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3章:王都招集

81:襲撃の痕跡

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「それじゃあ、説明するにあたって、俺より適任の奴がいる。エル!」

 俺はエルに実体化するように言った。
 すると俺が座っているソファーの横に翼を隠した状態で、エルが実体化した。

「初めまして、ご紹介に預かったファマエルです。どうぞ気軽にエルとお呼び下さい」

 エルを見た2人は目を見開き驚いていた。
 ちなみにアイリスは知っていた。何度か修行中に出てきていたからな。

「おい、今その子どうやって出てきた」
「まぁ、俺のスキルとしか言いようがないよな」
「はい、私はますたーの所有物です」

 いや、確かに間違ってないけど、誤解を招きそうな言葉はやめてほしい。

「それじゃあ、エル説明を頼む」
「了解しました」

 そして、エルの説明が始まった。俺もある程度は聞いていたが、それでも全部ではない。

「今回の魔物の迷宮都市の襲撃は、お察しの通り人為的に行われたものです」
「なっ! いったい誰が!」
「誰がと言われれば、候補は二つ。一つは魔王軍。そしてもう一つは聖神教です」

 それは俺も予想できてたことだ。

「ますたーが撃退、いえテイムした黒竜種の仔竜も暴走状態で、襲ってきたあれも、どちらかが関係していると思われます。今回の大型Sランクモンスターも暴走状態にありましたから」
「ぼ、暴走状態ですか?」

 アイリスがエルに質問する。

「はい、今回の暴走は魔物の意識が少し残された中途半端な暴走でしたが、黒竜襲撃の時の暴走は、自我を失くす程度の暴走です。自我を失くせば、攻撃は単調になり討伐はそこまで難しくありません。ですが今回の暴走は自我が残され、暴走させられていました。これを人為的と言わずして何と言いましょう。黒竜の時は呪術の類がかけられていましたし、同一犯だと思われます」
「と言うことは、魔王側が、こちらに攻撃を仕掛けている可能性があると?」
「そういうことです。今回の襲撃もあなたが出れば、終息が付いたのでしょう?」

 ラースはこれでも元SSランク冒険者、フロンの話を聞く限り実力は本物だ。

「いや、一人じゃ無理だな。後護るものと言う条件が付けばさらに厳しくなるな、俺はどちらかと言うと、1対1を望む形の戦い方だからな」
「エル、俺も気になることがある」
「なんですかますたー?」
「まず、あの大量の魔物はどこから来た?」
「推測ですが、魔国の方角からかと」

 エルは王城で一度地図を見せてもらっている。ユニーク:完全記憶で、見たものなどは忘れない。

「魔国との間には妖精種の国があります」

 エルフと言う単語を聞いた瞬間フィーがびくっと震える。

「エルフの国とオルディナの町の間には私の故郷もありますね」

 そう言ったのはティナだ。
 俺はもうこの時すでに次の目的地を決めている。
 もともと縛られるつもりはないし、タイミングのいい時に王都を出るつもりだった。

「俺たちの今の目的は、癪だが勇者達と同じ魔王の討伐だ。でもその前に寄りたい場所もある。俺たちは近いうちに王都を出てそこを目指す」

 俺がこういうと、アイリスが「なぜ?」と言いたげな目線を向けてくる。

「アイリス。別にずっと会えないわけじゃない」
「なら私も旅に!」
「だめです」

 アイリスの発言を止めたのはレジーナだ。

「姫様は、この国の姫です。そんな人が、魔王を倒すたびについていけるとでも?」
「で、でも」
「確かにこの短期間に、姫様は強くなりました。でも私たちが姫様に剣を持つことを許したのはあくまで、自身の身を守るための手段です。その事をどうかお忘れなく」
「わ、わかってるわ」

 すると、アイリスは立ち上がり、出口の方へ向かった。そのすれ違う時、俺の耳元で、アイリスはこういった。

「私はユウ様をお慕いしてますよ」

 そしてアイリスは、部屋から出て行った。

「すまない。うちの姫様が迷惑を……」

 アイリスが出ていくのを確認すると、レジーナは頭を下げた。
 ほんとはこいつだって、アイリスの自由にさせてやりたいんだろうけど、それができないから、レジーナはこんな顔を顔をしているのだろう。

「いや、いい。とりあえず。今回の件はこれで説明終わりだ。まだ数日はいるから、その間も修行の件を頼む。俺はまた明日、アイリスと話しに行くよ」
「わかった。姫様を頼む」
「あぁ、任された」

 俺はティナたちを連れ、ソルロスの宿へと戻った。

 ソルロスの宿に着くと、俺の目に入ったのはノワールを抱きしめるシーナの姿だ。もちろん仔竜の姿だ。

「あっ、ユウさんおかえりなさい」

 そう言って俺を出迎えたのはアーミルだ。その後ろから、不機嫌そうなミラとアーナの手伝いをしていたであろう、フロンが出てきた。

「あっご主人様おかえりなさい」
「あぁ、早いがご飯貰えるか」
「あっちょっと待ってね」

 アーミルがご飯の準備のため、厨房へと戻っていった。
 俺もフロンに明日は普段通り修行だと伝えると、嫌そうな顔をした。
 俺も明日はアイリスと話に行かなければいけないので、ご飯をもらった俺はすぐに眠りについた。
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