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はじめての○○○と○○
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しおりを挟む某ハンバーガーショップのチェーン店にて。
まずは昼食を食べようという話になり、何となく目についた店で食事をすることになった。
今回は助けてもらったお礼ということで私が奢ることになるのだし、黒瀬くんには好きなものを食べてもらおうと思っていたんだけど……本当にこの店で良かったのだろうか。ハンバーガーはもちろん美味しいし私も好きだけど、お寿司とか焼肉とか……そういうものを希望するのかなと、勝手に思っていたのだ。
黒瀬くんを見れば、メニューを見て「どれにしようかなぁ」と迷っている様子。その顔に不満そうな色は見られない。
何事もなく注文を終えて会計となったので、鞄から財布を取り出そうとすれば、それよりも早く、黒瀬くんが「カードでお願いします」と言ってあっという間に会計を済ませてしまった。
「え、私が払いますよ! 第一、これはお礼ってことなんだし…「いいからいいから」
「でも……」
「女の子に奢ってもらうなんて格好つかないでしょ?」
そう言われてしまうと、何とも言葉を返しづらい。後で代金を渡そうと決めて、受け取ったトレーを持って二人で空いている席に腰掛ける。
「んっ、これ美味しいね。お姉さんも一口食べる?」
「……ううん、大丈夫です」
「そう?」
黒瀬くんは大きなハンバーガー二つとLサイズのポテトに加えて、ナゲットまで注文していた。その食べっぷりを見ているだけで、お腹がいっぱいになりそうだ。
それに、見た目も細くて何となく小食そうなイメージがあったから、大きな口を開けて美味しそうに頬張る姿に、何だか見とれてしまう。
「ふぅ、美味しかった。お姉さんは、本当にそれだけで足りるの?」
「うん、十分だよ。お腹いっぱい」
私の倍以上の量を先に食べ終わった黒瀬くんは、頬杖をついて私が食べる様子を見ていた。かと思えば、紙ナプキンを手にとって、私の口許に手を伸ばす。
「お姉さん、口にソースが付いてたよ」
「っ、い、言ってくれれば、自分で拭くから……!」
「ふっ、もう拭いちゃったよ」
年下の男の子の前で口許にソース付けたまま食べていたとか、恥ずかしすぎる。顔に熱が集まるのを感じながら、残っていたシェイクを一気に飲み干す。
「……ご馳走様でした! ほら、もう行こ!」
「うん、そうだね」
クスクス笑いながら私の後をついてくる椿くんは、絶対に性格が悪いと思う。確実に私の反応を見て愉しんでいる。……年上をからかって、失礼な奴め。
そのまま店を出て、ぶらぶらと当てもなく辺りを散策する。
「お姉さん、何処か行きたいとことかある?」
「……それじゃあ、」
黒瀬くんの言葉に私が選んだのは、此処から電車で三駅のところにある、美術館だ。
黒瀬くんは美術館なんて柄じゃないだろうし、嫌がるか、先に帰ってしまうかのどちらかを選択すると思っていた。けれど予想に反して、黒瀬くんは不満の一つも言うことなく私の後をついてきた。
「へぇ、綺麗な絵だね」
美術館に入場した現在も、嫌な顔一つすることなく、静かに絵画や彫刻を見て回っている。
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