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6章:神々の思惑
122.お尋ね
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あれから数週間。会議を終えてからそれぞれが、それぞれの目的を目指し準備を進めていた。その者たち動かしたのはユウであり、あの場にいた全員がその提案を呑んだからこそ、動いたのである。
「ユウ様、本当によろしいのですか?」
「ティナは心配性だな。大丈夫だよ」
ティナが心配するのもわかる。なにせ俺が提案した内容、方法は俺が一番負担が多く危険だからだ。提案した側として自分が一番危険な目に合う、それは当然だろう。まぁ、それだけの目的が俺にはあるってことだからしかたがない。
「それにしても結構遠いもんだな」
「まぁ普通、人の足でこの速度を走ってここまで来る方がおかしいのですが。普通、馬車で何週間もかけて着く場所なんですよ? でもなんだかこの感覚に慣れて来てしまいました」
はぁ、とため息を吐きながら、ティナは自分も人外へ向かっているという自覚が芽生えてきてしまっていた。
俺たちは今、巫女の里へと足を向けてる。目的はクロノスとの会話である。
唐突にただ「来い」とだけ念話が流れたからだ。普通に念話をすればいいと思うが、それは神ならではの理由があるのだろう。知らんが、すっぽかすわけにもいかないからこうしているのである。
巫女の里に向かっているのは俺とティナ、ヒサメの三人だけだ。まぁ言ってしまえば必 要最低限な人数だ。
前と同じように森の動物、魔物を狩りながら進んでいる。ティナは里へのお土産として道中で果実なども集めていた。
「そういえば、今頃フロンたちはオルディナの町に向かっているんですよね」
「あぁ、そのはずだ。もうそろそろつく頃じゃないか?」
フロン達には、クルス伯爵とヘイルたちへの頼みごとを代わりに伝えてほしいとお願いした。離れて行動することに駄々をこねたフロンとフィーだったが、ノワールが森で暴れたことについての謝罪を伯爵たちに伝えたいというと、さっきまで子供の様に駄々をこねていた二人は、母性本能か何かをくすぐられたのか、自らノワールの為にオルディナの町へと行くと言い出したのだ。本当のことを言えば俺も伯爵たちに会いに行きたかったんだが、あの|神(バカ)のせいで予定が狂ったのだ。
まぁ、あのメンツなら大丈夫だと思うが、万が一の時には意思疎通で念話が飛んでくるはずだ。
で、連絡の取れていなかったもう一人の|黒鬼(バカ)からは
「もう少しだけ時間を頂戴。すぐ戻るから!」
急いでいるようだったが、声は明るく、楽しそうだったから戻ってくるまでは放っておこうと思う。俺が怒らなくてもどうせ心配性なティナが怒るだろうからな。まぁ、だから俺が怒らないわけじゃないけどな。
そんな俺の視線を感じたのかティナが俺を見て首を傾げていた。
〝ねぇ暴れたりなーい。というかおねぇさんの前でいちゃつくのやめてよー。襲っちゃうぞ〟
(してない。いきなり物騒なこと言うな)
〝むぅ~〟
なぜか嫉妬をしているヒサメのことは放っておいて、俺とティナは再び里へと向けて走り出した。
俺たちは速度を上げ、巫女の里へと向かった。
「だ、誰か俺にこの状況を説明してくれ……」
門を守る兵その指揮を任されていたその者の質問に、その場にいるものは誰一人として答えられなかった。
沈黙が続く中、その均衡を破ったのは少女の声だった。
「すいません。主の命でここに使いとしてきました。クルス伯爵を呼んでいただけますか?」
伯爵の名前が出て少女の口から出たことに兵士たちは一層警戒を高め、手に持つ武器を構えはじめる。目の前にいるのはたった今伯爵の名前を口にした少女と、ハーフエルフの女だった。
たかが女二人、それだけなら兵士がここまで警戒するはずがない。兵士たちが最も警戒している対象、それは少女の横に並び、顎を撫でられ気持ちよさそうにしている黒竜だった。
「それだけじゃ兵士の皆さんが余計に警戒しちゃうでしょうが」
「必要最低限を話したつもりなんです」
「それがいけないのよ」
そんな兵士たちの警戒も虚しく、目の前で会話が進んでいく。
「これは一体どう言う状況だ? ってそいつは……」
固まる兵士たちをかき分け、少女の前に現れたのは長い赤髪、腰には長剣。それは少女の探している人物の一人だった。
「もしかして貴方がヘイルさんですか?」
「ん? あぁ、そうだが。お前たちは一体」
ヘイルは黒竜を見た時から違和感を感じながらも警戒を解いていた。それは目の前の黒竜を見たことがあり、その黒竜からも、目の前の二人からも全くと言っていい程に殺気を感じなかったからだ。
「私たちは主であるユウ・ツキカゲの命によってここオルディナの町に使いとして来ました。フィリア・といいます。
「同じくフロン・フィールです。この街のギルドマスターであるヘイルさんとクルス伯爵にユウ様からのお願いを伝えに来ました」
ヘイルは黒竜を撫でる少女の言葉に嫌な予感を覚えながらも、それに応じない選択肢がないことをわかっていた。兵士たちの警戒を解き、フロンと名乗る少女に黒竜を別の場所で待たせることを条件にだした。だが、黒竜は首を振りそれを拒否した。従魔になれば人の言葉を理解できるようになることがある。それを知っているヘイルでもまさか、そんな反応をされるとは思わなかった。
「すいません。それに関しては承諾できません。それはユウ様の命に関係なく、この子の意思なんです。どうかお許しを」
「でもその図体で、街の中を歩くのは街の者たちを怖がらせてしまう」
「それに関してはご心配なく。ノワール縮んで」
フロンが黒竜を撫でながらそう言うと、成竜のサイズだった黒竜は少女の腕の中に収まる程度のサイズまで縮んでしまった。
そんなことを目の前で見た兵士は目を見開いた。ただ一人、ヘイルだけはため息をついていた。
さぁ、これでいいでしょう? と言わんばかりのフロンのドヤ顔を見たヘイルは、肩を落としながら二人を街の中へと案内した。
「ユウ様、本当によろしいのですか?」
「ティナは心配性だな。大丈夫だよ」
ティナが心配するのもわかる。なにせ俺が提案した内容、方法は俺が一番負担が多く危険だからだ。提案した側として自分が一番危険な目に合う、それは当然だろう。まぁ、それだけの目的が俺にはあるってことだからしかたがない。
「それにしても結構遠いもんだな」
「まぁ普通、人の足でこの速度を走ってここまで来る方がおかしいのですが。普通、馬車で何週間もかけて着く場所なんですよ? でもなんだかこの感覚に慣れて来てしまいました」
はぁ、とため息を吐きながら、ティナは自分も人外へ向かっているという自覚が芽生えてきてしまっていた。
俺たちは今、巫女の里へと足を向けてる。目的はクロノスとの会話である。
唐突にただ「来い」とだけ念話が流れたからだ。普通に念話をすればいいと思うが、それは神ならではの理由があるのだろう。知らんが、すっぽかすわけにもいかないからこうしているのである。
巫女の里に向かっているのは俺とティナ、ヒサメの三人だけだ。まぁ言ってしまえば必 要最低限な人数だ。
前と同じように森の動物、魔物を狩りながら進んでいる。ティナは里へのお土産として道中で果実なども集めていた。
「そういえば、今頃フロンたちはオルディナの町に向かっているんですよね」
「あぁ、そのはずだ。もうそろそろつく頃じゃないか?」
フロン達には、クルス伯爵とヘイルたちへの頼みごとを代わりに伝えてほしいとお願いした。離れて行動することに駄々をこねたフロンとフィーだったが、ノワールが森で暴れたことについての謝罪を伯爵たちに伝えたいというと、さっきまで子供の様に駄々をこねていた二人は、母性本能か何かをくすぐられたのか、自らノワールの為にオルディナの町へと行くと言い出したのだ。本当のことを言えば俺も伯爵たちに会いに行きたかったんだが、あの|神(バカ)のせいで予定が狂ったのだ。
まぁ、あのメンツなら大丈夫だと思うが、万が一の時には意思疎通で念話が飛んでくるはずだ。
で、連絡の取れていなかったもう一人の|黒鬼(バカ)からは
「もう少しだけ時間を頂戴。すぐ戻るから!」
急いでいるようだったが、声は明るく、楽しそうだったから戻ってくるまでは放っておこうと思う。俺が怒らなくてもどうせ心配性なティナが怒るだろうからな。まぁ、だから俺が怒らないわけじゃないけどな。
そんな俺の視線を感じたのかティナが俺を見て首を傾げていた。
〝ねぇ暴れたりなーい。というかおねぇさんの前でいちゃつくのやめてよー。襲っちゃうぞ〟
(してない。いきなり物騒なこと言うな)
〝むぅ~〟
なぜか嫉妬をしているヒサメのことは放っておいて、俺とティナは再び里へと向けて走り出した。
俺たちは速度を上げ、巫女の里へと向かった。
「だ、誰か俺にこの状況を説明してくれ……」
門を守る兵その指揮を任されていたその者の質問に、その場にいるものは誰一人として答えられなかった。
沈黙が続く中、その均衡を破ったのは少女の声だった。
「すいません。主の命でここに使いとしてきました。クルス伯爵を呼んでいただけますか?」
伯爵の名前が出て少女の口から出たことに兵士たちは一層警戒を高め、手に持つ武器を構えはじめる。目の前にいるのはたった今伯爵の名前を口にした少女と、ハーフエルフの女だった。
たかが女二人、それだけなら兵士がここまで警戒するはずがない。兵士たちが最も警戒している対象、それは少女の横に並び、顎を撫でられ気持ちよさそうにしている黒竜だった。
「それだけじゃ兵士の皆さんが余計に警戒しちゃうでしょうが」
「必要最低限を話したつもりなんです」
「それがいけないのよ」
そんな兵士たちの警戒も虚しく、目の前で会話が進んでいく。
「これは一体どう言う状況だ? ってそいつは……」
固まる兵士たちをかき分け、少女の前に現れたのは長い赤髪、腰には長剣。それは少女の探している人物の一人だった。
「もしかして貴方がヘイルさんですか?」
「ん? あぁ、そうだが。お前たちは一体」
ヘイルは黒竜を見た時から違和感を感じながらも警戒を解いていた。それは目の前の黒竜を見たことがあり、その黒竜からも、目の前の二人からも全くと言っていい程に殺気を感じなかったからだ。
「私たちは主であるユウ・ツキカゲの命によってここオルディナの町に使いとして来ました。フィリア・といいます。
「同じくフロン・フィールです。この街のギルドマスターであるヘイルさんとクルス伯爵にユウ様からのお願いを伝えに来ました」
ヘイルは黒竜を撫でる少女の言葉に嫌な予感を覚えながらも、それに応じない選択肢がないことをわかっていた。兵士たちの警戒を解き、フロンと名乗る少女に黒竜を別の場所で待たせることを条件にだした。だが、黒竜は首を振りそれを拒否した。従魔になれば人の言葉を理解できるようになることがある。それを知っているヘイルでもまさか、そんな反応をされるとは思わなかった。
「すいません。それに関しては承諾できません。それはユウ様の命に関係なく、この子の意思なんです。どうかお許しを」
「でもその図体で、街の中を歩くのは街の者たちを怖がらせてしまう」
「それに関してはご心配なく。ノワール縮んで」
フロンが黒竜を撫でながらそう言うと、成竜のサイズだった黒竜は少女の腕の中に収まる程度のサイズまで縮んでしまった。
そんなことを目の前で見た兵士は目を見開いた。ただ一人、ヘイルだけはため息をついていた。
さぁ、これでいいでしょう? と言わんばかりのフロンのドヤ顔を見たヘイルは、肩を落としながら二人を街の中へと案内した。
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