黎明の天泣

琴里 美海

文字の大きさ
上 下
38 / 42

第参拾八話

しおりを挟む
 もう何十分も歩いたけど、暁光さんがあちこちで凄い勢いで暴れ回ってるせいで全然出会えない。
 やっと出会えたのは残念ながら暁光さんじゃなくて白鳥さんだった。

「またあんた。」
「あの、暁光さんは何処に居るか知りませんか?」
「はぁ!?そもそもそれはあたしが知りたいのよ!!」

 如何して私は怒鳴られているんだろう。私は一体どんな悪い事をしちゃったんだろう。いや、多分悪い事はしていないと思う。いやそう思いたい。
 私は暁光さん探しを再開したいのだけれど、白鳥さんがそれをさせてくれない。

「と言うか、さっきあんたの名前を叫びながら何処かへ行っていたんだけど、何?あんたって唯の暁光様の飼い犬じゃないの?」
「う。」

 取り合えず私は犬じゃないです。飼われているのかどうかは分からないけれど、兎に角犬じゃないです。

「あんたまさか……………」

 このままだと色々暁光さんや鶴さんが私を守る為に色々考えてくれた事が無駄になってしまう。

「えっと、さようなら。」
「あ!!」

 私はすぐにその場から走って逃げた。余計に怪しそうだけれど、口を滑らせるよりは良いと思う。
 怖いけれど、今は暁光さんを頼ろう。

「暁光さん!!」

 私が暁光さんの名前を呼ぶと、何処からか凄まじい足音が聞こえて来た。

「つぅうううるぁあぁああああるぁぁぁあああああああああああ!!!」
「!?」

 私つるぁるぁなんて名前じゃないんですが。
 暁光さんが目の前に走って来ると、暁光さんはすぐに私の事を抱き上げた。

「お前無事か!?」
「はい、大丈夫です。」
「そうか、良か………………」

 良かったと言おうとしたんだと思うけど、私の顔を見て凄い顔をした。何だろう、物凄い悪寒がする。

「氷柱…………」
「は、はい。」
「お前何で顔、左頬赤くなってんだよ。」

 そう言われて少し考えた。顔が赤い理由、多分さっき白鳥さんに思い切り叩かれたのが原因だと思うけど、それを暁光さんに伝えたら後が怖い。

「えっと、転んでぶつけました。」
「本当か?」
「本当です。」

 嘘ですが。

 私の言葉を信じてくれたのか、暁光さんは溜め息を吐いてそれ以上追及して来なかった。良かった、諦めてくれた。

「ってと、雀と鶴探して帰るか。」
「多分鶴さんは私を探してると思います。えっと、後雀さんはさっきお仕事に。」
「あ?雀なら館にいたぞ?」
「え?」
「ってかさっき会った。」

 じゃあさっきの雀さんの声は聞き間違えとかじゃなかったんだ。
 暁光さんは私を抱えたまま走り出した。

「雀!!鶴!!何処だ!?」
「雀さーん、鶴さーん。」

 二人を探していると突然何処からか白い綺麗な羽が沢山落ちて来た。そう思った瞬間、当然眠くなった。

「氷柱?」
「な、何だろう、眠く、な………………」

 私は意識を失った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...