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もう絶対に、逃がさない
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しおりを挟む色々と謎を残したままのパーティーに参加したあの日から、一週間以上が経過した。
黒瀬くんはこれまでと変わることなく、仕事がない日は私の職場近くまでふらっと迎えにきてくれることもあるし、私も週に何回かバーに顔を出しては、黒瀬くんととりとめのない雑談を繰り広げていた。
今日も仕事を終えて、合コンに参加するのだという三奈と会社前で別れ、私は一人でバーに足を運んでいた。黒瀬くんが作ってくれた甘いカクテルを飲みながら、仕事の話や最近観たテレビ番組の話なんかをしていれば、ちょうど話題が途切れたタイミングで、黒瀬くんが腰を屈めて私に視線を合わせる。
「ねぇ百合子さん。今月の二十四日の予定って、まだ空いてる?」
「うん。空いてる、けど」
「それじゃあ、俺とデートしてくれない?」
「……うん、いいよ」
了承すれば、何故か黒瀬くんはキョトンとした顔で瞳を瞬く。
「……もしかして、今のって冗談だった?」
心配になって聞いてみれば、黒瀬くんは緩く首を横に振る。
「いや、ごめん。すんなりいい返事がもらえるとは思ってなかったから、驚いただけ。冗談なんかじゃないよ」
まあ確かに……今までの私の態度を振り返ってみれば、中々に素っ気ない返しをしていたかもしれない。だけど自分の気持ちに気づいてしまった今、気になる男の子にデートに誘われたら、嬉しくてすんなり頷いてしまうのは当然のことだと思う。
黒瀬くんはスマホを取り出して操作しながら、
「俺、その日の日中は副業の仕事が入ってるんだ。だから夕方の十七時に……日比谷駅で待ち合わせでもいいかな?」
少しだけ申し訳なさそうな顔をして確認してくる。
「うん、大丈夫だよ」
「よかった」
こうして、曖昧な関係である黒瀬くんとの、クリスマス・イヴの予定が決まった。
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