上 下
89 / 134
ヤンチャと策士は紙一重?

3

しおりを挟む


「……おい、ちょっと待てよ」

 だけど黒瀬くんにはその声が聞こえなかったのか、スルーして歩き続けている。私の左手は黒瀬くんと繋がっているから、当然私の足も、同じように前へと進まざるを得なくて。

「百合子さん、デザートは食べるの?」
「え? えっと、私は……」
「おいコラ、待てって言ってんのが聞こえねぇのかよ!」
「プリンとか美味しそうだったけど」
「あ、うん。そうだね」
「おい! ちょっと待てって、」
「平日だし、そこまで混んでないといいね」
「っ、待てって言ってんだろーが‼」

 痺れを切らしたらしい男の子がスタスタと歩み寄ってきて、黒瀬くんの肩をガシリと掴んで引き止める。

「……え、何? ってか誰?」
「いや何じゃねーんだよ! さっきから人のこと無視しやがって……舐めてんのかオマエ!」
「舐めてるっていうか……今デート中なの、見て分かるよね? 邪魔しないでくれる?」

 清々しいほどに爽やかな笑みを浮かべた黒瀬くんは、自分の言いたいことだけ言って、そのまま男の子に背を向けようとする。だけどそれを男の子が許すはずもなくて。

「おい、いい加減にしねーと、痛い目見るぞ」
「……はぁ。だから、何の用なわけ?」
「オマエ、渋高だった黒瀬椿だろ?」
「まぁ……俺が黒瀬だけど。それが何か?」
「っ、やっぱりな。あん時のこと、忘れたとはいわせねーぞ……!」
「……だから、何の話してんの?」

 黒瀬くんは本当に訳が分からないといった顔をして首を傾げている。

「オマエが俺の女を横から引っ攫ったんだろーが! しかもアイツの……マミの前でオレを蹴り飛ばして、散々コケにしやがって……!」
「……マミ? 誰それ、全く覚えがないんだけど。人違いじゃない?」
「っ、んなムカつく面、オレが見間違えるはずねーだろ!」

 鼻ピアスの男の子はふぅふぅと荒い息を吐き出しながら目を血走らせて、怖い表情で黒瀬くんを見据えている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

社長から逃げろっ

鳴宮鶉子
恋愛
社長から逃げろっ

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

処理中です...