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ほしがることは罪ですか?
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しおりを挟む「っ、黒瀬くん、いきなり何す…「あんな可愛いことするなんてさ。百合子さんってほんとにズルいよね」
「……え? か、可愛いことって……何の話?」
「チョコレート」
――あぁ、これは……私の予想が外れたらしい。普通に気づかれていたみたいだ。
気づくはずないだろうなって思いながらも、心の片隅では、実は少しだけ期待していた。気づいてくれたらいいなって。私の思いが、ほんの少しでも、黒瀬くんに届いたらいいなって。
私が黒瀬くんに思いを伝える手段として考えた、狡い方法。それは、黒瀬くんに渡したクリスマスプレゼント――のおまけとして入れていた、冬季限定のチョコレート菓子。その外箱の隅っこに、小さく「大好き」と書いておいたのだ。
……本当に、自分でも何て回りくどいことをしてるんだろうって思うし、いい年をした大人が「好き」の一言さえまともに言えないなんて、恥ずかしくないのかと言われたらそれまでなんだけど……。
「ふっ、百合子さんって、ほんとに不器用だよね」
黒瀬くんはそう言って、私の瞼に、おでこに、頬に、キスの雨を降らせてくる。私は身を固くしてそのキスを受け入れながら、「……不器用じゃない」と小さな声で反論した。
「百合子さん、可愛い」
私の言葉にクスクス笑っている黒瀬くんに、そっと頭を撫でられる。私の方がいくつも年上のはずなのに、何だか子ども扱いされているような気がして――ぷいっと顔をそむけてしまう。
「……私、別に可愛くないし」
「可愛いよ」
「……私より可愛い子なんて、世界にごまんといるよ」
「俺の中では、百合子さんが世界一可愛いからいいんだよ」
「……それは言い過ぎだよ。嘘くさい」
嬉しくて、でもすごく恥ずかしくて。私は全然可愛くない、照れ隠しの言葉を口にしてしまう。
「あ、今のは可愛くないかな」
「……うるさい」
――さっきは世界一可愛いって言ったくせに。少しだけアルコールが回った頭で不貞腐れ気味に拗ねていれば、覆い被さったままの黒瀬くんが顔を近づけてくる。
「……うそ。可愛いよ」
クスリと微笑んだ黒瀬くんに、耳元で囁かれる。すらりとした指先が耳朶に触れて、少しだけくすぐったい。甘ったるい声が、鼓膜を震わせた。
――黒瀬くんから与えられる温もりは、言葉は……何だか麻薬みたいだ。もっと、もっとって、手を伸ばしたくなる。
唇に触れた優しいぬくもりに、私はそっと瞼を下ろした。
冷たかった黒瀬くんの身体は、いつの間にか熱く火照っている。触れ合った箇所から伝わってくる体温の心地良さに、私は幸せな気持ちでいっぱいになった。
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