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はじめての○○○と○○
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しおりを挟む何事もなく二人で館内をぐるっと見て回り、美術館を出れば、辺りはすっかり薄暗くなっていた。家まで送っていくと言う黒瀬くんと一緒に、人気のない道を並んで歩く。
「つまらなくなかった?」
「え?」
「その、美術館とか、黒瀬くん、あんまり好きじゃないかなって思ってたから……一緒にきてくれたことにもびっくりしちゃったっていうか……」
「……あぁ、なるほどね。確かに美術館なんて初めて行ったけど……結構楽しかったよ。お姉さんと一緒だったからかな?」
笑いながら話す黒瀬くんは、嘘を吐いているわけでもなさそうだ。本心で楽しかったと言ってくれているのが伝わってきて、何だか嬉しくなる。
「俺的には途中にあった、あれ……浮世絵っていうんだっけ? あの波の絵とか、結構好きだなって思ったよ」
「……っ、ふふ、そっか」
真面目な顔で感想を言っている黒瀬くんを見ていたら、思わず笑みが零れてしまった。おかしいとか、そういうことではなくて……これは嬉しいっていう意味の笑いだ。自分の好きなものを知ってもらえて、少しでも興味を持ってもらえることは、やっぱり嬉しい。
クスクスと笑ったまま歩き続けていれば、黒瀬くんはその足を止めて、じっと私を見つめていた。もしかしたら、笑われたと勘違いして気を悪くしてしまったのかもしれない。
「あのね、黒瀬くん、今笑ったのは…「先に謝っておく。ごめんね?」
慌てて弁明しようとすれば、足を一歩二歩と踏み出してあっという間に距離を詰めてきた黒瀬くんが、何故か謝罪の言葉を口にする。
どういう意味かと顔を上に向ければ――黒瀬くんの顔が、すぐ目の前に迫っていた。唇に、ふにゃりと柔らかなものが触れる。
多分、数秒にも満たなかっただろう。触れた唇は、小さなリップ音を立てて離れていった。
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