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Ⅱ ―奇剣『ラ・トナ』―
2-1 ホールギスの館
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きっと、幸運だったのだろう。
あの日、故郷が物理的に跡形もなく消え去り、知人も家族も友人も全てを失いながら、それでも俺はそう信じていた。
消え去ったのだ。俺以外の全てが消え去りながら、偶然にも街を離れていた俺だけが生き残った。作為も何もない、純粋な不幸の回避。それを成し遂げた俺は、紛う事なくとびきりの幸運に恵まれているに違いない。
それだけを信じて生きてきた。ただ幸運に身を任せることで、何も考えず悲しむこともなく生きることができた。
そう、仮に、俺がただ一人生き残った幸運な人間でなければ、きっとクーリア・パトスについて考える事を止める事はできなかっただろう。
「君が、クロナの恋人かい?」
男の第一声は、それだった。
「いや、違う」
即座に否定を返せたのは、自分で自分を褒めてやるべきだろう。
クロナに渡された住所を頼りに辿り着いた場所はやや郊外にある巨大な屋敷で、ご丁寧に使用人の女性に入口から案内されて本館の前まで。そこで待ち受けていた、若いながら如何にも屋敷の主人といった雰囲気の男からの第一声が、予想外のそれだ。上手く反応できなくても仕方がないところで、しかし俺は否定を口にする事ができていた。
「あぁっ、来たぁ。もぉ~、待ってたんだからね、シモン!」
直後、屋敷の奥から甘ったるい声が聞こえた。だが、遅い。
声の主は、当然ながらクロナ。いつもの少女趣味が過ぎるその服装も、なぜだか豪奢過ぎる屋敷の中では不思議と調和して見えた。
「やっぱり、君がクロナの恋人のシモン君か」
「……ん?」
男の言葉に、違和感。
「ありがとう、良く来てくれた。僕は君の義兄……おっと、まだ早かったかな。クロナの兄のナナロ・ホールギスだ。今日は是非、ゆっくりしていって欲しい。何なら泊まっていってくれても構わないよ。むしろ、このままずっと帰らなくてもいい」
「いや、あれ、えっ?」
過剰な歓迎に背中を押され、そのままズルズルと屋敷の中へ。
おかしい、俺はたしかにナナロの言葉を否定したはず。それなのに、この対応はどう考えても俺をクロナの恋人だと認識した上でのものだ。よもや耳が聞こえていないわけでもあるまいし、明らかに反応が異常だ。
「クロナ、何これ?」
「んー? 妹に恋人ができたのが嬉しいんじゃない?」
「違う、前提だ! いつ俺がお前の恋人になったんだ?」
「えー、嫌なの?」
細かい事情を全てさておいて、クロナは潤んだ瞳で俺を見上げてくる。正直、その姿には心惹かれるものはあった。元より容姿は端麗、庇護欲を掻き立てるような表情は幼さを前面に押し出し、少女趣味の衣服の奇怪さを一時的に打ち消していた。そして何より魅力的なのはこの屋敷で、クロナの恋人になればその潤沢な資産の恩恵を受けられる事だろう。
「嫌です」
それでも、答えは決まっている。
「ひどくない!? 断るにしても、せめて好きな人がいるから、とか相手を傷つけない理由の一つや二つ用意するべきだと思うんだけど!」
「嫌だよ面倒くさい」
そもそも悪ふざけに過ぎない現状にまともに答えてやる必要もなく、下手に弄ばれるくらいなら適当に否定するのが正解だ。
「二人仲睦まじいのはいい事だけれど、立ち話はその辺りで切り上げて、続きは中に入ってからにしないかい?」
しかしながら、ナナロは俺とクロナの会話を完全に無視して話を進めていた。
「……ねぇ、なんであの人は全然話聞いてないわけ?」
「君が何を言っても照れ隠しだから気にしないようにって言ってあるんだよね」
「いや、だとしても度が過ぎるだろ。後、その前置きの意味もわからん」
「これでも兄妹だからね。初対面の君が何を言っても、妹の私の方を信じるでしょ」
「はぁ……」
まったく納得はいかないが、他に説明もつかない以上はとりあえずクロナの言葉を受け入れるしかない。
ナナロは一見して如何にも成功者といった外見をした身なりの良い青年だが、クロナの兄であると同時に『世界平和維持協会』などという胡散臭い団体の長だ。多少おかしなところがあっても一々驚くべきではないのかもしれない。
「ここが応接室だ。好きな場所に腰掛けてくれて構わないよ。茶菓子の類は、使用人が運んでくるまで少し待ってもらえるかな」
そうこうしている間にナナロの先導で辿り着いた部屋は、屋敷の規模通りの豪華なものだった。言うが早いか奥から現れた若い女の使用人が運んできた菓子類も、見るからに高級品といった雰囲気で、その上やたらと量が多い。
「さて、じゃあ早速だけど本題に入ろうか」
各々が茶杯に口を付けたところで、ナナロはごく自然にそう切り出した。
「たしか、シモン君は僕達の仕事に同行したいという話だったね?」
ナナロの言葉は間違いではないが、微妙に順序が違う。元はクロナが俺に依頼を持ち込んできたわけで、俺の方からそれに参加したいと言い出したわけではない。単なるクロナの説明不足か、あるいはあえて誤解させているのか。
「…………」
クロナに視線を向けると、小さく頷いて返される。完全に意思疎通ができたわけではないが、肯定を促している事はわかった。
「ええ。人造魔剣の破壊、それに俺も同行したいと考えています」
「……僕も、君の気持ちがわからないわけではない。ただ、今回の件は危険を伴う。身体的にも、それに立場的にもだ。もしも無事で返って来れたとしても、事が失敗に終わった場合には犯罪者として追われる事になるかもしれない。その覚悟が君にはあるかい?」
事の詳細についてはこの場で説明を受ける手筈だったため全てを知っているわけではないが、クロナ曰くに彼女達の目的である人造魔剣とやらはこの国、リロス共和国の軍部の一派が作り上げたものだという。相手が個人の道楽ならともかく、国の軍事研究に首を突っ込んで失敗すれば、この国で、あるいは国際的に指名手配を受ける可能性は十分にある。
「もちろん、承知の上です」
だが、その程度のリスクは覚悟するまでもない。元より、今の俺にはもう失うものなどないのだから。
「気に入ったよ、シモン・ケトラトス」
「どうも」
俺の内面を知ってか知らずか、ナナロはどこか驚いたような笑顔を浮かべて俺へと手を差し出した。男の手を握る趣味はないが、礼儀として軽く手を添えておく。
「もしもの時には、妹を頼む。君になら、任せられる」
「……ん?」
手に強い圧を感じながら、頭にはまたも疑問。
ナナロが俺をクロナの恋人だと勘違いしている事は、この際まだいい。ただ、何かが致命的にズレている気がした。
「……っ、シモンっ、そんなに私の事をっ」
「えぇ……」
助けを求めようと目配せをする前に、盛大に泣きじゃくったクロナが俺に覆い被さるように抱きついてくる。後ろに倒れるわけにもいかず、半ば必然的に抱き返す形になる。
「僕は先に場所を移しておくよ。急がなくていいから、しばらく二人でいるといい」
何か物分りのいい兄風の台詞を残して、ナナロは部屋の奥の扉から消えていった。
「……えぇっと、クロナさん? 情緒と頭は大丈夫ですか?」
「っ……ひっ、うぅっ、わぁああんっ!」
「いや、え? えぇ?」
ひとまず距離を離そうとした寸前、クロナの泣き声が一際強くなり、解きかけていた腕に思わず力が入る。
「……撫でて?」
抱き直してしまった腕の中、涙目の上目遣いから甘ったるい声が飛んでくる。
「はい?」
「ぅ、ひっくっ……んっ、うあぁあぁぁん!」
首を傾げて問うと、返ってきたのは再びの号泣。
「……うわっ、キツっ」
「――ちょっ、キツいってどこが!? どう考えても死ぬほど可愛かったでしょ!?」
思わず口から零れた本音に、腕の中からは絶叫。跳ね上がってきた頭をギリギリで首を引いて躱し、なおも暴れるクロナを放り出して距離を取る。
「えぇ……なんて言うか、全体的に、えぇ……?」
「なんでドン引きしてるわけ!? ……そんなにひどかった?」
「いや、もう、わかんない。お前が嘘泣きしてた理由もわかんないし、俺が今どういう感情なのかすら良くわかんない」
「そんな事はどうでもいいの! 私が可愛かったかキツかったか、どっち!?」
「それはどっちかと言えば……まぁ、キツかった」
「……うわぁぁあああぁん!!」
今度はおそらく本気で泣き出したクロナを前に、俺もしばらく自分の中での整理を付けるために時間を使う事にした。
あの日、故郷が物理的に跡形もなく消え去り、知人も家族も友人も全てを失いながら、それでも俺はそう信じていた。
消え去ったのだ。俺以外の全てが消え去りながら、偶然にも街を離れていた俺だけが生き残った。作為も何もない、純粋な不幸の回避。それを成し遂げた俺は、紛う事なくとびきりの幸運に恵まれているに違いない。
それだけを信じて生きてきた。ただ幸運に身を任せることで、何も考えず悲しむこともなく生きることができた。
そう、仮に、俺がただ一人生き残った幸運な人間でなければ、きっとクーリア・パトスについて考える事を止める事はできなかっただろう。
「君が、クロナの恋人かい?」
男の第一声は、それだった。
「いや、違う」
即座に否定を返せたのは、自分で自分を褒めてやるべきだろう。
クロナに渡された住所を頼りに辿り着いた場所はやや郊外にある巨大な屋敷で、ご丁寧に使用人の女性に入口から案内されて本館の前まで。そこで待ち受けていた、若いながら如何にも屋敷の主人といった雰囲気の男からの第一声が、予想外のそれだ。上手く反応できなくても仕方がないところで、しかし俺は否定を口にする事ができていた。
「あぁっ、来たぁ。もぉ~、待ってたんだからね、シモン!」
直後、屋敷の奥から甘ったるい声が聞こえた。だが、遅い。
声の主は、当然ながらクロナ。いつもの少女趣味が過ぎるその服装も、なぜだか豪奢過ぎる屋敷の中では不思議と調和して見えた。
「やっぱり、君がクロナの恋人のシモン君か」
「……ん?」
男の言葉に、違和感。
「ありがとう、良く来てくれた。僕は君の義兄……おっと、まだ早かったかな。クロナの兄のナナロ・ホールギスだ。今日は是非、ゆっくりしていって欲しい。何なら泊まっていってくれても構わないよ。むしろ、このままずっと帰らなくてもいい」
「いや、あれ、えっ?」
過剰な歓迎に背中を押され、そのままズルズルと屋敷の中へ。
おかしい、俺はたしかにナナロの言葉を否定したはず。それなのに、この対応はどう考えても俺をクロナの恋人だと認識した上でのものだ。よもや耳が聞こえていないわけでもあるまいし、明らかに反応が異常だ。
「クロナ、何これ?」
「んー? 妹に恋人ができたのが嬉しいんじゃない?」
「違う、前提だ! いつ俺がお前の恋人になったんだ?」
「えー、嫌なの?」
細かい事情を全てさておいて、クロナは潤んだ瞳で俺を見上げてくる。正直、その姿には心惹かれるものはあった。元より容姿は端麗、庇護欲を掻き立てるような表情は幼さを前面に押し出し、少女趣味の衣服の奇怪さを一時的に打ち消していた。そして何より魅力的なのはこの屋敷で、クロナの恋人になればその潤沢な資産の恩恵を受けられる事だろう。
「嫌です」
それでも、答えは決まっている。
「ひどくない!? 断るにしても、せめて好きな人がいるから、とか相手を傷つけない理由の一つや二つ用意するべきだと思うんだけど!」
「嫌だよ面倒くさい」
そもそも悪ふざけに過ぎない現状にまともに答えてやる必要もなく、下手に弄ばれるくらいなら適当に否定するのが正解だ。
「二人仲睦まじいのはいい事だけれど、立ち話はその辺りで切り上げて、続きは中に入ってからにしないかい?」
しかしながら、ナナロは俺とクロナの会話を完全に無視して話を進めていた。
「……ねぇ、なんであの人は全然話聞いてないわけ?」
「君が何を言っても照れ隠しだから気にしないようにって言ってあるんだよね」
「いや、だとしても度が過ぎるだろ。後、その前置きの意味もわからん」
「これでも兄妹だからね。初対面の君が何を言っても、妹の私の方を信じるでしょ」
「はぁ……」
まったく納得はいかないが、他に説明もつかない以上はとりあえずクロナの言葉を受け入れるしかない。
ナナロは一見して如何にも成功者といった外見をした身なりの良い青年だが、クロナの兄であると同時に『世界平和維持協会』などという胡散臭い団体の長だ。多少おかしなところがあっても一々驚くべきではないのかもしれない。
「ここが応接室だ。好きな場所に腰掛けてくれて構わないよ。茶菓子の類は、使用人が運んでくるまで少し待ってもらえるかな」
そうこうしている間にナナロの先導で辿り着いた部屋は、屋敷の規模通りの豪華なものだった。言うが早いか奥から現れた若い女の使用人が運んできた菓子類も、見るからに高級品といった雰囲気で、その上やたらと量が多い。
「さて、じゃあ早速だけど本題に入ろうか」
各々が茶杯に口を付けたところで、ナナロはごく自然にそう切り出した。
「たしか、シモン君は僕達の仕事に同行したいという話だったね?」
ナナロの言葉は間違いではないが、微妙に順序が違う。元はクロナが俺に依頼を持ち込んできたわけで、俺の方からそれに参加したいと言い出したわけではない。単なるクロナの説明不足か、あるいはあえて誤解させているのか。
「…………」
クロナに視線を向けると、小さく頷いて返される。完全に意思疎通ができたわけではないが、肯定を促している事はわかった。
「ええ。人造魔剣の破壊、それに俺も同行したいと考えています」
「……僕も、君の気持ちがわからないわけではない。ただ、今回の件は危険を伴う。身体的にも、それに立場的にもだ。もしも無事で返って来れたとしても、事が失敗に終わった場合には犯罪者として追われる事になるかもしれない。その覚悟が君にはあるかい?」
事の詳細についてはこの場で説明を受ける手筈だったため全てを知っているわけではないが、クロナ曰くに彼女達の目的である人造魔剣とやらはこの国、リロス共和国の軍部の一派が作り上げたものだという。相手が個人の道楽ならともかく、国の軍事研究に首を突っ込んで失敗すれば、この国で、あるいは国際的に指名手配を受ける可能性は十分にある。
「もちろん、承知の上です」
だが、その程度のリスクは覚悟するまでもない。元より、今の俺にはもう失うものなどないのだから。
「気に入ったよ、シモン・ケトラトス」
「どうも」
俺の内面を知ってか知らずか、ナナロはどこか驚いたような笑顔を浮かべて俺へと手を差し出した。男の手を握る趣味はないが、礼儀として軽く手を添えておく。
「もしもの時には、妹を頼む。君になら、任せられる」
「……ん?」
手に強い圧を感じながら、頭にはまたも疑問。
ナナロが俺をクロナの恋人だと勘違いしている事は、この際まだいい。ただ、何かが致命的にズレている気がした。
「……っ、シモンっ、そんなに私の事をっ」
「えぇ……」
助けを求めようと目配せをする前に、盛大に泣きじゃくったクロナが俺に覆い被さるように抱きついてくる。後ろに倒れるわけにもいかず、半ば必然的に抱き返す形になる。
「僕は先に場所を移しておくよ。急がなくていいから、しばらく二人でいるといい」
何か物分りのいい兄風の台詞を残して、ナナロは部屋の奥の扉から消えていった。
「……えぇっと、クロナさん? 情緒と頭は大丈夫ですか?」
「っ……ひっ、うぅっ、わぁああんっ!」
「いや、え? えぇ?」
ひとまず距離を離そうとした寸前、クロナの泣き声が一際強くなり、解きかけていた腕に思わず力が入る。
「……撫でて?」
抱き直してしまった腕の中、涙目の上目遣いから甘ったるい声が飛んでくる。
「はい?」
「ぅ、ひっくっ……んっ、うあぁあぁぁん!」
首を傾げて問うと、返ってきたのは再びの号泣。
「……うわっ、キツっ」
「――ちょっ、キツいってどこが!? どう考えても死ぬほど可愛かったでしょ!?」
思わず口から零れた本音に、腕の中からは絶叫。跳ね上がってきた頭をギリギリで首を引いて躱し、なおも暴れるクロナを放り出して距離を取る。
「えぇ……なんて言うか、全体的に、えぇ……?」
「なんでドン引きしてるわけ!? ……そんなにひどかった?」
「いや、もう、わかんない。お前が嘘泣きしてた理由もわかんないし、俺が今どういう感情なのかすら良くわかんない」
「そんな事はどうでもいいの! 私が可愛かったかキツかったか、どっち!?」
「それはどっちかと言えば……まぁ、キツかった」
「……うわぁぁあああぁん!!」
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