命が進むは早瀬の如く

琴里 美海

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第八話

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 血相変えた炎陽ちゃんが私の事を呼びに来たのには驚いたけど、一番驚いたのは、私が何を言った訳でもないのに、早瀬が一緒に付いて来た事だった。
 村に着いて、倒れている人達を家の中に運んだり、手当したりしてから、環ちゃんの家に向かった。
 環ちゃんの家に着くと、客間で亥助と環ちゃんが座って待っていた。

「お待ちしておりました。」
「あの、環ちゃんその怪我。」

 環ちゃんの腕や脚には、包帯が巻かれていた。随分と不器用な感じで巻かれているな、と思っていたら、どうやら炎陽ちゃんが巻いたらしい。
 私と炎陽ちゃん、早瀬は二人の前に腰を下ろした。

「えっと、それで環ちゃん、一体何があったの?」
「それが、手前共にも正直な所よく分かっていないのです。」

 殆どの事が一瞬で起きたらしい。辺りが暗くなったと思った次の瞬間、村の中で叫び声が響いたり、鈍い音が聞こえたりしていた。明るくなったらなったで、家の中に紡ちゃんがいたらしく、環ちゃんは亥助を隠し通路に押し込んで戦っていたらしい。

「とは言っても、手前は武器を持つ暇が無かったもので、ほぼ一瞬で勝負が付いてしまいましたが。」

 話を聞いて、私は少し考えていた。周辺が急に暗くなる、そんな事を起こせる人物が近場に一人だけいる。多分間違い無いだろうけど、決め付けは良くないよね。それに、彼が其処までして力を貸す理由が思い付かないし。

「兎に角、手前はすぐにでも紫蘭殿を休出に向かいます。」
「あんた、そのけがでだいじょうぶなのかよ。」
「炎陽殿、手前はそこそこ頑丈故、心配御無用にございます!!!」

 胸を軽く叩いて環ちゃんはそう言った。其処まで傷だらけだと、正直あまり信用は無いけども。
 廊下から足音が聞こえてくると、全員襖の方を見た。村の人間達が目を覚ましたのか、そんな事を一瞬だけ思ったけど、襖の前で足音が止まると、それは全く違うと言う事が一瞬で分かった。

「……………如何して此処に来たのかな。」

 私がそう問い掛けると、少しして返答が来た。

「まぁあれだ、面白い物が見たくてよ。」

 その声を聞いた瞬間、早瀬が立ち上がって威嚇を始めた。うん、そうだろうね、今襖の向こうに居るのは、瑞光だから。
 突然襖が勢い良く開かれると、私は咄嗟に全員を風で私の後ろに飛ばした。その瞬間目の前が真っ黒に染まった。
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