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巫女の里
92:添い寝と虚ろ
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俺たちが巫女の里に戻ると、ソルの家の前にはノワールを抱えたティナとそれに付き添うようにカルが待っていた。
「遅いですよユウ様!」
どうやらご機嫌斜めのようだ。
俺たちの帰るのが遅かったのが悪かったらしい。
「悪い、ついな?」
「もう! 今度からは気を付けてくださいよ」
そう言うと、ティナは俺を引っ張り、ソルの家に上がらせる。
フロンとフィリアはそんな様子を見て、苦笑いしながらそのあとについて来る。
家に入ると机の上には、俺たちを含めた人数分の料理が用意されていた。
きっとティナが用意したのだろう。
「おう、やっと帰ってきたか。せっかくティナが作ってくれた飯だ。早く食おうぜ」
そこには椅子に座って律儀に待っているソルの姿があった。
それは、お腹がすいて早く食べたいという顔だった。
俺たちは空いてる席に腰を下ろし、全員で飯を食べた。
そのあとは部屋割りを決めた。
さすがにソルの家でまで俺と一緒の部屋になる必要はないため、女の3人で1室。俺で1室。を貸してもらうことになった。
「さぁこれからどうしようか」
俺は部屋で一人ため息を漏らす。
俺の今の明確な目的は魔王を殺すことだ。この暴走とかも、魔王と繋がっている気がする。
今の目標地はこの里の祭壇とその用が済んだらエルフの国だ。
祭壇にはあいつに用があるし、エルフの国ではフィリアの問題を解決したい。フィリア自身はあまり気にしていないようだが。
俺が布団の上でゴロンと転がりうつ伏せになると、腰のあたりに軽いがしっかりとした重みを感じた。
「ますたー。あまり気負いすぎないよう、何かあれば私もお手伝いします」
俺の上に乗っているのはどうやらエルのようだ。
ヨリヒメも出てくるかと思ったが、どうやら爆睡中みたいだ。
ムラクモとヒサメは刀の姿で壁に立てられていた。ヒサメの鍔にムラクモの柄が寄りかかっている。それはムラクモがヒサメの方を借りて眠っているようにも見えた。
「ふふっますたー。寂しいのなら私が添い寝してあげましょうか?」
俺がムラクモとヒサメを見て何を思っていたのか察したエルがからかうように言ってくる。
「ならお願いしようかな」
「……え?」
そう返ってくるとは思っていなかったのか、エルは驚いたように声を出す。
「い、いえ今のは……」
「まさか一度ったことをやらないとは言わないよね?」
俺はエルの方を向き煽る。
すると、エルは俺の頭を右の掌で叩く。
「し、しょうがないですね。本当にますたーは。ますたーが寝るまでですよ?」
そう言うとエルは普段は仕舞っている白い翼を広げ、うつ伏せになっている俺の背中に倒れ込む。
エルの頭が背中のど真ん中に来る。そして、俺のお腹の方に手を回すと両腕で俺を抱きしめ、毛布の代わりと言わんばかりに翼で俺を包む。
まさかあのエルがここまでしてくれるとは思っていなかったが、エルの心地よい体温と翼に包まれて、俺は静かに意識を落としていった。
ガチャ
俺が心地よく寝ていると、ドアを開けるそんな音が聞こえる。
俺の背中からいつの間にかエルは消えており、俺の背中には毛布が掛けられていた。
再び音が鳴る。次は扉を閉める音だ。
エルが何も言ってこないということは危険人物ではないということだ。
俺は起き上がり、入ってきた人物を確かめる。
部屋の中は薄暗く、入ってきた奴の顔は確認できない。俺は窓際により、カーテンを開ける。
外を見ると暗い中、少しの明かりが見える。それは太陽の明かりだ。
つまり、今の時間帯は夜明け前と言うことだ。
俺は振り返り、入ってきた人物を確かめる。
俺の部屋に入ってきていたのは、寝間着姿のティナだった。
だがよく見ると、様子がおかしい。
歩き方はよろよろ、目の焦点は合っていない。だがしっかりと俺の方を向いている。
「おい、ティナ」
俺が呼びかけると、ティナは扉の方に戻っていく。
扉をあけ、廊下に出る。
すると、また俺の方を見る。そしてそのまま停止している。
どうやら寝ぼけているわけでもなく。ティナの意識もなさそうだ。でもそれから何かがいいがあると思えなかった。
俺がティナに近寄ろうとすると、ティナは静かに歩きだす。
「ついて来いってことか?」
ティナは廊下から玄関へ、そして律儀に靴を履きだが寝間着のまま外に出る。
そして、どこかに向かうように歩き出す。
俺と一定距離空くと動きを止め、俺の方向をじーっと見つめてくる。
その目に光はなく、やはり歩き方も危なっかしい歩き方だ。ふらふらと里のわき道から外にでる。
山のごつごつした道をふらふらしながらも確実に進んでいく。
俺はそんなティナの後ろに付くようにしてあとを追う。
ティナがこの道を進んでいてわかるのは向かっている場所だ。
それは俺も行きたかった場所。そう祭壇だ。
祭壇は里の反対側、山を掘りぬいたかのような穴の中にある。
しばらく歩き、到着したのはやはり、祭壇のある山の反対側だった。
穴の前には横に1本ロープがある。
ティナはそれをくぐり、作られた階段を下っていく。
下った先にあったのは少し大きめの空間と、祭壇と呼べるそれだった。
到着すると、ティナが俺の方を向く。
それは焦点のあってない眼ではなく。しっかりと俺を目で捉えている。
だがその目のハイライトは消え虚ろだ。
そして誰かが乗り移ったであろうティナが口を開き俺を呼んだ。
「久しぶりだね。月影悠君」
と、俺の名前をフルネームで呼んだ。
「遅いですよユウ様!」
どうやらご機嫌斜めのようだ。
俺たちの帰るのが遅かったのが悪かったらしい。
「悪い、ついな?」
「もう! 今度からは気を付けてくださいよ」
そう言うと、ティナは俺を引っ張り、ソルの家に上がらせる。
フロンとフィリアはそんな様子を見て、苦笑いしながらそのあとについて来る。
家に入ると机の上には、俺たちを含めた人数分の料理が用意されていた。
きっとティナが用意したのだろう。
「おう、やっと帰ってきたか。せっかくティナが作ってくれた飯だ。早く食おうぜ」
そこには椅子に座って律儀に待っているソルの姿があった。
それは、お腹がすいて早く食べたいという顔だった。
俺たちは空いてる席に腰を下ろし、全員で飯を食べた。
そのあとは部屋割りを決めた。
さすがにソルの家でまで俺と一緒の部屋になる必要はないため、女の3人で1室。俺で1室。を貸してもらうことになった。
「さぁこれからどうしようか」
俺は部屋で一人ため息を漏らす。
俺の今の明確な目的は魔王を殺すことだ。この暴走とかも、魔王と繋がっている気がする。
今の目標地はこの里の祭壇とその用が済んだらエルフの国だ。
祭壇にはあいつに用があるし、エルフの国ではフィリアの問題を解決したい。フィリア自身はあまり気にしていないようだが。
俺が布団の上でゴロンと転がりうつ伏せになると、腰のあたりに軽いがしっかりとした重みを感じた。
「ますたー。あまり気負いすぎないよう、何かあれば私もお手伝いします」
俺の上に乗っているのはどうやらエルのようだ。
ヨリヒメも出てくるかと思ったが、どうやら爆睡中みたいだ。
ムラクモとヒサメは刀の姿で壁に立てられていた。ヒサメの鍔にムラクモの柄が寄りかかっている。それはムラクモがヒサメの方を借りて眠っているようにも見えた。
「ふふっますたー。寂しいのなら私が添い寝してあげましょうか?」
俺がムラクモとヒサメを見て何を思っていたのか察したエルがからかうように言ってくる。
「ならお願いしようかな」
「……え?」
そう返ってくるとは思っていなかったのか、エルは驚いたように声を出す。
「い、いえ今のは……」
「まさか一度ったことをやらないとは言わないよね?」
俺はエルの方を向き煽る。
すると、エルは俺の頭を右の掌で叩く。
「し、しょうがないですね。本当にますたーは。ますたーが寝るまでですよ?」
そう言うとエルは普段は仕舞っている白い翼を広げ、うつ伏せになっている俺の背中に倒れ込む。
エルの頭が背中のど真ん中に来る。そして、俺のお腹の方に手を回すと両腕で俺を抱きしめ、毛布の代わりと言わんばかりに翼で俺を包む。
まさかあのエルがここまでしてくれるとは思っていなかったが、エルの心地よい体温と翼に包まれて、俺は静かに意識を落としていった。
ガチャ
俺が心地よく寝ていると、ドアを開けるそんな音が聞こえる。
俺の背中からいつの間にかエルは消えており、俺の背中には毛布が掛けられていた。
再び音が鳴る。次は扉を閉める音だ。
エルが何も言ってこないということは危険人物ではないということだ。
俺は起き上がり、入ってきた人物を確かめる。
部屋の中は薄暗く、入ってきた奴の顔は確認できない。俺は窓際により、カーテンを開ける。
外を見ると暗い中、少しの明かりが見える。それは太陽の明かりだ。
つまり、今の時間帯は夜明け前と言うことだ。
俺は振り返り、入ってきた人物を確かめる。
俺の部屋に入ってきていたのは、寝間着姿のティナだった。
だがよく見ると、様子がおかしい。
歩き方はよろよろ、目の焦点は合っていない。だがしっかりと俺の方を向いている。
「おい、ティナ」
俺が呼びかけると、ティナは扉の方に戻っていく。
扉をあけ、廊下に出る。
すると、また俺の方を見る。そしてそのまま停止している。
どうやら寝ぼけているわけでもなく。ティナの意識もなさそうだ。でもそれから何かがいいがあると思えなかった。
俺がティナに近寄ろうとすると、ティナは静かに歩きだす。
「ついて来いってことか?」
ティナは廊下から玄関へ、そして律儀に靴を履きだが寝間着のまま外に出る。
そして、どこかに向かうように歩き出す。
俺と一定距離空くと動きを止め、俺の方向をじーっと見つめてくる。
その目に光はなく、やはり歩き方も危なっかしい歩き方だ。ふらふらと里のわき道から外にでる。
山のごつごつした道をふらふらしながらも確実に進んでいく。
俺はそんなティナの後ろに付くようにしてあとを追う。
ティナがこの道を進んでいてわかるのは向かっている場所だ。
それは俺も行きたかった場所。そう祭壇だ。
祭壇は里の反対側、山を掘りぬいたかのような穴の中にある。
しばらく歩き、到着したのはやはり、祭壇のある山の反対側だった。
穴の前には横に1本ロープがある。
ティナはそれをくぐり、作られた階段を下っていく。
下った先にあったのは少し大きめの空間と、祭壇と呼べるそれだった。
到着すると、ティナが俺の方を向く。
それは焦点のあってない眼ではなく。しっかりと俺を目で捉えている。
だがその目のハイライトは消え虚ろだ。
そして誰かが乗り移ったであろうティナが口を開き俺を呼んだ。
「久しぶりだね。月影悠君」
と、俺の名前をフルネームで呼んだ。
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