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第壱拾九話
しおりを挟む「頼む助けてくれ!!!」
「え!?」
暁光は酷く怯えた様子で、体を大きく震わせている。少しの事だったらこんなに怯える事は無い筈だ。
「ちょ、兎に角落ち着いて。」
一体何があったのか聞こうとしたけど、呼吸が荒くて碌に話を聞けなさそうだった。
背中を擦って一度落ち着かせてから話を聞く事にした。少し聞いただけで私は本当に驚いた。
瑞光は暁光をこの館の中に監禁していた。それだけならまだしも、拷問まがいの事をしているらしい。暴力なんてそんな物は可愛い物で、酷い時には手足を切り落としたりもしてきたらしい。
何より一番暁光が恐れているのは、瑞光が自分の血を飲ませてくる事らしい。
「血?」
「瑞光の血は可笑しいんだ。」
「っと、それは一体如何言う事?」
彼の血は飲んだ者を内側から破壊していく。内臓が破裂して、骨は折れ、体が壊れていく。人間ならば一瞬で死んでしまいそうなそんな物を、暁光は事もあろうに死なない暁光に飲ませているらしい。
それから暫く暁光から話を聞いていたが、瑞光の考えている事が全く分からない。如何してそんな事が出来るんだあの子は。
「俺、瑞光に何があっても自分から離れるなって言われたけど、もう限界なんだ。」
今にも泣き出してしまいそうな暁光を見て、私は何とかしなければと言う使命感を抱いた。とは言っても私に何が出来るのか。
少し考えて私は一つの方法を思い付いた。
「暁光、高天原に、他の場所に行かせてほしいと願い状を書くんだ。」
「え?」
この国で生まれた神ならば、何処で神としての仕事を行うかを決めるのは高天原だ。一人一人には何の決定権も無い。逆に言えば、移動の命令が出たならば、それに従わない訳にはいかない。それは瑞光も知っている。
「此処から出したらすぐに瑞光に気付かれるだろうから、私が向こうに持って行く。」
私の提案に暁光はすぐに頷いた。
暁光はすぐに手紙をしたためると、私はその手紙を受け取った。
「それじゃあ必ず届けるから、受理されて次の場所が決まるまで少し時間が掛かるかもしれないけど、その時はまた私を呼んで、催促の手紙を渡してくれれば届けるから。」
私は暁光の頭を撫でると、少しだけ安心した様な顔をした。ずっと怖がった様な顔をした暁光がやっと見せた顔だった。
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