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「もう一度言うよ。メイ、行くよ。」と言われたら「はっ、はいっ……」と反射的に返事をしてしまう。『行こう?』ではなく、『行くよ。』と半分命令口調で言われたらもう従うしかない。本能的にこうなったアキちゃんには逆らわない方がいい、気がする。そして私も表面上は嫌がっているが、本当に嫌だった訳ではない。まるで命令されることを待っていたかのような嬉しささえある。
さっきのアキちゃんは手を差し出してくれたが、今回は背中を向けて手をポケットに入れ、スタスタと歩いていってしまい、少し先で私の様子を伺っていた。私の反抗的な言葉によって態度を変えるとの宣言どおり、もう優しくはしてくれないようだ。少し寂しい、でも嬉しい。しかし今の問題はそれではない。私のナカで震えているモノが問題だ。うっかりすると快感に溺れて達してしまいそうな感覚のなか、私は意を決して立ち上がる。今度はカバンを強く握り直し、少しでも刺激を与えないよう小さな歩幅でアキちゃんの少し後ろまで行く。視線は合わせない。合わせられない。
アキちゃんはそんな私の様子に満足したのか、何か良からぬことを企んでいるのか、ニヤッと笑って足を進めた。その後を私はちょこちょこと付いていく。やっぱりカバンを握りしめていない方の手が寂しいので、アキちゃんの服の裾を掴む。アキちゃんは振り返らない。進んでいく。
「どこっ……行くの?」
少しでもアキちゃんの足の動きを緩めようと必死で聞いてみた。既に結構歩いている。アキちゃんはこちらを気にせず歩くので、必死で足を動かす。
「ここだよ。」と言ったアキちゃんの視線を追う。ここは田舎だと言うのに知名度の高い、割とどこのショッピングセンターでも見かける……下着屋だった。一応申し訳程度にパジャマも置いてあるが、ほとんどがひらひらしたカラフルな面積の小さい布であった。私も御用達のお店だ。
「メイに何かかってあげようと思って。どれがいい?」と聞かれてしまう。
ドギマギして固まっている私をよそに、アキちゃんは「これかなー」なんて言いながらしゃがみ、白を基調としたものを手に取る。淡いピンクと紫の模様が入っていて可愛らしい。
派手すぎるものではなく、普段遣いできるものでホッとした。
「じゃあそれで。」と答えると、
「……メーイ、ちゃんと見てる?」とアキちゃんが手招きする。
いや、本当に結構いいなぁと思ったのに……と考えながら、アキちゃんの方へ寄り、中腰になろうとした。だが、ナカに入っているモノのせいで、またちょっと違うところに当たってしまう感覚がして……。それはできなかったので慌てて体制を戻す。ちょっと不審な動きをしてしまった。
そんな私をよそに、アキちゃんは
「これもいいね」と、また違ったデザインの下着を手にとった。さっきの下着よりもレースがふんだんに使われていて、大人っぽい色気が感じられる。アキちゃんはこういうのデザインの方がいいのかな、と心配になりつつ「それはちょっと……」と、固辞した。
「他にも色々見てみるか。」とアキちゃんは立ち上がり、店内を物色し始める。アキちゃんをひとりにするのはなんだかいたたまれないので、ついていくしかない。この場では仲いいカップルがお買い物に来ました、な風を見せて……と思い、私はアキちゃんと一緒に店内を周る。何個かアキちゃんが「こういうのは?」と、勧めてくれたが、あまりピンと来なかったりサイズが無かったりだ。やっぱり一番最初のものがいいな、と思う。
途中店員さんに「サイズお測りいたしますか?」とにこやかに問いかけられ、アキちゃんは「行ってきなよ。」と言ったが、丁重にお断りして事なきを得た。そんな私を眺めてアキちゃんは楽しそうにしていた。もうその笑顔で嬉しい……正直ご褒美なのだが、今はそれどころではない。ちょっと歩いたりかがんだりするだけで体が震える。アキちゃんみたいにしゃがみ込むなんてできそうにない。
結局、「やっぱり最初のがいい……!」と宣言したところで、アキちゃんはポケットに手を入れてスイッチを止めてくれた。
さっきのアキちゃんは手を差し出してくれたが、今回は背中を向けて手をポケットに入れ、スタスタと歩いていってしまい、少し先で私の様子を伺っていた。私の反抗的な言葉によって態度を変えるとの宣言どおり、もう優しくはしてくれないようだ。少し寂しい、でも嬉しい。しかし今の問題はそれではない。私のナカで震えているモノが問題だ。うっかりすると快感に溺れて達してしまいそうな感覚のなか、私は意を決して立ち上がる。今度はカバンを強く握り直し、少しでも刺激を与えないよう小さな歩幅でアキちゃんの少し後ろまで行く。視線は合わせない。合わせられない。
アキちゃんはそんな私の様子に満足したのか、何か良からぬことを企んでいるのか、ニヤッと笑って足を進めた。その後を私はちょこちょこと付いていく。やっぱりカバンを握りしめていない方の手が寂しいので、アキちゃんの服の裾を掴む。アキちゃんは振り返らない。進んでいく。
「どこっ……行くの?」
少しでもアキちゃんの足の動きを緩めようと必死で聞いてみた。既に結構歩いている。アキちゃんはこちらを気にせず歩くので、必死で足を動かす。
「ここだよ。」と言ったアキちゃんの視線を追う。ここは田舎だと言うのに知名度の高い、割とどこのショッピングセンターでも見かける……下着屋だった。一応申し訳程度にパジャマも置いてあるが、ほとんどがひらひらしたカラフルな面積の小さい布であった。私も御用達のお店だ。
「メイに何かかってあげようと思って。どれがいい?」と聞かれてしまう。
ドギマギして固まっている私をよそに、アキちゃんは「これかなー」なんて言いながらしゃがみ、白を基調としたものを手に取る。淡いピンクと紫の模様が入っていて可愛らしい。
派手すぎるものではなく、普段遣いできるものでホッとした。
「じゃあそれで。」と答えると、
「……メーイ、ちゃんと見てる?」とアキちゃんが手招きする。
いや、本当に結構いいなぁと思ったのに……と考えながら、アキちゃんの方へ寄り、中腰になろうとした。だが、ナカに入っているモノのせいで、またちょっと違うところに当たってしまう感覚がして……。それはできなかったので慌てて体制を戻す。ちょっと不審な動きをしてしまった。
そんな私をよそに、アキちゃんは
「これもいいね」と、また違ったデザインの下着を手にとった。さっきの下着よりもレースがふんだんに使われていて、大人っぽい色気が感じられる。アキちゃんはこういうのデザインの方がいいのかな、と心配になりつつ「それはちょっと……」と、固辞した。
「他にも色々見てみるか。」とアキちゃんは立ち上がり、店内を物色し始める。アキちゃんをひとりにするのはなんだかいたたまれないので、ついていくしかない。この場では仲いいカップルがお買い物に来ました、な風を見せて……と思い、私はアキちゃんと一緒に店内を周る。何個かアキちゃんが「こういうのは?」と、勧めてくれたが、あまりピンと来なかったりサイズが無かったりだ。やっぱり一番最初のものがいいな、と思う。
途中店員さんに「サイズお測りいたしますか?」とにこやかに問いかけられ、アキちゃんは「行ってきなよ。」と言ったが、丁重にお断りして事なきを得た。そんな私を眺めてアキちゃんは楽しそうにしていた。もうその笑顔で嬉しい……正直ご褒美なのだが、今はそれどころではない。ちょっと歩いたりかがんだりするだけで体が震える。アキちゃんみたいにしゃがみ込むなんてできそうにない。
結局、「やっぱり最初のがいい……!」と宣言したところで、アキちゃんはポケットに手を入れてスイッチを止めてくれた。
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