、しばらく歩くと光を発している何かが見えてきた。

 “あれは、かがり火か?”

 かがり火ということは、そこに誰かがいるはずだ。味方であれば良いが、明智勢であれば万事休すだ。信長は息を潜めてその明かりに近づいていく。

 しかし、あの明かりの周りに人が居るようには見えなかった。明かりの周りはひらけており、なにやら背もたれのある長床机(長いす)の様な物がいくつか見える。さらによく見てみると、動物をかたどった置物や、人が乗れるほどの天秤のような物が置いてあった。

 “あれは、いったい何じゃ?”

 信長はさらに凝視して周りを観察した。すると、かがり火から少し離れた所に座り込んでいる数人の人影を見つけた。

 信長はその人影をじっと凝視し観察をした。どうやら若い男達のようだ。そして、男は頭を剃っていない。ということは町人か百姓だろう。槍も持っておらず甲冑も着けていない。明智の軍勢も、今夜の内に全ての町人や百姓に触れを出して、我々織田勢の手配をする事は出来まい。そうであれば、あの二人は明智が謀反を起こして我々が追われていることは知らないはず。これなら助かる。

 信長は茂みから出て、座り込んでいる人影に向かって歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...