妹の友達と付き合うために必要なたった一つのこと

玄城 克博

文字の大きさ
上 下
1 / 36
プロローグ

事の発端

しおりを挟む
 それは、唐突に自覚された。

 おそらくずっと前からこの俺、柊弘人の中にあった一つの感情、あるいは嗜好は、しかし生まれてから実に16回目の年越しを迎える今この時まで、靄に包まれたその正体を露わにする事はなかった。

 だが、全てのピースは嵌った。

 気付いてしまえばもはやそうとしか思えない、むしろなぜこれまで気付かなかったのかと自分を嘲笑いたくなるほど明確な、それでいて今すぐにでも叫び出したくなるような激しい感情を、なんとか喉元で抑えつける。

 今は深夜の2時。何をするにしても、時刻として幾分遅すぎる。

 それでも、俺の中に生まれたこの熱は、一度意識を手放したらそれだけで消えてしまうような、そうでなくとも今よりは薄れてしまう気がしたから。

「よし、一筆書くとしようか」

 せめて決意を文字として残しておこうと、半紙と筆、そして墨汁を用意する。

 筆に墨を絡ませ、いざ一筆目。

「……駄目だ」

 線に魂が籠っていない。こんなものでは俺の決意を表すにはふさわしくない。

「駄目だ、駄目だ、駄目だ」

 二枚目も、三枚目も、四枚目も駄目。『女』の部分すら書き終える前に、次々と半紙を丸め、捨てていく。

「これは、長期戦になりそうだな……」

 いいだろう、望むところだ。完璧な一枚を書き終えるまでやってやろう。



 結局、どうにか納得のいく一枚が完成する頃には朝になっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

猫にまつわる三択人生の末路

ねこ沢ふたよ
ライト文芸
街で黒猫を見かけた・・・さてどうする? そこから始まる三択で行方が変わります。 超簡単なゲームブックです。  基本コメディで楽しく遊べる内容を目指しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

私と継母の極めて平凡な日常

当麻月菜
ライト文芸
ある日突然、父が再婚した。そして再婚後、たった三ヶ月で失踪した。 残されたのは私、橋坂由依(高校二年生)と、継母の琴子さん(32歳のキャリアウーマン)の二人。 「ああ、この人も出て行くんだろうな。私にどれだけ自分が不幸かをぶちまけて」 そう思って覚悟もしたけれど、彼女は出て行かなかった。 そうして始まった継母と私の二人だけの日々は、とても淡々としていながら酷く穏やかで、極めて平凡なものでした。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...