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もう絶対に、逃がさない

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 薄暗くなった公園はあちこちが綺麗なイルミネーションで彩られていて、家族連れやカップルで賑わっていた。
 黒瀬くんと出店を見て回りながら、ナッツやドライフルーツが混ぜこんであるシュトーレンを食べたり、温かなミックスベリーのグリューワインにラムチョコレートを飲んだりして美味しい食べ物に夢中になっていれば、可愛らしい雑貨屋の出店が目に入る。

「見ていこ」

 私の視線の先に気づいたのだろう黒瀬くんが、繋がった手を引いて店の前まで誘導してくれる。
 並べられている商品に目を向ければ、サンタクロースや雪だるまの形をした木彫りの置物やスノードームに、キーホルダーサイズの物からそこそこ大きいサイズのテディベアなんかが置かれていた。

「わ、これ可愛い」

 その中でも目を引いたのは、白いテディベアだ。小さいサイズだし、これなら家の鍵とかに付けられそう。買おうか迷っていれば、私の手中にあった可愛らしいベアをひょいと奪った黒瀬くんが、それとは色違いの茶色い毛並みのベアも持って店主に会計をお願いしている。

「ま、待って黒瀬くん。お金なら私が……」

 バッグから財布を取り出そうとすれば、掌をやんわり掴まれて止められてしまった。前にも同じようなことがあったなぁと思いながら、黒瀬くんの顔を見上げる。

「俺さ、お揃いってやつ、してみたかったんだよね」

 目元を細めて笑った黒瀬くんは、店主から受け取った白いベアが入った袋を私に手渡してくれる。

「はい。受け取ってくれる?」
「うん。……ありがとう、黒瀬くん。大切にするね」

 素直にお礼を伝えれば、黒瀬くんは「どういたしまして」と嬉しそうに笑う。
 次はどうしようかと話していた中、鼓膜を揺らした声は、どこか聞いたことのある――もう二度と聞きたくないと思っていた声に、よく似ていた。

「……え? もしかして、百合子か?」

 背後から聞こえる声は、私に向けて掛けられた言葉だろう。

 ――何で。こんな所にいるはず、ないのに。

 どうか人違いでありますように。そんな祈りにも似た気持ちを込めて、ゆっくりと振り返る。だけど、その祈りが通じることはなくて――もう五年以上は顔を合わせることのなかった地元の同級生が、驚いた顔をしてこちらを見つめていた。

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