125 / 133
5章:エルフの国と軍師の策略
116:気遣い
しおりを挟む
地面から突き出る土の刃は、貫いたものを地面へと置き、ゆっくりと沈んでいった。
残ったのは地面に転がる魔物と聖神教の死体、それと迷宮都市側の冒険者たちだった。
突然のことに驚き周りは静寂を保っていたが、どこかの冒険者が魔物の撃退への勝利の声をあげた。
その歓声を聞きながら、俺とフロンはティナたちと合流するために、迷宮都市入り口付近で指揮を執っているフェリの元へ向かっていた。
「ご主人様……あの……大丈夫ですか?」
「なにがだ?」
俺にはこの質問がどう意図で行われたのか分かっている。
フロンの視線はチラチラと腰にある一本の刀へと向いていたからだ。
フロンの頭に手を置き、きれいな金色の髪を無茶苦茶に撫でまわした。気にするなという意味を込めて。
それに、ここに到着する前に光ったことと、妙に引っかかる違和感。俺はムラクモがあの状態で死んだとはどうしても思えなかった。
あとで、ティナを通じてクロノスに連絡を取りたいところだが、そう簡単に連絡が取れるのかわからない。
クロノスと連絡を取るには、ティナの持つ神託のスキルがいる。俺がエルの能力を使って、コピーできないユニークスキルだ。
気づくと、結構な距離歩いており、目の前には懐かしい迷宮都市の街並みが見える。
目の前にはすでに到着していたティナとフィリア、仔竜のノワール。そして懐かしい、迷宮都市で世話になった面々だった。
「よう。久しぶりだな」
俺はそいつらに向けてこう口にした。だが、ムラクモのことを知っているティナ、フィリア、フェルの表情は少し重い。
それに比べ、アルやテクルは笑顔で手を振ってきていた。
「ユウ様……」
「俺は大丈夫だ。クロノスに用がある、後で力を貸してくれるか?」
てこてこと、暗い表情で寄ってきたティナに耳打ちで、頼みごとをすると、暗かった表情は元気にとまではいかないが、普通までは戻ってくれた。
俺の意図を組んでくれたのか、フィリアとフェルはすでに表情を元へと戻してくれた。
俺たちはひとまず戦いの疲れを癒す為に、迷宮都市の中へと入っていった。
❖ ❖ ❖
魔物の襲撃があった一日はいつの間にか終わりを迎えていた。
戦いの功労者として、周りの冒険者たちから称賛の声が上がった。俺は目立つのはあまり好きではない。フェリのおかげでそこまで大げさにならずに済んだ。黒霧のコートがローブになっていたおかげか周りの冒険者に角の存在がバレることは無かった。
これからはローブが基本装備になるかもしれない。特に町の中は。
今回の迷宮都市防衛戦での死傷者は数十人。重傷者は戦い後、ギルド横の病院ともいへる場所に搬送されていた。冒険者側からも回復魔法士を集め、怪我人の処置に当たった。
幸い俺のPTメンバーに怪我人はおらず、俺たちは前にもお世話になったミラルの宿へと訪れていた。
「久しぶりだな。リナ。レナ」
「お久しぶりです。ユウさん」
中に入り俺達を出迎えたのはリナとレナだった。二人は俺の額にある角を確認すると驚いたような顔をするが、その顔はすぐに戻り、前と変わらぬ対応を始めた。
ほんとによくできた姉妹だ。
出迎えた後レナはすぐにティナの元へと走り、ティナが抱えていたノワールを抱きしめ、頭を撫でていた。
そして、たっぷりノワールをかわいがると、ようやくこちらを向き、
「ユウさんお久しぶりです!」と挨拶をした。
ちょっと遅くないですか?
「ユウさん。今回はお疲れ様でした。しばらくこっちに滞在するので?」
「いや、長く滞在するつもりは今のところない。でも状況的に二泊ぐらいはするつもりだ」
「わかりました。部屋は二階の前とは反対側の部屋です。一部屋ですがベッドは四つある大部屋になってますのでご安心ください。今回の戦いの功労者から代金も受け取るつもりはないのでよろしくお願いします」
そういいながらリナは軽くウィンクをしてきた。
俺たちはリナの笑顔に負け、二階の端の部屋で休息を取ることにした。
いつもだったら、ベットの数で文句を言い出す女性陣だが、今回ばかりは何も言ってこない。きっと俺に気を使ってるのだろう。分かりやすいやつらだ。だが今回は助かる。
あれ以降ヨリヒメから応答はなく、エルは魔力の使い過ぎですでにスリープモードだ。
ヨリヒメは俺のあの惨めな戦いぶりに呆れたのかもしれない。振り返れば雑な戦いで、周りも見れていない。これは飽きられても仕方ないのかもしれない。
部屋に入り、それぞれしたいことをしている。
俺は装備を外し、ベットに横になっている。ヒサメも今回ばかりはおとなしい。姉としての精神かわからないが、ムラクモの横に寄り添うようにしている。
いつまでもくよくよしていては始まらない。俺はムラクモを信じて、今は次に進むことにしよう。考えるのは今後の行動だ。目標は変わらず魔王の討伐だ。それは変わらない、フロンの敵であり、今回の黒幕であるのだから。
それに気になるのは不知火のことだ。不思議なことが多いのだ。
まぁ、まずは不安がってるやつらを安心させてやらないとな。
「ちょっと話がある。聞いてくれるか?」
俺はさっきからチラチラとこっちの様子を気にしていた女性陣にそう声をかけた。
残ったのは地面に転がる魔物と聖神教の死体、それと迷宮都市側の冒険者たちだった。
突然のことに驚き周りは静寂を保っていたが、どこかの冒険者が魔物の撃退への勝利の声をあげた。
その歓声を聞きながら、俺とフロンはティナたちと合流するために、迷宮都市入り口付近で指揮を執っているフェリの元へ向かっていた。
「ご主人様……あの……大丈夫ですか?」
「なにがだ?」
俺にはこの質問がどう意図で行われたのか分かっている。
フロンの視線はチラチラと腰にある一本の刀へと向いていたからだ。
フロンの頭に手を置き、きれいな金色の髪を無茶苦茶に撫でまわした。気にするなという意味を込めて。
それに、ここに到着する前に光ったことと、妙に引っかかる違和感。俺はムラクモがあの状態で死んだとはどうしても思えなかった。
あとで、ティナを通じてクロノスに連絡を取りたいところだが、そう簡単に連絡が取れるのかわからない。
クロノスと連絡を取るには、ティナの持つ神託のスキルがいる。俺がエルの能力を使って、コピーできないユニークスキルだ。
気づくと、結構な距離歩いており、目の前には懐かしい迷宮都市の街並みが見える。
目の前にはすでに到着していたティナとフィリア、仔竜のノワール。そして懐かしい、迷宮都市で世話になった面々だった。
「よう。久しぶりだな」
俺はそいつらに向けてこう口にした。だが、ムラクモのことを知っているティナ、フィリア、フェルの表情は少し重い。
それに比べ、アルやテクルは笑顔で手を振ってきていた。
「ユウ様……」
「俺は大丈夫だ。クロノスに用がある、後で力を貸してくれるか?」
てこてこと、暗い表情で寄ってきたティナに耳打ちで、頼みごとをすると、暗かった表情は元気にとまではいかないが、普通までは戻ってくれた。
俺の意図を組んでくれたのか、フィリアとフェルはすでに表情を元へと戻してくれた。
俺たちはひとまず戦いの疲れを癒す為に、迷宮都市の中へと入っていった。
❖ ❖ ❖
魔物の襲撃があった一日はいつの間にか終わりを迎えていた。
戦いの功労者として、周りの冒険者たちから称賛の声が上がった。俺は目立つのはあまり好きではない。フェリのおかげでそこまで大げさにならずに済んだ。黒霧のコートがローブになっていたおかげか周りの冒険者に角の存在がバレることは無かった。
これからはローブが基本装備になるかもしれない。特に町の中は。
今回の迷宮都市防衛戦での死傷者は数十人。重傷者は戦い後、ギルド横の病院ともいへる場所に搬送されていた。冒険者側からも回復魔法士を集め、怪我人の処置に当たった。
幸い俺のPTメンバーに怪我人はおらず、俺たちは前にもお世話になったミラルの宿へと訪れていた。
「久しぶりだな。リナ。レナ」
「お久しぶりです。ユウさん」
中に入り俺達を出迎えたのはリナとレナだった。二人は俺の額にある角を確認すると驚いたような顔をするが、その顔はすぐに戻り、前と変わらぬ対応を始めた。
ほんとによくできた姉妹だ。
出迎えた後レナはすぐにティナの元へと走り、ティナが抱えていたノワールを抱きしめ、頭を撫でていた。
そして、たっぷりノワールをかわいがると、ようやくこちらを向き、
「ユウさんお久しぶりです!」と挨拶をした。
ちょっと遅くないですか?
「ユウさん。今回はお疲れ様でした。しばらくこっちに滞在するので?」
「いや、長く滞在するつもりは今のところない。でも状況的に二泊ぐらいはするつもりだ」
「わかりました。部屋は二階の前とは反対側の部屋です。一部屋ですがベッドは四つある大部屋になってますのでご安心ください。今回の戦いの功労者から代金も受け取るつもりはないのでよろしくお願いします」
そういいながらリナは軽くウィンクをしてきた。
俺たちはリナの笑顔に負け、二階の端の部屋で休息を取ることにした。
いつもだったら、ベットの数で文句を言い出す女性陣だが、今回ばかりは何も言ってこない。きっと俺に気を使ってるのだろう。分かりやすいやつらだ。だが今回は助かる。
あれ以降ヨリヒメから応答はなく、エルは魔力の使い過ぎですでにスリープモードだ。
ヨリヒメは俺のあの惨めな戦いぶりに呆れたのかもしれない。振り返れば雑な戦いで、周りも見れていない。これは飽きられても仕方ないのかもしれない。
部屋に入り、それぞれしたいことをしている。
俺は装備を外し、ベットに横になっている。ヒサメも今回ばかりはおとなしい。姉としての精神かわからないが、ムラクモの横に寄り添うようにしている。
いつまでもくよくよしていては始まらない。俺はムラクモを信じて、今は次に進むことにしよう。考えるのは今後の行動だ。目標は変わらず魔王の討伐だ。それは変わらない、フロンの敵であり、今回の黒幕であるのだから。
それに気になるのは不知火のことだ。不思議なことが多いのだ。
まぁ、まずは不安がってるやつらを安心させてやらないとな。
「ちょっと話がある。聞いてくれるか?」
俺はさっきからチラチラとこっちの様子を気にしていた女性陣にそう声をかけた。
21
お気に入りに追加
2,544
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる