妹の友達と付き合うために必要なたった一つのこと

玄城 克博

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五章 一

5-3 姦って漢字を感じると

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「……うっ」

 足早に家路を急ぐ途中、背後からの衝撃に襲われ、思わず漏らした声である。それ以上でもそれ以下でもない。

「女の子二人に挟まれてお帰りなんて、いいご身分だね、お兄さん」

 月代先輩と可乃、二人が声も無く驚く中、背後から怨嗟に満ちた声が投げかけられる。

「違う、そのお兄さん呼びはなんか違う」

「嫌味だよ、嫌味! 別に妹の友達ごっこしてるんじゃないもん!」

 そう。背後からの襲撃者は、他でもない柚木その人だった。後ろから飛びついてきた柚木は、そのまま背中に腕を絡めて俺の背に抱きついている。たしかに二人でも三人でもとは言ったけど、なにも本当に三人目と鉢合わせなくてもいいと思う。

「まったく、せっかく遊びに来てあげたのに」

「なんだ、早いな、もう遊びに来たのか。もしかして、柚木って友達いないのか?」

「いるもんっ! ……あっ、でも、ひろ兄には紹介しないから!」

「安心しろ、まだ後三日くらいは柚木の友達に手は出さないはずだ」

「短いよ! 何も安心できない!」

 そうは言われても、大分自信をなくして来ているのは事実であり、今の俺はともすればちょっとしたきっかけで従妹の友達という類似品に逃げ道を見出してしまいかねない。

「従妹の友達がアリになると、私はそれに含まれるのかな?」

「ぅ……月代さんとは仲良くなりたいけど、それはちょっと困るかも」

「それなら、私も! 柚木ちゃん、私も友達よね?」

「海原さんはぜっったいに違う。あと、名前で呼ばないで」

「やっぱり私に冷たくない!?」

 自然と柚木を加えた一行は、文字通り女三人で姦しくしている。男である俺は一人寂しく、文字通り男しくしよう。

「それで、俺の事を好きな女子諸君」

 あまりに男しくしすぎて、俺の口からは何も包み隠さない率直な一言が出てしまった。

「なんだい?」

 それに対し、先輩はあらかじめ知っていたかのようにごく普通の反応。

「……普通、そういう事言う?」

 可乃は可乃で、ある意味普通に呆れ顔を見せ。

「えっ、どういう事? 月代さんも、ひろ兄の事好きなの?」

 柚木は事態が飲み込めていないのか、俺と先輩、そして可乃の顔を順に見比べている。

 それぞれ違う反応を見せる三人。この三人にだからこそ、聞きたい事があった。

「これから、俺はどうすればいいと思う?」
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