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あつあつシチューと苺のケーキ
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しおりを挟む「俺、こんな風にお祝いしてもらったの、初めてだよ」
二人でシチューを食べ終えた後、黒瀬くんには家にあった市販の風邪薬を飲んでもらった。熱を測ってもらえば、体温は三十七度二分と微熱程度まで下がっていたから安心した。
そのまま流れで並んでソファに座り、バラエティ番組を観ながらコンビニのショートケーキを食べてまったりしていた中、黒瀬くんがポツリと呟いたのだ。
「その……しょぼくてごめんね?」
貧相な誕生日にがっかりしたのかと思って謝罪の言葉を口にすれば、黒瀬くんは緩く首を横に振る。
「違う、逆だよ。……こんなに嬉しい誕生日は初めてってこと」
そう言って口許を緩ませた黒瀬くんは、優しい顔で笑っていた。黒瀬くんが心から喜んでくれていることが伝わってきて、何だか私まで嬉しくなってくる。
「黒瀬くん、今までの誕生日はどんな風に過ごしてたの?」
何気なく聞いてみれば、高校卒業までは施設で育ったことや、施設を出てからはお金もないから、女の人の家を転々としていたことを教えてくれた。
黒瀬くんのこれまでの生活ぶりを聞いて、つい先ほど目にした、ぼろぼろのアパートを頭に思い浮かべる。
「黒瀬くんは、その……今はあのアパートに住んでるんだよね?」
この言葉だけで私が言いたいことを察したのか、黒瀬くんは「あぁ」と何にも気にしてないような口調で話す。
「あそこ、すごく古いよね。でも別に今は、お金がないとかじゃないよ。ただ引っ越すのが面倒なだけ」
住む場所にも困っているくらいお金がないのかと思っていたけど、どうやらそうではないらしい。
年下で、しかもギリギリその日暮らしの生活を送っていた男の子にご飯代や映画のチケット代を奢ってもらってしまったと、内心でとてつもなく居た堪れない気持ちになっていたので、それを聞けて少しだけホッとしてしまった。
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