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2章:神の種と迷宮都市

52:氷の世界

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 俺は今11階層に来ている。
 ただ、言うなら相手がいまいち物足りない。
 スケルトンなどは、集団行動している。ここら辺をソロで潜っているのなんて俺ぐらいだろう。
 天星ノ瞳がある俺は道に迷ったり、魔物などに囲まれることもほとんどない。
 
「さて、ここにいつまでもいても、あれだしな。さっさと進むか」

 俺は天星ノ瞳で道を探りながら、さっそうと道を進んでいく。
 すると前方に敵の反応があった。スケルトン6体程度だ。
 俺は走って接近する。俺の足音に気づき、こちらを向くスケルトンたち。俺はムラクモの柄へと手をかける。

飛炎ヒエン迦具土カグツチ

 勢いよく抜刀されたムラクモの刀身から炎の斬撃が飛び出す。
 スケルトン一体に当たるとそれは拡散し、周りのスケルトン共々焼き尽くす。
 遠距離攻撃もできる俺は、集団戦闘になかなか引っかからない。遠くから殲滅できるし、近寄ってきても対応可能だ。
 俺は魔法剣士の類なのだろうか。
 俺が姿霧氷雨を使っていない理由は、単純に周りに人が多いからだ。
 天星ノ瞳に映る反応は俺の青色と魔物などの敵意ある者の赤色、それと冒険者などの中立の緑色だ。
 今はその緑色が多いから使えないのだ。こんな狭い中で、あんな氷だらけにしてしまったらどうしようもないからな。
 そんなことを気にしながらもどんどんと階層を進んでいく。11.12.13.14.15と1階層ずつ確実に。

 そして16層に入ってからだろうか、ムラクモの一撃で倒せない相手が出てきた。
 例えば今、俺の目の前にいる蜘蛛型の魔物とかだ。

『視影ノ瞳』

 弐瞳を使い俺に見えてくるのは相手のステータスだ。

『アーマー・スパイダー
 属性 :なし
 状態 :健康
 スキル:物理装甲 操糸
 耐性 :毒耐性 物理耐性』

 そう、こいつは物理に強い。ムラクモでも1撃では削り切れない。3撃ぐらいは必要になるだろう。だが、対処法は簡単だ。

『縮地』『黒炎』

 俺はアーマー・スパイダーの糸を躱し接近すると、その外殻へと手を触れさせ魔法を放った。
 単純な魔法ぐらいは普通に躱されてしまうから、接近して確実に仕留める。ただこれだけだ。闇魔法には物理系や精神関与系が多いため、こういう相手には不向きだ。

 まぁ、一撃で倒せないだけで、今までとそう差しさわりはない。俺は気にすることなくまたどんどんと階層を下っていく。
 16.17.18.19と降りて、今は19階層。前の5階層から10階層に行っただけで驚かれていたから、これを知ったらフェルとかは、どんな反応をするだろうか。
 さすがにここまで来ると、冒険者の数も減ってくる。周りをちらほら見るが、Cランク以上のパーティばかりだ。
 そいつらは俺を見ると二つの反応を見せる。俺のことを知ってるやつは、あまり近寄ってこないし、距離を置く。俺のことを知らない奴等は、俺を哀れな目で見るか、帰るように促してくる。
 つまりここは一人でいるような場所じゃないってことだ。まぁ、知ってるが
 俺は忠告されてもそれを聞くことなく進んでいく。魔物を狩る時もほかの奴らが戦っていないものを狙う。面倒ごとは嫌いだから。

 そして俺は20階層の最後の門へとたどり着いた。
 ダンジョンのボス部屋は一つのグループが入ると、外からは開かない。
 そして俺は一人で、その門を開いた。

 門の中に居たのは、一言で言えば蛇。少し情報を付け加えるなら、首が2本ある。

『視影ノ瞳』

 視影ノ瞳を使い、俺の目に映されたステータスはこうだ。

『ツイン・サーペント
 属性 :なし
 状態 :健康
 スキル:物理装甲 毒吐息 麻痺吐息 並列思考
 耐性 :物理耐性 毒耐性 麻痺耐性』

 デバフを使うタイプのめんどくさい敵のようだ。
 今の俺は一人、どっちかに引っかかれば状況はひどくなるだろう。
 そして俺として嬉しいことは、ここが1グループしか入れない、つまり今この空間にいるのは俺だけ、ということだ。

「ようやくお前が使えるな」

 俺はそう言いながら、姿霧氷雨を抜刀する。
 抜刀された刀身は、黒く染まった氷のようだった。

(エル。あいつの解析、できればエルが並列思考を取れるようにしてくれ)
《了解です。ますたー》
〝私は?〟
(今回はお休みだ)
〝ん〟

 俺は刀を構えなおし、ツイン・サーペントと向き合う。
 ツイン・サーペントはアーマー・スパイダーと同じく物理耐性が高い。ちょっとめんどくさい相手だが、それでちょうどいい。
 
「シャアァァァ」

 先に均衡を破ったのはツイン・サーペントだった。咆哮をあげ、俺に向かって麻痺吐息を吐いてくる。

『月詠ノ瞳』

 俺は視界内のツイン・サーペントの後ろ側へと転移する。
 そしてそのまま後ろ側から斬りつける。

 ガキン

 と、そんな音と共に刀が弾かれる。それでも、ツイン・サーペントの鱗には十分な切り傷が付いていた。

「やっぱり硬いな」

 後ろ向きのまま、尻尾を振り下ろしてくるそれを、バックステップで回避し、そのまま距離を取る。
 俺は刀を鞘へは仕舞わず、刀身に指を添え居合の構えを取る。

『#雪花一閃__セッカイッセン__#』

 刀身から放たれるは、氷属性の斬撃。その横の一閃はツイン・サーペントの尻尾を容易く切り落とした。
 ツイン・サーペントは咆哮をあげ、俺から距離を取る。

「魔法の属性が加わるとここまで変わるのか」

 さっきの斬撃は物理3割、魔法7割ってところだ。
 次は、ユニークスキルだ。

『欠け放て!』

 俺の言葉と共に姿霧氷雨の刀身は3割を残し、砕け散った。
 砕けた刀身は3つの刃へと姿を変え、ツイン・サーペントへと向かって飛んでいく。
 その3本の刃はツイン・サーペントの体を確実に傷つけていく。
 ツイン・サーペントは攻撃を避けられないまま、ただ声をあげる。
 それと同時に、どこからか小さい蛇型の魔物が湧いて出てくる。それらは俺に向かってくるが、
 それは俺が詠唱を唱え終わるには十分だった。
 
『白く暗き世界を我は求。陰の理は我に有り。其の全てを零に帰せ! 氷の世界ニブルヘイム

 俺は短くなった姿霧氷雨の刀身を地面へと突き刺す。
 その瞬間。刀身の切っ先を中心にして、俺以外のすべてが凍った。
 出てきた小さい蛇もツイン・サーペントも壁も地面もすべて。
 そこはまるで、氷の世界だった。
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